じ~しゃはやれます
無責任でもなく、一企業としては正しい判断であり、それを行なえないというのは一企業としては失格という烙印を押されてもおかしくない。
「我が社ならできます!」
そーやって引き受けた案件。
自信を持って引き受けることは、相手のお客様に信頼を得られる事に繫がる。
大きかろうと小さかろうと、”大切なお客様”のお荷物を届けるというのが、物流の基本である。
そして、
「これは発送代行しますね」
”大切なお客様”を大事にする事が一番であり、それ以外の面倒な事は他所にやらせるというのが、互いの信頼関係を深めてくれることである。
そんな面倒な事を引き受けられるんだから……。
◇ ◇
「ぶっ飛ばされたいのかな?」
配達員の矢木はこーいうことにはイライラする。
なにがイライラするって、明らかに面倒だからこっちに頼みやがったなという荷物が届いたからだ。多くは語らないが、自転車のカゴに入るレベルの荷物の山は
「ざっと、1万です」
「……あのよ~。それ、発送代行するの、止めてくんねぇ。儲けねぇだろ。相当な額で引き受けただろ」
「仰るとおりで」
多すぎる量のチラシ的な存在。ざっと、1万。
薄っぺらくて、一件に全て配るというものではなく、一件ずつ配るというお荷物に加えて、……とても厄介な事は
「ちゃんと居住確認をしてくださいね」
「データ古過ぎるんだよ~~!」
これを発送代行したい理由の1つと言える事なのかと思っている事に、この荷物の大半は住んでいない。あるいは、住んでいたところに送られたものだから。
”チラシ入れんな”って、ポストに書かれている事は特別珍しくはないが、こーいう荷物はチラシ。もとい、DM。届くお客様達が涙を流し、受け取っているモノかと比べたら、……言わんでも分かるだろう。
大変さが残って、……送る側としては、顧客確保のための一環として、行なっているだけ。まぁ、そのやり取りも発送代行という手法をやられると、大事なお荷物とお客様だけは使っているんですねと、少々腹立たしいところ。
「お客はそーいうの知らねぇからな。仕事だ仕事」
タバコを吸いながら、誰が配ろうがカンケーねぇと、配達準備をする木下。その態度はなんなんだと、矢木は睨みつける。お前みたいなのがいるから俺達の評判も落ちるんだと思う。
仕事をするのは立派だが。
「DMって、配達側からすれば、リスクの塊だからな。ハイリスク、ローリターン」
「テキトーな横文字使ってカッコつけてるんじゃねぇ」
誤配の多さの種類に、DMはかなりの割合を占めていると思う。前述したように、前に住んでいた人間に送ってしまう事なんて多々ある。
その中でDMを、信頼されにくい配達員に任せる事が、彼等を纏める企業からしたらリスクを感じていると思う。誤配しかり、
「一番やりやすくて、都合の良い、配達員からしたら」
「捨てやすい荷物だもんな」
受け取るお客様からしたら特に気にもしない荷物であり、一件ずつ配る荷物と来れば配達員は面倒だ。その上、居住確認はしっかりしなきゃいけないと……。
捨ててもぶっちゃけバレない。……が、バレようが、嘘だろうが。風評となれば、そいつの懲戒解雇で済む問題ではない。イメージとはそう拭えない。噂を言う側に罪も問えないし。
たまに出会うが、他所の会社を使いたいという方がいる。だが、他所の会社からしたら利益がなかったらしっかりと断るし、利益があったとしても、リスク面があまりにも多かったら断るのは当然の回答。
それに反して、リスクを無視して配達するもんだから
「だから、ウチは儲からねぇんだよ」
直接引き受けができるなら、大事にしているお客様の荷物も引き受けできるだろうと、矢木みたいな配達員は思っている。
だが、その荷物を低価格かつちゃんと届けるライバルさん達がいるから、価格競争じゃ、ちと分が悪い。DMは宣伝に必要ではあるが、荷物をしっかり届けられるという信頼関係の方がとても大事。長く付き合えるパートナーというのは、そーいうもの。
「ゴタゴタ言うな、今日は午後から雨予報。タラタラしてたらやられるぞ」
「うるせー、木下さん!」
色々とありますが。厄介な案件というのはどんな企業にもあって。儲けるを考えたら、労働や顧客を満足させるなんて、笑われる事なんですよね。
やっぱり、一番支援してくれる方を優遇するのは当然で、負担になるモノを外すのは当然で。
外すと信頼に関わるから、形だけでも引き受けるって事なんでしょうね。上手いなぁ。