表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

7/28

【7】王様を殺すということ

 御堂君がスマホを取り出して、どこかに電話をし始めた。

 …………かと思うと、すぐに「なんで、圏外になってるんだよ!」と叫んで、スマホを床に投げつけた。


「えっ? 圏外?」

「えっ……嘘」


 皆が、各々、自分のスマホを取り出す。


「本当だ、圏外になってる……」


 いつのまにか、スマホが圏外になっている。


「なんで……………?」


 私は画面を呆然と見つめることしかできなかった。電波が届かなければ、これはただの箱になってしまう。

 俄然、不安が強くなってきた。皆が互いの顔を見合わせ、首を振る。

 私達は、この箱に依存して日常生活を送っているから、使えなくなる、という事に対して強い恐怖感を抱いてしまう。


「他人の携帯電話を圏外にすることなんて、できるの?」

「できるよ。電波が遮断するようにすればいいんだから。これは想像だけど、この部屋全体が、エレベーターになってて、知らないうちに地下に降りたんじゃないかな。某遊園地のアトラクションで、そういうのあるよね」

「でも、そうするとさっきまでは電波が入ったのに……」


 御園君の命運がジリジリと削られて行く中、スマホが使えないことに誰もが動揺し、右往左往し────気づけば、ディスプレイのカウントは0になっていた。


『タイムオーバー~。王様の命令が聞けない臣下は処刑されま~す』


 陽気なピエロが残酷な言葉を口にする。

 ピエロが手のひらを手刀のような形にして、自分の首を切るように撫でた。


 ザシュッ!!


 ────うわっ……気持ち悪い……。


 耳を覆いたくなるような、嫌な音が響いた。

 ただし、その音はピエロの映っている画面から発せられたものだった。

 私は……………………、私だけじゃない。皆、そっちの画面に見入っていた。


 はっとして振り返ると、御園君は心臓を押さえながら、壁にもたれるようにして呻いていた。最後の方は、糸の切れた人形のように不自然に床に倒れた。


「は、はぁ? 嘘だろ? おい、御園……! 御園! 大丈夫か!」


 幹事の柳君が駆け寄って、御園君に触れる。


「ぁぁ……ぁ~────」


 なんだか、変な声が聞こえる。

 私達も、御園君に近寄って、その様子を観察した。

 御園君は、口から血を溢れさせて、ピクピクと不気味に痙攣していた。

 まだ生きている。────だけど、もう助からないだろうな、という感じがする。


「いやぁぁあ────!!」


 急に大声が響いたので、めちゃくちゃ驚いた。

 見ると、後ろでマホちゃんが顔を覆って、泣き崩れている。


「なんで! 死にたくない! 死にたくないよ!」


 マホちゃんは悲鳴をあげている。慰めるために、リホちゃんと、雪見ちゃんが動いた。

 私はマホちゃんのヒステリーは放っておいて、御園君をよく観察した。


 ────いきなり死んだけど……。死因がよく分からない……。


 でも、死んだふりではないことは間違いない。一応、手首を持ってみると、まだ温かさはあるものの、脈は見つからなかった

 棺桶に入っていない死体を目にするのは、初めてだ。


「本物だ」

「うん……死んでるね」


『オッケー! 処刑完了~! じゃあ、早速、次はみんなの投票だよ~』


 ピエロの軽口が、憎らしく感じる。

 申し訳ないが、御園君の死に対してはそれほどの悲しみが持てない。ただ、ひたすら忙しない。もう少し、ゆっくりと色々考えたいのに、全体的に、進行が速すぎる。


『投票は、今回も挙手制だ。まずは皆、目を閉じて』


 私達は、その指示に従った。目を閉じていると分からないけれど、たぶん全員そうしているはずだ。このゲームが「本物」だと分かった以上、ピエロに逆らうような真似をする愚者はいない。


『王様を『暴君』だと思う者は、右手を挙げる。肩より、高い位置に挙げるんだよ。そして手を、挙げたままにしておくこと。全員目を開いた後、手を下ろす。いいね?』


 その、一連の行動を想像する。

 わざわざ目を閉じさせる意味。そして、挙手後に目を開けさせる意味。

 どれも、運営側の意図があってのことだ。


『王様を暴君だと思う人は、挙手して~』


 挙手……するべきだろうか。

 私は迷ったが、やめた。

 挙手すれば、挙手したことが、皆にばれる。そこには一つの心理的駆け引きが生まれる。挙手イコール、王様を殺す、ということなのだから、挙手へのハードルは当然、高くなる。


『はい、手はそのまま~、皆、眼を開けて~』


 誰も、手を挙げていないのではないか。

 そう予想した。


 しかし、眼を開くと、予想外の光景があった。

 リホちゃん、マホちゃん、それに丹藤君までが、挙手をしていた。


『ということで、今回の王様は暴君ではありませんでした~』


 王様が暴君に認定されるのは、全員が挙手した時だけだ。

 だから、免れた。とはいえ、王様の平之季君と、死んでしまった御堂君を除き、投票権のある『臣下』6人のうち、半数もの3人が挙手していたことは、私としては結構な衝撃だった。


今日はここまで。また明日3話くらい更新したいです。( ..)φカキカキ

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