レース7
メリアを残してガンガン飛ばすが、まだヨゼフの背中は見えない。
あいつも相当速いからな。
追いつくだけでも一苦労だ。
だがしかし、メリアの悔しさは僕が必ず晴らしてやる。
しばらくは一人の飛行が続く。
もう周りを飛んでいる人間は見当たらないので、やはりヨゼフがトップなのだろう。
だが、あいつだけにはトップは渡さない。
必ず僕がゴールしてみせる。
さらに飛ぶことしばし、ようやくヨゼフの背中を捉えた。
「ヨゼフ!」
「チィ! クソガキが! 追いついてきやがったか。あいつらも役に立たねえ」
「その言葉、お前とさっきの二人はグルってことでいいんだな!?」
「知らねえなあ! なんのことだ!?」
フン。
なんとしてもこいつの不正を暴いてやる。
だけど、その前に僕は堂々とこいつを抜いて、杖乗りとしてのプライドをへし折ってやる。
その為には敢えてこいつには攻撃魔術は使わない。
僕はこの箒だけで、あいつをぶち抜き、屈辱を与えてやるのだ。
杖乗りの弱点は杖に乗っているので前方にしか攻撃魔術を放てないことだ。
だから、先を飛んでいれば僕に攻撃を仕掛けることはできないので悠々と飛んでいられる。
逆に僕は魔術を使い放題なんだけど、箒一本であいつを抜くと決めているので、魔術は封印だ。
あいつにしてみれば、僕が攻撃を仕掛けてこないことが不気味なようで、先程からチラチラとこちらに視線を送っている。
これで焦ってくれれば流れがこっちに向いてくるかも知れない。
それにしてもやはり速いな。
僕に追いつかれてからは更に速度を上げた。
中々抜かすことが出来ない。
まあ、抜いたらすぐにでも攻撃魔術を使ってくるだろうから、どのタイミングで抜くのかは駆け引きが必要だ。
そう、本来レースとはそういった駆け引きを楽しむものだろうに、レースに余計な邪魔を入れるなんて無粋な真似をしてくれて、僕も相当頭に来ている。
一応あいつを抜かす手はあるのだ。
だが、それは直線距離がかなりないと使えない方法なので、カーブが続く今は使えない。
まだここは我慢だ。
ヨゼフもヨゼフで、先程とは違い、観客が応援出来るエリアに入った為にもう不正は使えない。
ここからは真っ当に勝負するしかないはず。
「しつこいガキだ。いい加減諦めやがれ!」
「お前は必ず僕が抜く! その上でお前の不正を公表する」
「はっ! やれるものならやってみやがれ」
「おお、先頭はヨゼフだ」
「レイゲンじゃないんだ」
「それより見ろよ。ヨゼフを追っているのはまだ子供じゃないか」
「本当だ。まだ学生なんじゃないか?」
「あの子凄い。あたし応援しちゃう!」
「頑張れー!!」
応援してくれる観客に勇気をもらい、僕はヨゼフの後ろにピッタリと張り付く。
あいつからしたら、かなり気になるはずだ。
僕は頭の中で、コースを思い描く。
この先のガーブを曲がったら長い直線に入る。
そこで勝負をかける。
カーブが近づいてくる。
ヨゼフが先にカーブを曲がった。
よし、僕をカーブを曲がり、そして、今だ!!
僕は杖を取り出すと後ろにかざす。
並行魔術起動。
風魔術魔法陣を六個展開。
同時発動!
「いっけぇーーーーーーーーーーー!!!!」
六個の風の渦が後方に向かって放たれ、その気流に乗って、爆発的な加速力が生まれる。
そして、ヨゼフを一気に抜いた。
「へい!」
「なっ、な、なぁ!?」
驚いたヨゼフは全速力で僕を追うが、風の力で急加速した僕に追いつくことは出来ずに、距離は開く一方だ。
ならばと、攻撃魔術を使ってくるが、僕は杖を後ろに向けて軽く迎撃する。
そして、その頼みの攻撃魔術が届かない程に距離が開いた。
もうヨゼフに僕を抜く術はない。
「く、クソが! こんな、こんな馬鹿なことがあってたまるか! 風魔術を後ろに向かって打ち出すだと? しかも六つも当時展開だと!? こんな馬鹿なことがあるか!!」
ヨゼフは喚く。
何のために仲間まで配置してこの大会に臨んだと思ってる。
こんな子供に抜かれるなどあってはならないのに。
しかし、悲しいかな。
距離は開く一方であり、ここから逆転する手段は思い浮かばない。
「ち、チクショウがーーー!!」
ヨゼフは悔しさのあまり絶叫した。
ヨゼフを抜いて、僕は気を抜かずに速度を保っていた。
そして、いよいよ終盤。
大勢の観客が見守る中、僕は最終カーブを曲がり、等々ゴールした。
『こ、これは意外な結末だ。一位でゴールしたのはゼッケン百七十一番。アルフ=アルベルト選手。まだ学生の無名の選手です。これは大番狂せだあ!』
拡散魔術で大音響となった声が響き渡る。
僕は手を振りながら声援に応えた。
やったよメリア。
優勝した!
しばらく休載します。
また復活するまでしばしお待ちください。




