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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第六章 大規模討伐と秋の足音
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集まる戦士たち



 女装に時間を使った事で切りかけの野菜を見つめながら簡単なメニューに変更しようと動き出すクロ。それを後ろから見つめる乙女たちとシャロン。


「可憐な女性が料理をしているように見えるのですが……」


 お腹が減ったのかリビングに現れたルビーが女装をしながら料理をするクロを見つけ言葉を漏らし、ビスチェとアイリーンにチーリンだとシャロンはルビーへ向き直り無言で頷く。

 ちなみにロンダルはキャロットとポンニルに頭を撫でられ、頬を染めて拳を握り恥ずかしさに耐えていた。白亜はそのロンダルの膝に座り眠い目を擦っている。


「何だか新妻感が凄いですね……」


「ふふふ、どうよ!」


≪私たちの力作です! むふぅ~≫


 ドヤ顔の二人にルビーは若干呆れた顔をしながらも手際よく料理をするクロへと視線を移す。


「何やらよい香りがしてきましたよ。これはソースの香りでしょうか?」


「前に食べたお好み焼き? の香りに近い気がするわね!」


≪麺と野菜を炒めていますから焼きそばですね! マヨをかけて食べると最高です~≫


 乙女たちが言うようにクロは市販の袋入り焼きそばを魔力創造で作り出し、脂多めのイノシシ肉を炒め野菜を入れ別で炒めた麺と合わせて味付けをすると焼きそばソースの香りが一気に広がり、眠そうな目をしていた白亜の目がくわっと開きロンダルの膝から走り出しキッチンとリビングを分けるカウンターの椅子によじ登りきると立ち上がり、目を閉じソースの香りを堪能する。


「キュウ~~~~」


 やや長めに鳴く白亜にクロが振り向き笑顔を向けて口を開く。


「もう少しだから待ってろよ~」


「キュウ!」


 クロの言葉に元気な返事をする白亜。乙女たちは母性溢れる笑顔に一瞬キュンとするも首を振りあれはクロと冷静さを保つ。ただ、シャロンだけは鼓動が跳ね上がり自身でも感じるぐらい心臓の動きが早まるをの理解し、あれはクロさんであって……男であって……と、初めての感情に戸惑いながらも料理をするクロの後ろ姿に頬を染め熱視線を送る。


「お腹が空いたのだ」


「ロンダルちゃんもお腹が空いたかしら?」


 ニヤニヤしながら妹扱いをしてくるチーランダに涙目でもうやめてよと訴えるロンダルだったが、チーランダには逆効果であり保護欲を刺激され両手で両頬をグリグリと解し始める。


「よし、まずは三人前完成だな。皿に移したらアイテムボックに入れて、次を作るか!」


 気合を入れ焼きそば作りに奮闘していると玄関のドアが開き汗だくのエルフェリーンとカリフェルが屋敷へと戻り、ナナイたち屈強なオーガ数名とビスチェたちエルフが後に続き現れ、最後にはドランとキャロライナの二人の姿があり、ぞろぞろとリビングに現れる。


「ばあちゃんなのだ!」


「また里の長が自ら来てるし……」


≪ナナイさんにラライ! お久しぶりです≫


「みんなを連れてきたぜ~明日にはオークの国に転移するから今日は食べて飲んで盛り上がるからね! 戦闘前の前祝だ!」


 エルフェリーンの叫びに「おおおおー」と叫ぶオーガたちとエルフたち。ドランも叫びそれに驚いた白亜が椅子の上でバランスを崩すが、アイリーンがキャッチしてホッとしつつもキャロライナは一番の大声を発したドランの薄くなってきた白髪の頭を掴み口を開く。


「貴方……人の家で叫ぶのは良くないわ……良くないわよね?」


「は、はい……自分もそう思います……」


 青い顔で答えるドランはキャロライナの握力と腕力で床から数センチ浮いていた。


「夜になると思ったが早かったな……それなら急いで料理を作らないとだな……ルビー、アイリーン、手伝ってくれ!」


 フライパンを煽りながら叫ぶクロに視線が集まりポカンと口を開けるエルフェリーン。ナナイも見慣れたクロではなくセミロングの白髪で白いドレス姿にエプロンを付けた姿に目を丸くする。


