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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第五章 慕われる者たち
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豆腐料理とドラゴン



「固まるか少し不安だったが固まったな」


「食べるのね!」


「味見だね!」


「グラスを用意しますね!」


≪プリ~~~~ン≫


 蒸し器を開けたクロに期待の眼差しを向ける乙女たち。白亜も二階の手すりに掴まっていたが旋回しクロの足元に着地すると「キュウキュウ」と声を上げる。


「これを冷やせば完成だな」


「えっ……」とあからさまに残念な声が重なるがクロは一段毎にアイテムボックスへと入れ、冷蔵庫代わりに使っている地下室へと足を進める。が、足にしがみ付く白亜。


「キュウ~」


「そうだよね! 味見はするべきだよね! 僕も冷やす前のプリンを食べて見たいよ!」


 白亜の言葉を通訳しながらも自信も食べたいというエルフェリーンに困った顔をするクロ。


≪熱々のプリンは私も食べた事がありませんね~≫


「冷たいプリンとは絶対に違うわ! きっと美味しいはずよ!」


「これはあくまでも豆腐の試作だからな。魔力創造で豆腐自体は作れるしプリンも作れるが、今後、俺がいなくても豆腐やプリンが食べられるようにする為の試作なんだぞ」


 そういいながら白亜を抱き上げるクロ。


「だから冷えるまで待とうな」


 そう微笑み白亜を見つめ、まわりの乙女たちに視線を向ける。


「それなら仕方ないねぇ~」


≪私も冷えるまで待ちますよ~≫


「ううう、熱々のプリンだって絶対に美味しいと思うのに……」


「ウイスキーに合うと思ったのですが……」


 ルビーだけはお酒が飲めなくて残念がっているようにも見えるが、乙女たちはそれなりに納得したようでクロはアイリーンに白亜を渡すと足を進める。


 階段を降りアイテムボックスから湯気の上がる蒸し網を棚に置くと布を被せた。


「ここは冷えるな。ん、これは……ああ、この前ゴブリンさんたちに貰ったタコにアワビか……よし! 夕食は豪華な炊き込みご飯にするか」


 干したアワビと串を指し広げて干したタコを手に取るとアイテムボックスに入れキッチンへと戻ると、乙女たちはリビングでお茶をしていたようで紅茶とドライフルーツを口にしていた。


「前に食べたプリンは玉子の味がしたのよ。黒い蜜が甘いけど甘いだけじゃなくて少し苦くて、とっ~~~ても美味しかったわ。それを豆腐で作るという意味が解らないわ」


≪普通のプリンは玉子で作りますけど、豆腐も同じプルプル類なので甘みをプラスすればプリンのようなデザートになるんですよ~≫


「へぇ~楽しみだなぁ~早く夜にならないかな~」


「豆腐とは前に食べた白くて四角いスープに入っていたものですよね?」


「そうね。豆腐はスープに使うものよ」


≪豆腐は色々な料理に使えますよ~そのまま醤油をかけて食べ、おみそ汁の具はもちろんですが揚げ出し豆腐や、焼き豆腐にしてすき焼きとか。ハンバーグに入れたりステーキにしたり、炊き立てのご飯に豆腐を乗せて醤油と薬味をかけて食べても美味しいですよ~前々前世の時にはよく食べていましたよ~豆腐といえば油揚げや厚揚げにも進化しますね!≫


 長文がリビングに浮かび、それを目で追う乙女たち。


「へぇ~色々な食べ方があるのだね~夕食が更に楽しみになったよ!」


「文字だけではどんな食べ物かわかりませんが、炊き立てのご飯に乗せるのですか……」


「ハンバーグは美味しいとして、すき焼き? 油揚げと厚揚げ?」


 ビスチェは文字を見て顎に手を当てて頭を傾ける。


≪すき焼きは甘い醤油味でお肉や野菜を煮て生卵を付けて食べる料理ですね。油揚げと厚揚げは豆腐を揚げたものでお稲荷さんやおでんの具に進化します。すき焼きとかしばらく食べてないですねぇ~≫


 干したアワビとタコを軽く水洗いして水に漬けていたクロの目の前に≪すき焼きとかしばらく食べてないですねぇ~≫という文字が飛んできてピタリと止まると、クロはリビングへ顔を向けるとアイリーンが頭を下げながら手を合わせ、まわりの乙女たちも同じように頭を下げて手を合わせる。


