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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第五章 慕われる者たち
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料理勝負



 解体作業を多くのゴブリンやビスチェにアイリーンが行い、ドランは魔化した姿で驚かれながらもギガアリゲーターの皮を剥ぎ取る。


「やっぱり数は力だね~昼寝をしていたキャロットと白亜も料理の手伝いをしているし、僕はルビーを迎えに行こうかな~」


「気を付けて行って下さいね。美味しい料理を用意して待っていますからね」


「ああ、それは嬉しいな~今日はキャロライナとクロの料理が食べられるんだからね! クロが料理上手なのは知っているが、キャロライナの実力も凄いんだぜ~そうだ! 二人には蔓芋とギガアリゲーターに空鴨を料理して、どっちが美味しい料理を作るか勝負しようよ!」


 その言葉を耳にいたキャロライナはキラリと目を光らせると、白亜を抱き締めたまま立ち上がりクロの前へと足を進める。


「エルフェリーンさまが認める腕なら是非とも勝負致しましょう! 白亜さまにも久しぶりに料理を振舞えますね」


「キュウキュウ」


「白亜も喜んでいるぜ~これはクロにも期待だぜ~」


「えっと、それだと狩り勝負の勝敗も有耶無耶になりませんか?」


「それは大丈夫だよ。二人がそれぞれ作った中から一番を決めればいいんだよ! 蔓芋とギガアリゲーターに空鴨の料理がそれぞれ二品、計六品できるだろ~クロとキャロライナは三本勝負で、その中から一番美味しい料理の材料を狩ってきたものが勝利にすればいいよ~一石二鳥だぜ~」


 エルフェリーンの説明にそれなら勝負が付くなと理解するクロと、白亜を抱きながらもアイテムボックスからマイナイフを取り出すキャロライナ。


「解りやすいよう同じ食材を使って順番に料理しましょうか」


「そうですね。ギガアリゲーターが大味そうですから一番で、空鴨と蔓芋の順でもいいですか?」


「あら、私もそれがいいと思いますよ。蔓芋は甘く、折角の空鴨の脂の甘さを堪能するには蔓芋が最後です。クロと言いましたか、その名を覚える価値はありそうです」


 値踏みするように頭の先から足の先まで見つめるキャロライナに後頭部を掻くクロ。


「それはそうだよ~僕の弟子だからね~それじゃあゴブリンたちは広場に竈を設置してくれ。僕は仲間を呼んでくるからね~」


 戦士ゴブリンたちからは威勢の良い声が上がり即席の竈を作るべく動き出し、主婦ゴブリンは各家に戻り宴の準備をすべく動き出す。


 天魔の杖を掲げたエルフェリーンが転移をするとクロは竈制作を手伝いながら使いやすい形へと変え、アイテムボックスに入れてあるテーブルを取り出すとまな板にナイフなどを準備する。キャロライナも自分の背に合わせ竈を調整すると、料理に使う部位を選ぶべく解体場へと向かう。


「ワニ肉とか調理したことないけど……鶏肉に近いとか聞いたことがあるな……唐揚げかワニ南蛮か焼き鳥とかもいいかもな~」


 呟きながら魔剣を腰から抜くと薪を入れ魔力を込めるクロ。竈に火を入れているとアイリーンが現れ手には大きな肉の塊が乗っており、それを料理して欲しいのだろう。


≪ギガアリゲーターのヒレの部分だそうでキャロライナさんが一番美味しい部位だと教えてくれたんですよ~これをお願いします!≫


「キャロライナさんが?」


≪はい、勝負の事は聞きましたよ~ビスチェさんは鴨を縦に二等分するって言ってましたね~≫


 巨大なヒレ肉をテーブルに乗せるアイリーン。三十センチ四方の大きさがあり食べ応えは抜群だろう。


「よし、それなら調理開始だな」


 キャロライナが肉の塊を持ってくるとクロはナイフを握りギガアリゲーターのヒレ肉と向き合う。


「ふふ、私が帰ってくるまで待っていたのですか?」


「ええ、できるだけ公平にした方が面白いじゃないですか」


「エルフェリーンさまが気に入る訳ですね。ええ、楽しく料理しましょう」


 クロを見て微笑みキャロライナもナイフを握ると調理が開始されるのだった。






「ほらほら、早くしないとみんなが食べ始めちゃうよ~」


「お、押さないで下さいよ~わわわ、あれ、いい匂いです!」


 そう言いながら転移し現れたエルフェリーンはルビーの背を押し登場すると、広場に広がる香りに鼻をヒクつかせる。見れば人だかりができており多くのゴブリン主婦たちが料理対決を見ながら真剣な瞳を向けていた。


