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第13話-圧倒的-

驚く程にザックリとした計画を立てたのが昨夜だが、夜が明け出発の準備を行なっているとランから提案が入った。


「旦那様。よろしければ私が得意とする獣の姿となりお二人を山頂までお連れしましょうか?お二方とも転移を使用しない様子を見るにこの世界の情報収集の一環として徒歩での移動をされているでしょう?」


コイツの虎の姿はまだ記憶が戻ってからは見た事無かったか。この体では当然動物園でしか本物の虎は見た事無い。………この絶世の美女姿も大好きなんだけど。


「あ、あの旦那様…その……身に余る勿体無きお言葉です」


赤面して目を逸らすラン。かわいい。

と、移動方法だよな。

車とかバイクとかを創造魔法で作るのもアリだが…山道だと流石になぁ。一応ヘリとか飛行機を創造する。又は魔法で飛ぶと言う方法もあるにはある。もちろんランが言った様に転移もある。しかし…情報収集以前に風情が無い。

その点ランの提案はいいんじゃないか?動物に乗って森を駆ける。実にいいじゃないか。


「そうだな。頼める?」


「お任せを」


咳払いをして仕切り直したラン。彼女の体が一瞬光輝いたと思えば、俺とフェニの前には体長4mを軽く超えてそうな巨大な白虎が現れていた。白い毛並みは美しく、神獣の名に相応しい威風堂々とした神聖な姿だ。


「…うん、この姿を見るのも久しぶりだなぁ」


フェニも当然ランの姿を見てうっとりとしている。分かるわ。圧巻だよな。

この場合、人型よりも何となくスキンシップ方法が異なる。…と、言うのも。

俺は彼女、もとい白虎の頬を優しく撫でながら額と額をくっ付けている。あぁ…懐かしいなぁ…。


『んっ……お、お待たせして申し訳ありません。お二方、どうぞお乗りください』


スキンシップが気持ち良かったのか…俺とフェニの脳内にランの艶やかな声が響いた。

ゆっくりとした動作で地に伏せ、俺達が背中に乗りやすい様にしてくれているラン。その動作もどこか優雅さが漂っている。

……さっきはゴメンね。


「そんじゃ失礼」


地に伏せていても背中までは結構高さがある。フェニを抱えて俺が背中まで一気に飛ぶと…おぉ!何て滑らかで柔らかい肌触り!あったかい!やっぱりこの姿の彼女も最高だ!

俗に言う『お姫様抱っこ』で抱えていたフェニを俺の後ろに当たる位置に降ろす。


「うわぁ…柔らかい…トーラさんとお揃いのコートと同じ……相変わらずランさんの毛並みは素晴らしいですね」


フェニも目を輝かせながらランの毛並みを撫でている。


『それでは出発いたします。結界を張っているため風や衝撃が伝わる事はありませんので。どうぞお寛ぎ下さい。まぁ今更でしょうが』


念話を用いて俺とフェニを気遣う言葉がランからあった。俺は勿論大丈夫。なんなら「ここで素振りをしろ」と言われても難無くこなしてみせよう。絶対やらんけど。しかし…


「トーラさん?後ろからギュッってしてもいいですか?」


クイクイとコートの裾を優しく引っ張って来た絶世の美女フェニがとんでもなく可愛い事をお願いして来た。あれでしょ?バイクの2人乗りみたいな。


「ギュッ?別にいいよ?あ、寒い…って事は無いと思うけど一応」


コートを脱いでフェニの背中に掛けてやる。同じコートの上に同じコートを掛けると言う珍しいパターンだが…奥さんは大事。

1番の理由はフェニの温もりを強く感じたいからだとかは恥ずかしいから言わないよ絶対。


「ふふっ、ありがとうございます。じゃあ…」


後ろ目でフェニに視線を送ると上目遣いでやや恥ずかしがった様子で…俺の腰に彼女の細い腕が回された。ギュウっと力を込めてゆっくりと密着度が上がって行く…。

おぉ…思ったより密着して来たな。俺の背後からは何やら嬉し気な気配。

まぁ喜んでるのならいいか。俺も喜んでるし。


「あったかい……」


「そ、そうな」


顔面を背中を押し付けたまま言うんだもんこの子。温かい息が何か変な気分にさせる。


我々のやりとりを特に気にする事もなく滑る様に移動するラン。相変わらず驚く程衝撃が無い。リニアみたいだな。乗った事無いけど。しかし早い早い。木々の間を水が流れる様に進んで行く。F1の速度超えてるだろ。生で見た事無いけど。


