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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第五章 慕われる者たち
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それぞれの戦果



 キャロライナを連れゴブリンの村に戻るとビスチェが先陣を切り魔物の解体が行われていた。

 ゴブリンの村には小川が流れその先には大きな丸太で組まれた場所があり、解体場として肉を吊るして羽をむしり皮を剥ぐ場所で飼育している毛長山羊や鶏に似た鳥などを解体する場所なのだが、本日はビスチェが狩ってきた魔物が吊るされ解体されている。


「グレートウルフの毛皮はこうやってナイフを入れるとお腹から簡単に皮が剝げるからね! 毛並みに逆らわずにナイフを入れるのよ! 内臓はあまり美味しくないからそのまま川に流しなさい。小川に住むエビたちがそれを食べて大きくなったら、みんなで食べるといいわ!」


「凄いものだな。ビスチェが戦えると聞いていたがグレートウルフをこんなにも狩ってくるとは……」


「解体の腕も格が違う……」


「エルフェリーンさまの弟子なだけあるな……」


 ゴブリンたちが感心しながらもグレートウルフの解体を手伝い骨から肉を切り出し部位ごとに分ける。


「グレートウルフの肉は筋が多くてあまり美味しくないけど、クロなら美味しい料理に変えてくれるはずよ! ほら、子供たちも手伝いなさい! 将来はあんたたちがやる事になるんだからね!」


 解体作業を遠くから見つめていたゴブリンの子供たちに声を掛けると、わぁ~と集まり手を洗うと大人たちに混じって骨から肉を削ぎ落とす作業を手伝い始める。小さな手で小さなナイフを握り骨に沿わせて刃を滑らせ肉を削ぎ落としていると、村からは歓声が響きエルフェリーンたちの到着に気が付くビスチェ。


「あら? キャロライナ!!」


「ふふふ、ビスチェも変わらないわね」


 血まみれで走り出したビスチェは面識があるのか名を叫ぶと微笑みを浮かべるキャロライナ。


「おお、ビスチェはグレートウルフを狩ったのか。凄い数だな……」


「何を言っているのだか、それは本命じゃないわ! 私が狩ったのは他にもあるのよ! 空鴨とスカイシャークを狩ったわ! 帰りにはクラウンパイソンも狩ったのよ! 空鴨は脂が甘くて美味しいし、スカイシャークはどこかが美味しいと思うわ! クラウンパイソンは首回りの肉が美味しいし、その毒は薬に使えて皮は超が付くほど高級素材! 私の勝ちは確定的ね!」


 ドヤ顔で獲物を報告するビスチェにアイリーンがニヤリと微笑みを浮かべる。


≪ふっふっふ、私も凄いものを狩りましたよ~クロ先輩に預けましたがギガアリゲーターという大きなワニです! お礼にマーマンさんたちからお魚や貝もいっぱい貰いましたからね~私の勝ちです!≫


 アイリーンの文字を確認したビスチェと視線を合わせると互いに笑い合い胸を張る二人。その光景にゴブリンたちは巻き込まれないよう距離を取ったり解体に集中したりと対策を取る。


「なら僕の勝ちかもしれないね~僕が狩ったのは蔓芋とフラワーマンティスだ!」


 エルフェリーンの言葉に側にいたゴブリンの戦士は腰が砕けたように地面に倒れ、中には泡を吹いている者もおり慌てて助け起こすクロ。


「おいおい、魔物の名前を言われただけで失神するかね」


「いや、フラワーマンティスは滅多に現れる事はないが、会えば確実に殺される魔物だ……」


「ああ、フラワーマンティスがこの辺りでは最強と言っていい魔物……」


「フラワーマンティスに滅ぼされた村はいくらでもあるぞ……それを狩ってくるとは……エルフェリーンさま、感謝する!」


 腰が砕けながらも頭を下げるゴブリンの戦士たちにエルフェリーンは軽く手を振りながら「ついでだよ~」と口にする。


「我々の村にも数年前にフラワーマンティスが出た事がありましたが絶滅させる心算で狩りますからな。幼いドラゴニュートには脅威でしょうな」


 ドランたちドラゴニュートは強者として生まれるがそれでも最強という訳ではない。フラワーマンティスのよう戦闘特化の魔物は脅威であり非力なゴブリンや人間の町に出没したら簡単に村が滅ぶことがあり、冒険者ギルドを主体とした森の調査は必須で目撃談があれば国が動き討伐しているのだ。


「僕的には蔓芋を狩った事に驚いて欲しかったのにな~蔓芋はホクホクしっとりで美味しいぜ~クロならどう料理してくれる? キャロライナも料理してくれるかい?」


 クロとキャロライナへ視線を向けたエルフェリーンは笑顔で提案すると、微笑みを浮かべるキャロライナは「是非!」と声を上げ、クロは見た事のない蔓芋をサツマイモだと仮定し大学芋かモンブランかなと思案する。


≪クロ先輩、クロ先輩、私の討伐したギガアリゲーターを出して下さい! ビスチェさんとエルフェリーンさんに見せたいです!≫


「ああ、それは構わないが……いや、血抜きだけはさせてくれ。あれだけ大きさだから血の匂いが充満すると魔物が近寄るからな。ええっと、アイテムボックスを立ち上げてからシールドを出してダブをクリックして――――」


「それなら僕が先に出そうかな。これが蔓芋だよ」


 芋と呼ぶよりも岩と呼んだ方がしっくりくる蔓芋をアイテムボックスから取り出すとゴブリンたちから歓声が上がりビスチェも薄っすらと涎を垂らし、ドランに至っては口から大量の涎が顎ヒゲを伝い、横にいたキャロライナが布を使い丁寧に拭き取る姿に夫婦と呼ぶよりは介護に近い気がするアイリーン。


「どうだい、大きいだろう! ここまでのサイズは中々ないぜ~蔓も捕獲してあるから近くの荒野に植えて繁殖させようと思うんだ~」


「蔓芋食べ放題ですね!」


「ああ、前に蔓芋を狩った時はドランが消し炭に変えたからね~」


「いや、あれは……蔓が……焦げていたが美味かったのを記憶していますぞ」


「あら、それなら貴方は焦げた所だけを出すわね」


「そ、そんな……」


 膝から崩れ落ちるドランの姿に笑い合うエルフェリーンやビスチェにゴブリンたち。するとクロが声を上げる。


「おお~い、ちょっと場所を開けてくれ~サイズが馬鹿でかいから、みんな離れてくれ~」


 クロの言葉にゴブリンたちが下がるとアイテムボックスからゆっくり出現するギガアリゲーター。頭部は存在しないが首から尻尾までのサイズは二十メートルと巨大で、同の高さは五メートルを超える。血を抜いているので若干小さくなっているが、それでもまわりの者たちを黙らせるだけの迫力があった。


「これは大きいね……こんなに大きなワニが近くにいたとは……」


「でかっ! サイズだけならアイリーンが一番ね!」


「我らが魔化した状態でも危うかったかもしれん……」


「ブレスを使えば別かもしれませんが……強敵でしょう……」


 エルフェリーンをはじめとした者たちが感想を述べながらギガアリゲーターを観察し、ゴブリンたちは身近にこんなにも大きなワニが近くにいたと思うとぞっとし、中には倒れる者まで現れる。


≪クロ先輩が美味しく料理してくれますからね~今日はここで宴会ですね!≫


「それはいいね! 後で僕がルビーを迎えに行くから、ゴブリンのみんなも遠慮なく食べてくれよ~」


 エルフェリーンが叫ぶと気を失っていたゴブリンたちも歓声を上げ盛り上がり、一気に解体作業へと移るのだった。





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 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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