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帰還を拒否した先で見た世界  作者:
第四章 増えた仲間と建て直す家
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天使と引っ越し蕎麦


 

「これは……クロの瞳が魔力を常に集めている? いや、過剰な魔力を出そうとしているのかもしれないな……ああ、昨日天界で多くの魔力をウィキールとフウリンから注がれた影響が出ているのかもしれないね。前にも同じように多くの魔力を注がれたクロの体が何かしらの反応を起こしているのだろうね。その副反応としてクロの瞳に魔力が集まり普段は見えない精霊が見えているのだろう」


 前に座ったエルフェリーンから説明を受けるクロは一安心するが、魔力ランプに照らされ舞う小さな人型の精霊の姿に目を奪われる。金色の髪が発光しているのか光り輝く少年は白い短パンに同じく白いブーツを履いた姿でランプのまわりを飛びまわっているのだ。翼などはないが飛び上がり今までに見た事がないので精霊だろうと推測ができるが不思議な光景に目を奪われる。


「クロ~クロ~聞こえる? 聞こえているかい?」


「ええ、聞こえますが……世界はこんなにも多くの精霊がいるのですね……」


 ショタ精霊からエルフェリーンへと視線を向けると心配そうに微笑む表情が目に入りクロは「大丈夫ですからね。今までに見えなかったものが見えて不思議なだけで」と口にする。


「確かに急に精霊たちが見えるようになれば驚くか……」


「それはあるかもしれないわね。ビスチェが初めて精霊を見た時も同じように口をポカンと開けて空を見ていたもの」


「ちょっ!? 恥ずかしい事を言わないでよ!」


「あら、ビスチェが恥ずかしがるなんて……クロが目の前にいるからかしら?」


 キュロットのビスチェいじりに両肩に乗った小鳥が威嚇しているのか両翼を大きく広げる。


「今のクロさんの瞳には精霊が見えているのですよね? どれぐらいの数の精霊がいるのですか? やっぱりビスチェさんたちエルフの契約精霊だけですか?」


 キラキラした瞳を向けるルビー。その横ではアイリーンも興味があるのかワクワクとした表情でクロを見つめる。


「ええっと……ビスチェには鳥が二匹に、キュロットさんにはアレ? 小さなウサギ? 他には魚? 短パン姿の髪が光る少年に上には白い大蛇。あとは黒いボールに……天使? 翼の生えた子供もいるな……」


「我は精霊ではなく天使であるぞ」


 精霊だと思っていた天使に似た存在が口を開くと驚く一同。ルビーやアイリーンなど精霊が見えない者にも見えているようで目を見開く二人。キュロットやフランにクランなどの精霊が見られる者たちはその場で片膝を付き首を垂れる。


「やあ、何をしに来たのかな? 母さんからの頼まれ事かい?」


「はい、エルフェリーンさま。私と同じスキルを手にしたクロへ助言をしに参りました。在庫管理のスキルは便利ですが、個別にフォルダを作ると更に便利に使えます。他にも詳細説明や検索なども使えばアイテムボックスに入れたものを見つける事も出来ますのでそれを伝えに参りました」


 プカプカと浮く五歳ほどの年齢に見える天使の言葉使いにギャップを覚えるもクロは「ありがとうございます」とお礼を口にする。


「うむ、これは裏技なのだがアイテムボックスを持つ者にアイテムを送る事もできるのだぞ。これには相手を指定しなくてはならず――――」


 クロが新しく手に入れたフォルダのスキルを説明する天使。それを注意深く拝聴するクロと一同。十分ほど説明し、試しにビスチェへとアイテムボックスに常備している飴を送り成功すると満足気に頷く天使。