「あれ? あれあれ? クロが女の子になっちゃったよ~」


 目を見開いているナナイに報告するラライは首を傾げ、アイリーンが抱き締めていた白亜の元へと走り挨拶をしながら頭を撫でる。


「クロが女の子になったね~髪の毛も黒じゃなくて白くなった!」


「キュウキュウ」


 白亜は自身とお揃いの白いかつらを付けている事が嬉しいのか、撫でられながらも鳴き声を上げ撫でるラライに嬉しそうな声を上げる。


「本当にどうしたんだい? クロが女の子になっちゃったよ……ああ、なるほど! これで僕の背中を流してくれるのだね! そんなことしなくても背中を流してくれてもいいんだぜ~」


 何やら勘違いしたエルフェリーンはバーカウンターに走り身を乗り出す。


「違いますよ……糸で拘束されて強引に着替えさせられました……人権のない世界なんだと痛感しましたよ……」


 クロの言葉に人権の意味を知るアイリーンは白亜をラライに預けるとニヤニヤとしながら文字を浮かべる。


≪だって、シャルロさんが女性恐怖症だと知ったので、そのリハビリにクロ先輩とロンダルさんを女装させ大丈夫かどうか確かめようと……≫


「ああ、本当だ! ロンダルも女の子になったね!」


「ううう……見ないで下さい……」


 キャロットとチーランダに仲良く頭を撫でられているロンダルに視線が集まりオーガの一部の女性たちとエルフの一部の女性たちから黄色い悲鳴が上がり、わらわらとロンダルの元へ集まりキャッキャする乙女たち。背の低いコボルトのロンダルの女装姿はカワイイを体現しており、マスコット的な可愛さからか女性たちから頭を撫でられ更に顔を赤く染める。


「まったく、何をしているのだか……」


「まったくだね……ん?」


 普段は仲の悪いキュロットとナナイの何気なく呟いた意見が一致し顔を見合わせる二人。


「ルビーはこれと同じように野菜を切ってくれ、アイリーンは麺に焼き色を付けてくれ」


 クロの指示が飛び二人は元気な返事をしながら包丁とフライパンを動かす。


「クロが女の子でも男の子でも料理の腕は変わらなそうだね~」


「今日も見た事のない料理です。是非、作り方を学ばせて頂きたいものです」


 カウンターでクロの料理を嬉しそうに見つめるエルフェリーンの横に、ドランを持ち上げたまま現れ注意深く見つめるキャロライナ。


「コボルト族は前々から可愛いと思っていたのよ!」


「ん……わかる……」


「もしかしたらケットシー族も可愛いかもしれない……」


 フランにクランがビスチェに加わりロンダルを見つめあれやこれや話し合い、その標的はいつしかシャロンへと視線を向ける。


「私的にはインキュバスのシャロンが女装をすれば完璧ね!」


「ん……中世的な顔立ち……」


「クロを軽く超える……」


「そ、それは……」


「あら? 興味があるならママに任せなさい! 誰もが振り返る美人に仕立てて見せるわよ!」


 戸惑いながらも頬を染めるシャロン。鼻血の影響はもうないようで増血ポーションの効果が表れ顔色はすっかりと元に戻り、カリフェルは嬉しそうにシャロンの横に腰を下ろす。


「よし、完成! 大皿に移してルビーとアイリーンはそのまま焼きそばを作ってくれ、俺はつまみになりそうなものを作るから。ああ、ビスチェ! オーガの誰でもいいから地下にあるどぶろくを持ってくるように言ってくれ!」


 クロの叫びにビスチェが反応し、ナナイの連れてきたオーガの戦士を連れ地下室へ向かう。


「どぶろくは凄いんだぜ~たった一週間で美味しいお酒が作れるんだ! キャロライナにナナイにキュロットはもちろん飲むだろ?」


「はい、喜んで頂きます!」


「ああ、酒なら何でも美味いからな!」


「白ワインを越えるお酒はそうそうないと思うけど、エルフェリーンさまがいうのなら楽しみです!」


 イナゴとの戦いを前に多くの料理を作り酒飲みたちの胃袋と戦うクロたちなのであった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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