「はぁ……夕食はもう決まっているから明日の夕食だな。魔力創造すればすき焼きごと創造できるが……」


「キュウキュウ」


「白亜もすき焼きが楽しみなのね!」


 椅子で跳ね喜ぶ白亜。アイリーンもニヤニヤと表情を崩しエルフェリーンやルビーも微笑みを浮かべる。


「あら? 何か来るみたい……えっ!? ドラゴン……」


 ビスチェのまわりがキラキラと輝き精霊が近づくドラゴンの存在を伝えたのだろう。急ぎ立ち上がり外へと走り出し、エルフェリーンとアイリーンもそれに続く。


「キュウキュウ!!」


 白亜が叫び飛び上がるとクロの背中にしがみ付き、ルビーはテーブルの下へと隠れる。


「地震じゃないんだから……ルビーはそこにいろよ。俺は様子を見て来るからな」


「はい、気を付けて下さいね!」


 テーブルの下から手を振るルビーを後に外へ向かうと錬金工房草原の若葉が管理している敷地の外には一匹の赤いドラゴンがうつ伏せに倒れており、もう一匹のドラゴンが着地すると逞しい尻尾で倒れたドラゴンの頭をペシリと叩く姿が視界に飛び込み混乱するクロ。


「クロも来たのかい?」


「ドラゴンは見ていて飽きませんから……」


「キュキュ!」


≪イチャイチャするのはあのドラゴンを倒してからに……≫


「あれは敵じゃないけど、叩かれているドラゴンは敵なのかな? この屋敷の庭に直接降りてこようとして結界に弾かれたからね~一応は天魔の杖を出しておこうかな」


 そういいながら足を進めるエルフェリーン。ビスチェも臨戦態勢にあるのか体のまわりで輝く精霊たち。


≪私の白薔薇の庭園で斬れるかな?≫


 好戦的な乙女三人にクロはシールドを展開させながら追いかけると、二階建てほどのサイズだった赤いドラゴンは一瞬光に覆われ、次の瞬間には人型へと変わっていた。


「エルフェリーンさま! お久しぶりですな!」


 白髪に赤い髪が混じった老人には二本の赤い角があり、腰から伸びる尻尾にはドラゴン特有の鱗が太陽光を反射させる。


「ほら、キャロットも魔化を解き挨拶せんか!」


 尻尾で地面を叩きダウンしていたドラゴンも光に包まれると成人女性ほどの背丈にオレンジのセミロングの髪に、ビスチェが嫉妬するような大きな胸を揺らし立ち上がる。


「やあ! ドラン! 久しぶりだねぇ~」


 エルフェリーンの挨拶にクロは胸を撫で下ろし、以前にも会話に出てきたエルフェリーンの弟子のひとりだと理解すると、ビスチェとアイリーンも戦闘態勢から客人を迎える雰囲気に変化し、カチリと日本刀を戻すアイリーン。


「はい、久しぶりに連絡を受け新築祝いを持ってきましたぞ!」


「嬉しいね~ドランが設計した家は床が抜けてね。新しい家を建てたんだよ! 今度の家は吹き抜けにしてプロペラと呼ばれる空気を循環させる仕組みを取り入れて快適だぜ~」


「それは楽しみですな! 我のほかにも来ているものがいるかと思ったが……そちらの者たちは今の弟子たちかな?」


 エルフェリーンの後ろに立つ者たちに視線を飛ばすドランに頭を下げる一同。


「ここじゃ何だし中に入っておくれよ! クロはお茶の用意を頼むね!」


「はい、任せて下さい! 白亜も行くぞ!」


「キュ!」


 クロの背中に張り付いていた白亜が声を上げるとあんぐりと口を開け驚くドラン。後ろにいる女性も目を見開き固まり尻尾をピンと立てる。


「ん? 白亜がどうかしたのかい?」


「いえ、あの……白亜さまがどうしてここに……」


 ドランの言葉に何か訳ありなのかと思案するエルフェリーンとビスチェにアイリーン。


 それを余所にクロは屋敷に入るとお茶の準備をしながらルビーに客人だと報告するのだった。





 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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