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第1話-始まりの時-

初めての小説投稿です。よろしくお願いします。

とある海域、穏やかな波が船体を撫でる中、その船上では男達が唖然と海に目を向けていた。

視界の先には男達の現在地からは考えられない大シケの海。なだらかな波と巨大なうねりを生んでいる波には極端なまでに境界線が引かれていた。


「なんなんだ…あれ…」


「船長!シケの準備は!?」


逞しい腕に良く日に焼けた肌。屈強な男を絵に描いた様な姿をしながらも目の前の受け入れ難き光景には動揺を隠せない。

快晴の空と暗雲の中の雷雨。その青と黒の間にグラデーション等は存在しなかった。

そんな中でも若い船員は船と仲間、そして己の身を守る為に目の前の自然の暴力に立ち向かおうとしていた。しかし、


「いや…アレは動いていない…中に入らなければ何の問題も無い…」


まるで知っている様な口振り。船長と呼ばれた中年の男は真っ直ぐに暗雲を見つめていた。雷鳴や雨音や暴風の音が快晴の空の元まで聞こえて来る中。船の責任者は冷静だった。ベテランである彼は知っていたのだ。この存在を。


「噂は本当だったのかよ……」


船乗りの中で語られる伝説。沖合に存在する永遠の大シケ海域。その雲は決して晴れる事は無いが自らが足を踏み入る事をしなければ決して襲っては来ない謎の存在。まさに海に出来た壁の様なソレ。


「アレが……神の壁。理想郷を守る結界だ」


船長は御伽噺の存在が実在する事を若い船乗り達に伝えた。こうしてこの御伽噺はまた次の世代へと伝えられていくのだ。


かつて神の王、神王。彼の者が築いた神の国。そこは神界を放れる事を選んだ神族達の正に理想郷と呼ばれる場所。しかし、そんな場所に良からぬ者を通す訳にはいかない。その為に神王がこの結界を狭間に置いた。


勇しく沖に船を出す船乗りのみが実際に目にする事の出来る実在する伝説。



◇◇◇



築数十年の小さな一軒家。

雨戸を締め切りった薄暗い居間。その床板には大きく複雑な魔法陣。

もう何度目だろうか……。

最低限の家具以外何も置かれていない薄暗い部屋で神聖召喚魔術を行使し続けること実に1ヶ月。買い出しなど最低限の行為以外はほぼこの家に篭り続けているにも関わらず未だに成功の兆しは見えない。


「はぁ…はぁ……。もう一度っ!」


宝石の様な青い双眸を魔法陣に向ける。長く美しい金髪は消耗した体力に比例するように噴き出した大量の汗によりシミひとつない肌に張り付いていた。

床に跪き、必死に魔術を行使している美しい容姿をした若い女性。名前はフェニ・バードバレー。

誰も近付く事の無い辺境の地。そんな場所にたった1人で住んでいる。


何故彼女がここまで必死に召喚魔術を唱えているのか。その理由はとても簡単な物。

愛する者と再会を果たしたいから。


「異世界にとてつもないお力の持ち主がおる。その方達に魔物達の恐怖から守って頂こうかと思う。私から異世界の英雄召喚魔術の方法を公表する。素養がある者は是が非でも試してみて欲しい。当然簡単には行かんが世界の為にどうか頼む」


この第一報は瞬く間に世に広がり、世界各地で大賢者が公表した方法で召喚魔術が行われ、これまでに数人の異世界人が召喚された。皆一癖ある者達だがどうやら魔物討伐に日々奮闘してくれたようだ。


しかし、それはもう遠い昔の話。

大賢者の言葉は古い歴史書に記されている物程度に人々の認識は変わってしまった。

フェニは偶然、古い歴史書に加えて過去の召喚魔術の方法が記された書を入手し、その方法を独自に改良。魔術に大幅な強化を施した上で現在の行動に至っている。限界まで磨き上げられた魔力、正確には魔力を超越した神力と言う物になっていた。

彼女は世界の平和など大それた事には目を向けていないが、「逢いたい。……ただ逢いたい。呼ばないといけない」そう想い今日も誰も寄り付かない森の中に建てられた小屋、もとい彼女の自宅で召喚魔術を行使し続ける。

イメージは鮮明だ。いつまでも色褪せない鮮やかな記憶。愛しい家族達。


初めてその夢を見たのは転生してまもなく、幼少の頃。自分より少し年上の男の子が私の夢に登場した。

自分の成長と共にその男の子も成長して行く。


その男の子とは…彼女の夫だ。


彼女、フェニ・バードバレーは神。

しかも序列最高位のだ。


かつて、その最愛の夫は全てを守る為にこの世界から消えて行った…。

「いつか必ず戻って来る」

そう約束を残して。


彼女の、彼女らの夫は全ての神々の頂点。全ての者の頂点。

しかし彼は優しかった。格好良かった。愛らしかった。愉快だった。

そしてフェニ以外の彼の妻達もまた、フェニにとっての大切な家族だ。


愛おしい想いを胸にフェニは最後の力を振り絞り、ありったけの神力を魔法陣に流し込んだ。とてもそこらの“神程度”では敵わない膨大な物だ。

それはまさに………神の身技。


すると、一層強い光が辺りを包み込んだかと思えばその光の中から薄っすらと人影が現れる。


「やったっ!」


つい漏れた声も抑えられずにフェニはジッと光を見つめる。

光が収まるとそこには整った顔立ちの若い男が仁王立ちしていた。

長身で地球のフォーマルな服装に身を包んでいる。間違いなく今フェニが居る世界とは別の世界から来たのだろう。男性にしては長めの黒髪だが所々に金色が混じっている。そしてギラついた黒い瞳。絶大な存在感と風格を放つその者はフェニを見とめると良く通る低い声で、


「…………早かったな」


柔らかに微笑んで見せた。


名前:トラデウス・テーサウルス・ヒルデウス(日本名:宝井 虎人)

性別:男

年齢:unknown

Lv:unknown

種族:根源神


それは文字通りフェニにとって夢に見たヒトだった。

先日も自分の夢に登場したこの男性。やっと直接逢えた……。

様々な感情がフェニの中で入り乱れていた。

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