「油を熱した中に入れたわ……」


「あんな料理法見た事ないわよ……」


「あっちは薬草を入れたわ……」


「あれは毒草……クマ除けの毒草を入れたわよ!?」


「カイエンの実だね。毒はないけど燃え上がるぐらいに辛いから勘違いされるけど、寒い日には食べるとポカポカしてくるぜ~」


「あの実を少しだけ入れると風味が出て美味しいです。クロ先輩が七味という調味料を教えてくれましたが、それにも入っていますよ」


「そうなのかい! こりゃ驚いたね~」


「ああ、カイエンの実はクマ除けに育てているが、食べられるのかい」


 主婦たちの輪に加わったルビーとエルフェリーンがカイエンの実という唐辛子そっくりな食材を説明すると主婦たちの話は盛り上がり、終いには「旦那で実験しようかね~」と笑いを誘う。


「これで揚げ終わりかな。最後に用意していた甘めなポン酢と大根おろしを添えて完成!」


「こちらも完成いたしました。ギガアリゲーターのヒレを使ったピリ辛香草焼きです」


 お互いに一品目が完成するとビスチェとアイリーンたちも現れ用意していた席に付く。


「えっと、狩り勝負の話はしたかな? 審査方法は今日取ってきた食材を使って一番美味しい料理の原材料を狩ったものの勝利! 

 料理はクロとキャロライナが作りそっちも料理勝負だ! ギガアリゲーターと空鴨に蔓芋を使った料理勝負もあるからね~美味しいと思った方を紙に書いて投票だよ。審査員は僕とビスチェにアイリーンとドランにキャロットと白亜に審査委員長のルビーだ!」


「えええええ、私が委員長だなんて無理ですよ~」


「ははは、大丈夫だよ~美味しいと感じた方を選ぶだけだからね~最後にそれっぽい言葉で勝負を〆てくれればいいからさ~」


 エルフェリーンの説明に大きな拍手が巻き起こりゴブリンたちには村長から酒が配られ、いたる所に竈が設置され串焼きにされるギガアリゲーター。


「それでは御試食下さい」


「こっちはそのまま食べてもいいし、おろしポン酢を付けて食べても美味しいと思うぞ」


 二人の作った料理が審査員に渡り大きな口を開け唐揚げを口にするエルフェリーンたち。


「これは美味しいのだ! ばあさまの料理も美味いけどクロの料理は凄いのだ!」


「ああ、悔しいがクロの料理の方が美味いな。おろしポン酢といったか? これにつけて食べると甘みと酸味が食欲をそそり、また食べたくなるぞ!」


≪ご飯が進むヤツですよ~うまぁ~≫


「どっちも美味しいけど、白ワインがないと勝敗が決められないわね!」


「飲むお酒はルールになかったね! 勝負が終わったら何かお酒を、」


「我らの村で作ったワインが甘く美味しいですぞ! ささ、お前たち!」


 長老の言葉にこの村で作られたワインが振舞われ目を光らせるルビー。


「ぷはぁ~このワインにはキャロライナさんの料理が合いますね~」


「うむ、少し辛いお肉には甘いワインだな」


 各自で美味しかった方の料理を紙に書き込むと、それを集めるゴブリン戦士。


「結果を発表します! 一戦目はクロ殿の勝利です! 票数は五対二です!」


 ゴブリン戦士の言葉に信じられないという表情を浮かべ、ドランが食べていた皿から唐揚げをひとつ摘まむと口に放り込むキャロライナ。


「こ、これは……確かに美味しいわね……それにこのタレ……ビネガーを使いサッパリと食べられるようにするとは……エルフェリーンさまが認めているだけあるわ……だけど、次は私が勝つわよ!」


 ダンと尻尾を叩きつけるキャロライナに「ヒィィィィ」と悲鳴を上げるドラン。クロもビクリと体を震わせる。


「悔しそうに言っているけどキャロライナは嬉しそうじゃないか~」


「ふふ、解りますか……新しい調理法を知れただけでもこの勝負に参加できて良かったと思います。今のはこの勝負を盛り上げる為の演技ですわ。あむあむ……」


 微笑むキャロライナの表情に胸を撫で下ろすクロ。ドランは目の前から次々になくなって行く唐揚げの乗っていた皿を見て少しだけ涙を流すのだった。






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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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