『旦那様。お気付きですか』


しばらく景色…は見ずに毛並みとフェニに夢中になっていた頃。…まぁつまり2人の奥さんに夢中になっていた訳だが。

山頂はもう目と鼻の先かという所でランが話しかけて来る。山頂に何か気配がある。いや、元から何かの気配があったがつい今し方に現れた気配が元からあった気配を消した。つまり…


「何かが山頂に来て殺して回ってるな…」


「魔物…では無いですね…。神族?危険では…」


『危険ではありませんね』


俺の呟きにフェニが反応した。我々は気配感知に関しても非常に優秀な為、この距離からでも対象の種族やら色々分かる。

それ故に神族と気が付いたフェニは渋い表情をするが…ランが即座にフェニの言葉を否定。確かに何の障害にもならない。

まぁ消えた気配は恐らくは元々この山に居た魔物か何かだろう。それもただの山では無く頭に「神域」が付く。つまり中々に強い奴が暴れてると判断していいだろうな。曲がりにも神族なんだしこれぐらいやって貰わないと話にならないが。


「とりあえず対話が可能ならいいけど…。ダメなら荒事になる覚悟はしとけ。覚えの無い気配だから元身内って線は薄いだろう」


神族の中にはフェニ達以外にも知ってる奴は居る。しかしこの気配は知らん。敵かな?敵なんだろうなぁ。


「気を付けて下さいね?本調子ではないんですから、無理はして欲しくありません…」


「心配は受け取っておく。ありがとうよ」


大丈夫大丈夫。いくら俺が慢心していてもこの程度の気配の奴に遅れを取らない。…いや、取れない。まぁ奥さん君も同じくだけれどね。心配してくれるのは嬉しいよ。かわいい。

そうこうしてる内に山頂に到着。うん、やっぱ初対面だ。


「予想通りここに来たか」


………初対面だよな?何その「待ってたよ」的な態度。誰やねん自分。

山頂に居たのは白い神官服に身を包んだ中年の男性だった。あの白い部屋に居た奴らに雰囲気がそっくりだ。このタイプの神族は知り合いに居ないなぁ…。

中年は俺達を見とめると憎々しげにそう呟いた。コイツやたらと態度がデカくて鼻に付くなぁ。

一応「知り合い?」的な感じでフェニとランに念話を送るがそっと首を振られた。

いや何だ君。やっぱり全員初対面じゃないか。誰よ?


「貴様だな?神界でリードバイ様とその配下共を殺したのは。随分と派手にやったそうじゃないか?」


「………あぁ。はいはい。なるほど。アレ関連か。何?友達?」


あの白い部屋って神界のリードバイとやらの領域だったのか。あの時はまだ記憶無かったし分かる訳無いね。まぁ覚えておこう。多分どうでもいいけど。


「リードバイ?そんな神居ましたっけ?」


「フェニに呼ばれた時に通った場所だ。そこで突然襲われてな。戦闘になった。どうもリードバイとやらは最高神らしい。俺らは知らないし若手なんじゃないかな」


その言葉にフェニの表情は一変する。うんうん。キレたね。俺の事を大切に思ってくれているのは分かるけど大丈夫だよ。呼ばれた時無傷だったでしょ?だからほら、そんな怖い顔しないで。コラコラその殺気はエグい。


『私の記憶では意味不明で身勝手な因縁を付け襲い掛かって来た愚かな有象無象をトーラ様が一方的に蹂躙しただけだったかと。トドメを刺したのは私ですが』


「やっぱりお2人共、記憶とか能力の制限とか関係無しに無茶苦茶ですね」


あ、フェニの怒りが和らいだ。ランのファインプレーだな。

いやー、確かにカウンターで顔面パンチをくらわせた時は「やべぇ芯食った」って思ったけども。案の定凄い速度で吹き飛んで行った。ごめんな。

で、アイツらもコイツも同じ…派閥?なのかね。


「ふん、女連れとはいい身分だな。いいペットも見つけたようだ」


しばき回すぞコラ。誰に口聞いとんねんお前。

今度は俺の怒気がガン上げされた。フェニの時も俺の時もあえて怒気は奴まで届かない様に調整していたため奴は知らん顔。

届いたら一撃で失神するから情報が手に入り辛いんだよね。だから暫く泳がせておく。でもコイツはシメる。情報を搾り取った後はどうなるか分かっとるんやろな?


