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第8話-互いの距離-

先の場所を「胡散臭い」と一蹴した我々サイドは現在進行中。

フェニの荷造りはものの数分で済んでしまいあのボロ屋は完全にもぬけの殻。

彼女は俺同様にランから貰った毛皮のコートを羽織っている。お揃いだ。喜んでいる姿がたまらなく愛おしい。


「ミストフロッグですね」


進み始めてしばらく。

神域の森に差し掛かった直後。

目の前には体調50センチくらいの青いカエルがいる。ミストフロッグと呼称され、青みがかった毒霧を体中から発生させ、獲物を毒殺するらしい。また、動きも俊敏で戦闘経験が豊富な奴でも複数人でようやく討伐出来るかどうかって感じらしい。つまりキモくて厄介なキモ蛙だ。

そんなカエルが目の前で例の青い霧を発生させ始めたので、俺は…。


トサッ


後ろでこのカエルの個体名を呟いたフェニは苦笑を浮かべている。

毒?知らんな。色の着いた煙にしか感じないね。

今何が起こったかと言うと…俺がカエルに向かって「死ぬ事を許した」だけ。


「うん、なるほど…こんな具合か。さて進むぞ」


やっぱり戦闘に関してはまったくもって苦労する事は無さそうだな。元の世界でもそれなりに戦える自信はあったが…記憶を取り戻した今じゃ色々と能力が使えて楽出来そうだ。

外傷も無くただただ地に伏して死んでいるカエルを見ているとランの声が脳内に響いた。


『旦那様、魔物の死体はどうしますか?』


「……美味そうには見えないな」


カエルの死体を見る……確かカエルは鶏肉に近いんだっけか?ただどうも食うには抵抗がある。


「これは確か毒袋が高値で取引されてますね。研究材料として需要があるみたいです。闇オークションに出せば毒殺用としてアンダーグラウンドから引っ張りダコですよ」


フェニの言う通り。このカエルの毒袋1つでちょっとした稼ぎになる。その個体の毒袋の大きさにもよるが…日本円で言えばおおよそ12万〜15万ほど。

高卒の初任給レベルだ。


「ただ…金には困ってないしな」


お布施やお賽銭と言うシステム。実はあれ。神の収入源になっているのだ。決められたマージンがお布施やお賽銭が支払われた瞬間に神々の懐に入って来る。

当然信者が多い神程、資産も大きくなる。

信者が少ない神はマージンを上げたりするが…決まって上手く行かない。

さて、俺の場合は…

全ての神の根源が俺と言う存在。

つまりどの世界線のどの国でどの神にお布施やお賽銭が発生しようと必ず俺にもマージンが入ってしまうのだ。

言っとくが俺が決めたんじゃないぞ?マージン制度を導入したら自然とそうなったんだ。

だから正直、金は困る程ある。

今更カエル一匹の毒袋をどうこうする気に等なれない。


『焼却後に適当に埋めて置きます』


「そうしてくれ」


会話を打ち切り周りを見渡すと随分と陽が傾いて来ている事に気がつく。さっきフェニが荷造りしている間にこの世界の時間に合わせておいた腕時計を確認すると時刻は午後16時過ぎ。ゆっくり話す時間も欲しいし一先ずキャンプを張るか。

む?俺達の進行方向とは逆側、つまり神域の森の外で何やら戦闘が行われているな。

……。

まぁそんな事はどうでもいいんだ。


「?」


ほぉ、フェニも気付いたのか。彼女の勘もかなり戻って来たみたいだ。

不思議そうにチラリと後方を確認したフェニは……すぐに興味を無くしてこちらに向き直る。


「そろそろ陽が暮れるし丁度いい。一旦休もうか」


森の外に居る連中が何者か。それは俺がその気になればこの場ですぐ調べがつく。しかし、どこの誰が何者と戦っていようと俺にとっては何の影響も無い。どうせ森の外に居る時点でここまで入って来る戦闘力が無いんだしな。ここは神域の森。ただの森じゃない。

つまり様子を見に行った所でクソの役にも立たない。

一応フェニに声を掛けると彼女も「はい」と返事をして足を止める。彼女もわざわざ戻って戦闘の様子を見に行くつもりは無い。流石は夫婦だ。息が合ってる。


さて、当然の事ながらここは先程のカエルの様な魔物が闊歩する異世界。野営するにも命がけだ。普通ならね。しかも神域の森。

でも俺には結界を張ると言う方法があるんだこれが。

けどなぁ…テント泊でキャンプっぽく洒落込もうと考えたが今は女性であり想い人であるフェニがいる。男性よりも女性の方が野営に対して抵抗が強いだろう。

うーん…。ここは異界空間と創造魔法を応用して寝床を作るか。久しぶりにやるなぁ…。

俺は考えを巡らしながら手近な木に目を向ける。

イメージが大事だ。愛する妻との快適な旅の為に…。しばし念じると隣り合う木の幹に人1人が通れる程の扉が光と共に現れる。


「相変わらず器用ですね…」


突然の事にフェニは扉をガン見。当然この世界にこんな魔法は無いんだろう。

ただフェニが1番驚いているのはブランクを物ともしない俺に対してだろう。

……カッコいい所を見せたいから見栄張ってるんだよ。正直上手く出来てホッとした。


「……一緒の部屋でいい?」


「勿論。一緒の部屋“が”いいです」


俺が少しだけ遠慮気味に質問するとにっこりと嬉しそうな笑みを浮かべたフェニはそう答えた。………かわいい。


室内に入る。イメージしたのはビジネスホテルの一室。ユニットバスで一応簡単なキッチンも付けておいた。

どうだ。これが神だ。平伏せ。


ちなみにダブルルーム(ベットを2つ)だ。


この世界で風呂は貴族や王族位しか入れず、一般人は水を被るか濡らした布で体を拭くだけ。

この部屋は勿論シャンプー、リンス、ボディソープ、フェイスウォッシュ、ハンドソープ。全部揃えたとも。俺綺麗好きだし。ぶっちゃっけ神力で汚れは一瞬で落とせるが再現力もリハビリの内だ。

しかし誤算が1つ。フェニのナイトガウン姿はやばかった。ホテルに行った事のある人だと分かると思うが、あの薄手のやつだ。

風呂上がりのフェニはその気になれば一瞬で創れるくせに下着をつけていなかった。夫婦とは言え久しぶりにその大きな胸の谷間を目の当たりにした俺は咄嗟に視線をズラす。長く美しい生脚が目に入る。

まぁ艶かしかった。

恥ずかしがるならちゃんと隠してくれ。何をチラチラ見てる。


……可愛い顔しやがって!!


「ダブルベッドじゃないんですね…」


今度は残念そうな顔かよ…。


「その……まだお互いに本調子じゃないだろ?焦らずにマイペースに過ごしていこうと思って…」


「分かっています。貴方は優しいですからね。ちょっと意地悪な事を言ってしまいました」


変な誤解を与えたく無いが故にやや必死に説明したが…優しく微笑まれてしまった。


「じゃあせめて…今日はこのくらいで」


ベッドに腰掛ける彼女との距離を詰め、手を握って互いの唇を密着させる。

あぁ…何で彼女は時折こうして…生娘の様な初々しい反応をするんだ…。以前からそうだ…記憶を無くす以前は何度も唇を重ね、何度も体を重ねた。初めては全て俺が奪って来た。

しかし、何度繰り返しても時折この様な反応をして来る。

しばし抱き合った後に「おやすみ」と呟き照明を落とした。

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