「これは便利なスキルですね。色々送れるのも重宝しそうです」


「うむ、どのスキルも使い方を知らねば宝の持ち腐れだな。クロは素直に話を聞いてくれ好感が持てるぞ。天界でも皆そうであればと思うが……」


 天使も天使なり色々な気苦労があるのだろうと察するクロを含めた一同。


「あの、よければ夕食を如何ですか? 今日は魔力が溢れているので魔力創造で料理を色々と出しますよ」


≪ハイハイ! それなら引っ越し蕎麦! 引っ越し蕎麦を食べたいです!≫


 天使へと提案したクロの目の前に魔力で生成した文字が現れ「そうだな」と了解するクロ。


「ほぅ、これが噂の空間固定……魔力を糸に変え空間に固定するアラクネ特有のスキルか……素晴らしいな。このようなスキルがあれば指示も出しやすいだろう」


≪指示……私の場合はまだ上手くしゃべれないので……重宝はしますね≫


「じゃあ、人数分の天ぷら蕎麦と」


「白ワイン! 魔力が余っているのなら白ワインを持って帰る分も出してくれると嬉しいわ! お題はビスチェを好きにしていいからね」


「にゃっ!? にゃにを言っているのよー!!」


 顔を染め言葉を噛むビスチェに一同が笑い声を上げ、キュロットは悪戯っ子のような顔をしながらも微笑みを浮かべる。


「それならウイスキーもお願いします!」


「僕も賛成だね~どれだけあっても困らないからね~」


「それなら奉納用の日本酒もいくつか作っておくかな……」


 クロが魔力創造を使用すると天使の瞳が輝き近くで凝視しながら真剣な眼差しを向ける。


「うひょ~白ワインが十二本も~」


「長老がご乱心……」


「村の若い者たちに見せられない表情をしている……」


 キュロットの顔を指摘するフランとクラン。他のエルフたちも呆れた表情で白ワインを抱きしめるキュロットを見つめる。ビスチェはその抱きしめた白ワインから数本を自分用に引き抜きアイテムボックスへと入れキュロットに睨まれるが気にした様子はなく微笑みを浮かべた。


「不思議なものだな……この世界のものは創造できないと聞いたが、異世界のものは想像ができる……それに魔力で創造されているからか精霊たちもざわついているな」


「すべての物は魔力を有しているけど、クロの魔力創造で作られてものは魔力百パーセントだからね。食事をしない精霊たちの源である魔力と同じだから精霊も嬉しそうに食べるんだぜ~」


「それで私の契約精霊やアインシュタインにミケランジェロもクロの出した野菜を夢中に食べたのね」


 キュロットがアイテムボックスに白ワインを入れながら巨大カタツムリが夢中で食べた事を思い出し口にする。


「あれは驚いた……」


「ん……クロは凄い……」


 フランとクランから褒められたクロは多くの蕎麦を創造しながら天ぷらも山盛りに創造すると乙女たちから歓声が上がる。


「ほぅ、これが異世界の料理なのだな」


≪蕎麦ですね。あっちは天ぷらです。小さな器に入れた汁を付けて食べますよ≫


「これは初めて見る麵料理だね!」


「醤油のような汁ですが他の香りも混じっていますよ。それにあっちのテンプラでしたっけ? 見れば美味しいのがわかります! 絶対サクサクで美味しいはずです!」


「おう、蕎麦はこっちでは初めてだったが美味しいぞ。蕎麦は伸びると美味しくないから、って、もう食べているのかよ」


 アイリーンが傍を啜り薄っすらと涙を流し、ビスチェとキュロットは取り合いながらもフォークを器用に使い蕎麦を食す。他のエルフたちもフォークを器用に使って蕎麦を食べ天ぷらを口にして歓声上げた。


「天使さまもどうぞ。箸よりもフォークですよね」


「いや、箸で大丈夫だ。知識として入っているから使う事もできる」


 小さな手で箸を受け取り器用に蕎麦を啜る天使に驚くクロとアイリーン。


「これは美味しいね! 天ぷらのエビがサクサクだ~」


「そういや蕎麦に日本酒を掛けて食べるのが通とか聞いたことがあったが」


「是非やりましょう!」


 そういいながら日本酒を蕎麦に少量掛けるルビー。ビスチェとキュロットは白ワインを傍に掛け、エルフェリーンはウイスキーを蕎麦に掛ける姿に呆れた顔をするクロ。


「ぶっふぉっ!?」と咽るルビーにエルフェリーン。エルフ親子は眉に深いしわを作り何とも言えない表情を作る。


≪蕎麦も美味しいですし、天ぷらも最高です!≫


「普通の食べるのが一番だな」


「うむ、蕎麦に天ぷらは美味いものだな。サクサクとしながらもシットリとした中身のカボチャの天ぷらは最早芸術品だな。これほど美味いものがあるとは……クロよ。次の奉納には天ぷらを供えるように、ああ、それと白薔薇の庭園もだぞ」


 天使の言葉にアイリーンへ渡すのを忘れていたクロはアイテムボックスから日本刀を取り出すとアイリーンへと手渡す。


≪これは?≫


「渡すのを忘れていたよ。武具の神様から頂いた白薔薇の庭園と名付けられた日本刀だ。奉納の際に毎回送り返すからな」


 クロから渡された白薔薇の庭園を受け取ったアイリーンは口をあんぐりと開け驚きの表情のまま固まり、それはキュロットや他のエルフたちも同じで賜った白薔薇の庭園に視線が集まるのだった。







 もしよければブックマークに評価やいいねも、宜しくお願いします。

 

 誤字報告ありがとうございます。本当に助かります。


 お読み頂きありがとうございます。


 

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