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【3】早くも本気を出している人もいる

 画面の表示が切り替わる。ピエロの顔が消え、文字だけが表示された。


<王様ゲームのルール>

<まず、皆さんにくじを引いてもらいます。>

<8人のうち、1人が『王様』、その他のメンバーが『臣下』になります。>


 パワーポイントを使って資料を作ったみたいな表示だ。

 ここで画面が切り替わり、少し文字が小さくなった。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 ・『王様』を引いたら、『臣下』のうち誰か一人に対して、一つだけ命令ができる。

 ・命令された『臣下』は命令に必ず従わなければいけない。

 ・命令に従わなかった場合は処刑される。

 ・『王様』が命令したあと、『臣下』は全員で投票を行い、王様が『暴君』かどうかを決めることができる。(参加者の全員一致で『暴君』と認定される。)

 ・『暴君』は処刑される。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 私は画面に目を通し、ルールを頭に入れた。割と、シンプルなルールだ。

 一般的な王様ゲームと、あまり変わらない。

 王様が暴君かどうかを投票する部分だけが、標準ルールに付加されている。


「え~……何、これ~。本当に、冗談だよね~?」


 そう言いながら、女子のうちの一人が画面をスマホで撮影した。


 ────うわっ、何、この子、めちゃくちゃ本気じゃん…………。


 私は軽く引いた。

 冗談だと侮っているような姿勢のまま、ルールを記録するなんて、デスゲームを信じているのがバレバレで怖い。


 ────ええと、この子はリホちゃんだっけ?


 リホ、マホのコンビだ。リホちゃんの方が髪の毛が長い。


 また、画面の表示が切り替わる。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


<補足ルール>


 ・王様の命令が2つ以上の命令と解釈される場合、その命令は受理されない。

 ・命令が受理されなかった場合、一度だけ、再命令することができる。

 ・運営からの指示に従わない場合、ペナルティが課される。

 ・命令に関係なく、他参加者へ著しい暴力をふるった場合、対象者にはペナルティが課される。


 ・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・


 説明は、これだけだった。補足ルールについては、割と当たり前のことを言っているような感じで、それほど重要には思えなかった。


 ────命令は一つだけしかできなくて、やり直しは1回。運営に従うことと、ゲーム外の暴力禁止……ね。


 それにしても、『運営』という単語が引っ掛かる。

 当然、このゲームの主催者を指している側の存在を指しているわけだが、一体、誰が、何の意図でこんなことをしているのだろう。

 もちろん、このデスゲームとやらが本物だったとして、の話だが。


『ゲームを始めるご準備は宜しいでしょうか~? アーユーレディー? まず、最初のくじを引いてもらいま~す』


<順番に、この画面をタッチしてください。>


 と表示され、その画面のまま固着した。


「ねぇ、柳君。これ、どうする? 本当の……デスゲームだと思う?」


 幹事の雪見ちゃんが不安そうに言った。


「本当なわけ、ないだろ。でも、もし本当だったら、怖いよな……」


 柳君────男側の幹事だ────が、立ち上がり、もう一度襖を開こうとした。びくともしないようだった。


「だって、閉じ込められてるなんて、おかしくない? 本当だったら、どうする?」

「スマホの電波、通ってるよ。ちゃんと通信できるもん。ほら……」

「え? 本当?」


 リホちゃんの言葉を聞き、私も自分のスマホを確認した。

 確かに、電波は弱いけれど、アンテナのマークが立っている。

 これならば電話も、ネットもできる。いくら物理的に閉じ込められているからと言って、外界から隔絶されている感じはしない。


「警察に通報する? 信じてもらえるかな。もし、ただの遊びだったら、お店の迷惑になるよ」


 それは、そうだ。

 さっきから、これが「本物」のデスゲームなのかが、はっきりしない。皆が、首を傾げている。


「試しに、このゲームっていうやつ、ちょっとだけやってみる?」

「やだ~……なんか怖いもん」

「なぁ、このゲームが本当だったとしたら、どういう条件でゲームクリアになるのかな?」


 幹事の柳の親友の男────丹藤君だったっけ────が、言った。


「そりゃ……、やっぱり……最後に1人だけ生き残ったら、クリアなんじゃない? 普通は、そういうものだろ?」


 と、柳君が答える。


 ────最後の一人?


 私は内心で首を傾げる。


「それって、ゲームとして成立する?」


 そう、ぼんやりとだけど、私が感じた疑問もそれだよ。ナイス、丹藤君。


「だって、最後の二人になったら、どっちかが王様で、どっちかが家来でしょ。そしたら、王様が家来に『死ね』って言うか、とても達成できない無理難題を吹っ掛ければ勝利じゃん」

「え? あー……。はいはい、なるほどね。でも、別にそういう、運の要素があるゲームってことじゃないの?」


 運の要素……か。それはそうだけど、デスゲームって、基本的に人間の心理戦とか、知略の駆け引きを観察して楽しむものじゃないのかな、と思う。


「じゃあ、最後の3人になったら、どう? 王様が臣下のどっちかに『死ね』って命令したら、残った一人が王様を『暴君』って指定して、王様が死んで終わりだよ」

「うん、だから……?」

「そうしたらさ、やっぱり運だけだろ。ゲームとして成立しない。」

「んん……? ちょっと待って、頭が追いついてかない」


 丹藤君の説明に、柳君が首を傾げる。


あらすじに書いてあるルールは簡易版なので、今話の本文にある方が正式版になります。


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