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第41話-姫巫女は電話役-

場所は変わって城内。広々とした部屋には上品な家具。先程の幹部2名が忠誠を誓っている者の執務室だ。

部屋の主であるミカゼは目を閉じて誰かと連絡を取っている様子だ。これは神族が行う念話を行う際の様子だ。

本来外部には一切会話が聞こえない物だが会話の内容はこういった内容。


「あ、エクーラ?しばらくですね」


「ご機嫌ようミカゼ。ついこの間も連絡取ったでしょう?」


「あら?そうだったかしら?最近バタバタしてて」


「でしょうね。相変わらず世話の焼けるヒトね」


「それで、準備はどうですか?」


「同行の件?こっちはいつでも構わないわ。元々そっちの編成待ちだった訳だしね。久しぶりの祖国、レベルが落ちていないといいのだけれど」


「もう。何のために私が残ったと思ってるんです?トラ君が帰って来るまでに少しでも進歩させておく為なのよ?衰退なんてもっての他よ!」


「そうだったわね。悪かったわ」


会話を終えたミカゼは部屋の隅で待機している侍女を視線で呼び寄せた。

視線を受けた侍女はすぐに意図を察してミカゼへと歩み寄る。


「ステラちゃんに『私とエクーラの準備は整いました。もうすぐに迎えに行きます』と神王に伝えて欲しい旨をお願いします」


「姫巫女ヒロルージュ様ですね。承りました」


ミカゼの言葉に恭しく腰を折った侍女は部屋の外へと消えて行った。



◇◇◇



街に向かってから数日後の夕方。テレビをBGM代わりに談笑していたトーラ達3名。そこで突如トーラが何かを感じたのかピタリと動きを止めた。

彼の様子に気が付いたフェニとランはしばしトーラを観察した後に気配察知を展開。しかしフェニとランの気配察知には森の魔物以外は特に目ぼしい存在は存在しなかった。


「デカい気配だ…これはかなりの大物が餌に近付いて来てるぞ」


フェニ達の読み通りトーラは何かの気配を感じてそこに意識を割いていたらしい。どうやら彼らが街で撒いた作戦は上手く作用した様だ。


「申し訳ございません。私にはまだ感知出来かねる様子で…」


「いいさ、隠蔽も上手い。……さて、どっちかね」


ランの謝罪に気にしていない事を伝えるとトーラは自身の顎を撫でる。

気配察知にかかった物は到底普通の人間とは思えぬ力を有しているのだろう。その巨大すぎる力をいとも簡単に隠蔽して一般人に紛れているとトーラはランに捕捉をした。


「全く別の神族である可能性もあると?」


「限り無く可能性は少ないがゼロでは無い」


まだ距離があるため万全では無いトーラではその存在の断定までは出来ていないらしい。

他の神族と聞いてフェニも質問をしたランも顔色に緊張感を纏い始める。

敵対者である以上、その存在から療養中とも言える愛する夫を何とか守らねば。そう意識を研ぎ澄ませる2名。


「やはりここを目指して来ている様子なんですか?」


眉を寄せながら普段の穏やかな様よりトーンの低い声色でフェニがトーラに確認を行う。迷い無くここに向かうと言う事は自分達が居る事を把握している可能性がある。より警戒すべきだろう。


「あぁ。真っ直ぐ最短距離でこの山に向かって来てる」


その返答にフェニもランもほぼ無意識に頼りになる愛する夫の体にそっと触れた。

そんな妻達を安心させる様にトーラは彼女達の手に自分を手を重ねると、より意識を集中して気配の同行を探った。その結果。


「……いや、杞憂だった。シンカだ!ちゃんと気付いてくれたんだな!流石だ」


元から自分の敵では無い。敵対者が来たとしても捻り潰す絶対の自信を持っていたトーラだが一転して嬉しそうに破顔して見せた。

と、そこでトーラは別の何かを感じ取った。


「ん?ちょっと失礼。ヒルデウスの巫女が何か言ってる」


シンカの名前が出た事で安堵感を表して談笑するフェニとランに向け断りを入れてから今度は気配では無く頭の中に響く念話へと意識を向けた。


『彼の偉大なる始祖神王様。お与えになりました地より心よりの忠誠をー「ちょっと待て。そーゆーのいいから用件教えて」えぇっ!!??』


形式ばった文句を淀み無く神秘的に連ねる姫巫女は制止したトーラによって打ち砕かれた。姫巫女の女性は一気に年相応のあどけない反応をしてしまう。

トーラはこう言った下手に自分を持ち上げる形式よりも効率を重視する性格だ。


「何?なんか色々言ってたけど王女だの連なる神だの。要するに誰か俺の所に寄越すって事でいいの?」


せっかく姫巫女が最上級と言える程丁寧な言い回しをしたにも関わらず酷く端的に纏められた言葉。


『あっ、えっ、そのっ』


「大丈夫。落ち着こう。深く考えずに答えてみてくれ。変に堅苦しいのはナシだ」


酷く狼狽した姫巫女の声色を聞いて苦笑したトーラは出来るだけ穏やかな物腰で彼女を落ち着かせる。その甲斐あってか


『え、は、はい!ミコト様とエクーラ様と言う最高神様が護衛と共に始祖神王様の元に向かわれる予定でしてっ』


「なるほど。アイツらは意外とせっかちだからなー」


2名共トーラの妻だ。どうもこの姫巫女は行き違いを避ける為にミカゼ辺りが連絡役として用意した存在なのだろう。


「よく分かった。ありがとう。迷惑をかける。デカい山の上で休んでいる。あー、それと…愛していると伝えてくれ」


『っ!!この身に変えても!』


以前に連絡を取り合った際にも感じたトーラの立場に見合わぬ物腰の柔らかさに恐縮気味な姫巫女。しかし姫巫女が聞いたのは離れた場所に居る愛する妻と逢える時を心待ちにする愛妻家の男の声だった。その意外性に思わず彼女の様に言伝を頼まれて意気込んでしまうのも無理ないだろう。


「変えんでいいわ恥ずかしい。それにしても君凄いな。この距離で神託を繋げるとは」


『お、幼き頃より鍛錬しておりますので。しかしながら始祖神王様こそ…お力が万全では無いと伺っておりましたが、まさかこの距離で正確に返答をお届けする事がお出来になるとは…』


「ははっ、世事はいいよ。まぁ何にせよ助かる。また何かあったら伝えてくれ」


『恐悦至極にございます!!』

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