レース5
もう既にかなり上位に食い込んでいるのではないかと思える程、何人も抜いてきた。
これは本当に優勝も夢ではないのかと思える程である。
しばらく無心で飛んでいると、下方に誰かが落ちているのが見えた。
あの人って・・・。
視線だけ追ってその人を見る。
うん、間違いない。
僕は無言でその人の上を通り過ぎた。
「メリア、今脱落していた人がいたじゃない?」
「いた? ごめん、集中してて下に目を向けてなかったわ」
「いたんだ。確か、レイゲンて人だった」
メリアはぎょっとして僕に視線を向けた。
うん、驚くのは理解できる。
なんといってもレイゲンさんは優勝候補筆頭と言われていた人だからね。
もし、その人が脱落したともなれば、強力なライバルが一人いなくなったことを意味するわけで、僕達のとってはありがたいことなんだけど・・・。
「それ本当?」
「うん、レースが始まる前に軽く挨拶したからね。顔は覚えているよ」
「何があったのかしら? 事故? それとも誰かにやられた?」
メリアはぶつぶつと言いながら、顎に手を当てる。
それは分からないけど、優勝候補筆頭がミスを犯すか?
猿も木から落ちるというやつだろうか?
何にしても気を引き締めていかなければならないだろう。
と、その時だった。
右左斜め前方から二人の杖乗りが僕達に迫って来ていたので、僕達は警戒をした。
すると、案の定、彼らは僕達に攻撃を仕掛けてきた。
「くっ!」
メリアはそれを躱し、なんとか飛行を保っている。
僕もその魔法を迎撃しているのだけど、この二人って・・・。
「メリア、この二人、ゼッケンをつけてない!」
「なっ!? 本当だ!!」
選手にはゼッケンをつける義務が生じているのだが、この二人の胸にはそのゼッケンがつけられていないので、この二人は選手ではないということを意味しているわけだけど、何故、選手でもない二人が僕達を攻撃してくるのかがわからない。
すると、更に前方から一人の杖乗りがやってくる。
ヨゼフだ!
ヨゼフは攻撃魔法を乱射して僕達に迫ってきた。
三方からの攻撃。
裁き切れない。
僕は防御魔術を展開して、その攻撃を防ぐ。
そうでなければ、こちらはやられていただろう。
「もしかして、こいつらって!」
「仲間! こいつらグルなの!!」
そうか。
ヨゼフは仲間をコース上に忍ばせておいたのか。
そして、誰も見ていないところでこうして攻撃を仕掛けてきたってわけだな。
もしかして、レイゲンさんを撃ち落としたのはこいつらか!
「ヨゼフ! 汚いぞ!!」
「がはは! なんのことだ? こいつらがなんなのか、俺にはさっぱりわからねーなあ!!」
しらばっくれるつもりか!
だが、レイゲンさんを撃ち落としたのがこいつらならあの人は、これを大会委員会に訴える筈。
それに僕らの証言も加われば、信憑性はぐっと高くなる。
ヨゼフ、それがわかっているか?
「こんなことをしてただで済むと思うなよ!」
「知らねーなあ。俺は何にも知らねえ。優勝するのはこの俺様だぁ!!」
何度か攻撃を放ったところで、ヨゼフは急旋回し、コース上に戻って飛んで行った。
僕達も追いかけようとしたのだけれど、ヨゼフの仲間の二人の必要な攻撃を浴びせられて、思うように飛行が出来ない。
しかもこいつら!!
ゴッと凄い稲妻が僕の前を通り過ぎていった。
「い、今のって中級魔術!?」
「選手じゃないし、もう既に反則してるしね。なんでもありだ」
初級以上の魔術は使用禁止のルールがあるんだけど、こいつらはお構いなしに仕掛けてくる。
くそ、厄介な。
「メリア。反撃するよ?」
僕は一言メリアに断りを入れる。
メリアは極力、攻撃を仕掛けずに、杖乗りの実力だけでこの大会に挑もうとしていた。
だけど、こうなってしまっては、こちらも反撃をしないとやられてしまう。
悔しそうに俯くメリアだったが、その後に大きく頷いた。
よし!
僕は莫大な魔力を体内から放出した。