「なぁ、何の用か知らんけど。出来れば平和的に解決したい。お前もあそこの事は正当防衛だと分かってるんだろう?」


嫌味ったらしい事ほざいてるがマジで何しに来たんだろう。報復?一応神界の住人なんだろう?そこまで馬鹿じゃないよな。

と、言う訳で一旦態度を軟化させてみる。


「あぁ、立派な正当防衛だとも。それどころか私は感謝すらしているんだ。貴様がリードバイ様達を殺してくれたお陰で私は出世出来るのだからな」


「そりゃどういたしまして」


「だが私は貴様の様な力を持つ愚民が気に入らない。そこで、私が殊勝にもリードバイ様の仇を打ってやろうと思ってな。どんな手品を使って殺したかは知らんが…これで私も神界の英雄だ。それ所か最高神級かもな」


結構馬鹿だったわ。どうしよう。対話するのがタルくなって来た。

何ともまぁ浅い考えだ。

お前程度が俺に敵うとでも?ナメんのも大概にしろよヒヨっ子が。


「時間の無駄ですね」


『暫く帰らない内に神界の知能レベルもだいぶ落ちましたね』


ほんとに、ねー?

どうするよコイツ。早く帰ってくれないかな。じゃないとうっかり叩き殺しちゃうよ?


「何だと女?……愚かにもこの私に意見を述べる貴様も断罪の対象だ。私が直々に殺してやろう」


はぁ…。アカンわコイツ……。溢れ出る無能オーラ。何か今度はフェニの一言に怒り出しちゃったよ。

「馬鹿馬鹿しい」と呟いた俺は煙草を取り出し火を点ける。ふぅー…空気が綺麗だし煙草も美味い。


「だいたい貴様…そこの男。察するに死神だろう?なかなか悪くないが……ただの死神程度では私には敵うまい」


ニヤニヤと気色の悪い笑みを浮かべている男。

あれは自分の予想は全て当たっていると思ってる顔だな。挫折と言う挫折を味わう事なく中途半端な状態でここまで来たんだろう。なんとも未熟な奴だ。


「死神?どうしてそう思ったんだ?あぁ…なけなしの能力で最高神への下剋上を果たしたと見て、その能力が死神の物だったと予想した訳か」


「……」


早々に自分の考えが違ったと察したらしい。不機嫌そうな顔をしている。

察してくれたのなら話が早い。ハッキリ言ってあげよう。


「浅はかな奴だ。不正解だよ英雄君。答えはもっと単純」


「単純だと?言ってみろ」


相変わらず不機嫌そうで高慢な野郎だ。

俺は今まで奴に届かないようにしていた殺気や覇気や怒気を一部解除してやった。

するとどうだ…一部だけにも関わらず、奴は顔中から脂汗を垂らし震え始めた。


「俺がリードバイとか言うヒヨっ子やお前よりも格上だって言ってるんだ。と、言う訳で図が高いぞ駄作」


「ひぃっ!?」


限界だった様で、男は尻餅をついてしまう。顔は完全に恐怖と絶望に染まっている。


「自分の無謀さを理解したのならさっさと帰ってくれ。今すぐ帰れば俺の愛する妻達に不敬を働いた事はお前が垂れ流したアンモニア臭に免じて忘れてやる。だがやる気なら……英雄ごっこはお終いだ。野心と共に存在ごと殺す」


「わ、私に…逃げろと?」


おっと。これはいけない。

どうにも八方塞がりの状況に参って変なスイッチが入ってしまったらしい。面倒だな……。そのテンションにはついていけないぞ?


「なら玉砕覚悟でかかって来い。そうしたらお前の男気に免じて苦しまずに消してやる」


中年の突然の殺意。一気にフェニの背後へと移動し襲い掛かって来た。見た目的に最も戦闘力が低そうなフェニを狙う辺り性根がばっちい。が、


「死ね」


今は物言わぬ骸。中年はバタリと地に倒れ伏す。理由は簡単。


俺が奴の「死」を「許可」した。


魔法でも何でも無い。ただの権限だ。

奴は本当に知っていたのだろうか?俺が死を司る死神の最上位互角も兼ねた存在だと言う事を。

神の中でも最高位。

そして奴はそんな存在の妻を手を掛けようとした。無事な訳が無い。

察しが悪過ぎるのが死因だろうな。


と、まぁ上記の様な方法を取った結果だ。出血すら無い。最期の瞬間まで自分に何が起きたか分かっていない様な死に顔をしている。

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