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トキノオリ  作者: 紫藤朋己
18章 三色の女たち
161/183

161. 沈む。一人。




 ◇



 沈む。


 沈む。


 沈む。


 深い深層に、沈む。


 遠くの方で声が聞こえた気がした。


 聞こえるはずのない声を聞いた気がした。


 魔物を殺すという一つの目標に人々が合わせた声だった。


 それは俺の望んだ声だった。

 ずっと、待ち望んでいた声だった。


 俺という阿呆がちょっかいをかけたおかげで、多くの人の胸に火が灯っていく。小さな小火が、災害かと思うくらいの大火事を巻き起こす。


 俺はここで死ぬ。


 でも。


 俺は、そこにいる。


 誰かの火種として、あるいは、憎むべき焔として。


 望む未来だ。


 誰にも見てもらえなかった俺が、誰しもに見てもらえる。


 俺の人生は決して無駄なんかじゃない。いてよかったんだと心から思うことができる。


 そうしてようやく、俺は人として認められた気がした。


 世界に受け入れられているような気がした。


 どうせ錯覚だろうけど、それが、何よりも嬉しかった。


 ここにあったのだ。


 欲しかったものが。


 望んでいた未来が。


 だから、もう、いいんだ。


 多くを救う事ができた。


 何よりも、素敵なことだと思う。

 

 後悔なく、地獄に向かうとしよう。


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― 新着の感想 ―
[一言] すごかった 二回目のレビューを書けることがいけないのが悔しい
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