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【1】代理で合コンに参加すること

 この日は、久しぶりの合コン参加だった。参加者は私を入れて8名で、全員大学生だと聞いている。


 指定された場所は、郊外の居酒屋だ。一度最寄り駅で参加者の幹事の女の子と合流した。


「初めまして。城野さんですか? 私、くーちゃんの友達で、今日の幹事の雪見です」

「あ、はい。城野です。よろしくお願いします」


『くーちゃん』というのは、私のバイト先の友達だ。本名を久慈さんという。今日は、彼女の代理で、ここに来た。


「急に来てもらっちゃってごめんなさい。くーちゃんが急に来れない、っていうから、女子の人数が足りなくなっちゃって、困ってたんです。ありがとうございます」


 雪見ちゃんは、ぺこりと音が聞こえるようなお辞儀をした。私も「いえいえ」と言って、お辞儀を返した。

 要するに私は、今日の合コンの人数合わせなのだ。


 駅から数分歩き、店についた。

 靴を脱いで下駄箱に入れ、ギシギシ言う廊下を通って一番奥の座敷に案内された。

 畳の上に縦長の座卓をくっつけて並べてある。ちょっと古臭いけれど、広々とした個室である。

 今日の私は一応合コンっぽい装いということで、ホワイトのブラウスにマーメイドスカートをあわせてきた。

 ほぼ新品のスプリングコートを脱いで壁のハンガーにかける。


「城野さん、ここに座ってね」

「はい」


 薄っぺらい煎餅座布団に座って、参加者の顔を見渡した。

 同じ年代の男女3人ずつが、机を挟んで向かい合っている。出入り口の襖近くには雪見ちゃんと、もう一人男子が座り、この二人が今日の幹事だ。


「はーい、じゃ~全員揃ったことだし、そろそろ始めようか。お静かにお願いします。まずは自己紹介からね」


 男性陣の席の方には、壁時計がかかっている。時計を見ると、今は18時12分だ。予定の開始時間を12分過ぎている。


「俺は、一応今日の幹事で、柳トオルです。好きなことはサッカー。観るのも、やるのも好きです。よろしく!」

「私は同じく幹事の雪見アンです。雪見大福ってよく言われまぁす。今日は楽しんで行ってくださいねー」


 幹事二人がクイズ番組の司会者みたいに挨拶をした。


「じゃあ、次は、男子の方から自己紹介だよ。ぐるっと、そっち、時計回りでいこっか」


 柳君が指を動かして、指し示す。


「あ、じゃあ、俺か。丹藤です。柳とは小学校からの親友です。よろしく」


 この丹藤君と、さっき挨拶した幹事の柳君は、何となく外見が似ている。

 2人とも黒髪で、サッカーをしていそうな、ガッチリした体格だ。ただし、丹藤君の方は眼鏡をかけている。眼鏡をかけているだけで、真面目そうに見える。


「平之季です。K大学の経済学部です」


 次の平之季君は、短めに自己紹介を終えた。茶髪で少し細身。前の二人に比べると優男、っていう感じだ。


「御園ユウキです。車好きです。一緒にドライブ行きましょう。以上です」


 最後に早口で挨拶した御園君は、黒髪、眼鏡でニキビ面。少しオタクっぽい雰囲気だ。

 襖が開き、お店の人が入って来て、飲み物を配り始めた。それで自己紹介は一時中断した。


「じゃ、改めて、今度は女子ね。リホちゃんから、自己紹介をお願いしますっ」


 指名されて、一番向こうに座っている女子『リホちゃん』が明るい声を出した。


「賀東リホでーす。K大学社会学部です。千坂通りのカフェでバイトしてます。音楽鑑賞とかが趣味です。どうぞよろしくー」


 ロングヘアーの女子だ。千鳥格子のワンピースに、ベージュのカーディガンを羽織っている。

 彼女が片耳に前髪をかける仕草をした時、イヤリングがキラリと光って揺れた。女子力というべきだろうか。合コンに適した装いをしているという点は素晴らしいと思う。

 その後すぐに、次のショートカットの女子が類似のトーンで続けた。


「真田マホノです。私もK大の社会です。デパ地下でバイトしてます。スポーツ観戦が趣味です。あ、サッカーも好きですよ~。よろしくお願いしまーす」


 この二人は、特にキラキラした感じのオーラがある。

 そして、この合コンはK大の生徒が多いということが分かった。

 私は雪見ちゃんの友達の、バイト友達であり、K大とは関りが無い。


「じゃ……」


 私の番になり、眼で自己紹介を促される。


「城和ノエです。W大の4年生です。たぶんこの中で一番年上だと思います。よろしくお願いします」


 控えめに挨拶して、軽く頭を下げる。

 必要ないのに、あえて自ら年上であることを強調してしまった。こういう自虐は私の悪い癖だ。本来ここに来るはずだった久慈さんが3年生だから、4年生で、浪人歴もある私が最年長なのは間違いないだろうけど。


 パチパチパチパチ……


 トリだったからだろうけど、なぜか私の時だけ拍手が起こって、それで締めくくった。


「2時間のフリードリンクなので、注文がある人は、このタッチパッドで入力すればお店の人が持ってきてくれるので~、タッチパッド回すから、自由に注文してくださーい」


 雪見大福の雪見ちゃんが声を張り上げる。


「じゃ、まずは乾杯から~。今日は楽しんで行ってくださ~い。かんぱーい」


 適当に周囲とグラスを打ち付けあって、合コンが始まった。


久しぶりにTSじゃないの書きました(笑

合コン参加者は8人です。

誰が早死にしそうに見えますか? もし良ければ予想してみてくださいね~。

■登場人物

柳トオル(男側幹事):男。趣味サッカー。

雪見アン(女側幹事):女。あだ名は雪見大福

丹藤リュウ:男。眼鏡。柳の親友

平之季カイ:男。茶髪、チャラ風。K大生。

御園ユウキ:男。車好き。オタク風。

賀東リホ :女。長髪。K大生。

真田マホノ:女。短髪。K大生。

城和ノエ :女。主人公


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