レース4
また三人抜いた。
アルフとメリアは絶好調だった。
何人もごぼう抜きにして、現在、上位に食い込んでいることは間違いない。
メリアは自分の中の自信が大きくなっているのを感じた。
イケる。
杖競技には自信があったが、自分は十分通用する。
それが確信に変わり、俄然、一位入賞という目標が見えてきた。
それにしても、横にピッタリとついてくるアルフは流石と言うべきか。
物が箒だと言うのに、それを感じさせない飛行を見せているのには、舌を巻かざるを得ない。
実は、開始直後は、飛行技術に置いて、アルフはメリアよりも劣っていた。
それは仕方のないことだろう。
アルフが生きていた時代から五百年が経っているのだから、飛行技術は日々進歩しているのだ。
真っ直ぐ飛んでいる時はいいが、カーブなどになると、どうしてもアルフは一歩遅れていた。
だが、それもついさっきまでの話だ。
アルフはメリアを見て、自分の修正すべき個所を瞬時に把握すると、それを実戦の中で吸収し、自分の物にしていった。
今ではメリアと比べても遜色がない飛行を見せている。
もし、世界一の杖乗りとしばらく一緒に飛んでいれば、それすらも自分の物にしてしまうのではないかと思えてしまう。いや、実際に吸収してしまうのだろう。
攻撃魔術に置いては現代でも超一流、ポーション制作などの錬金術に対する知識も幅広く、剣魔術など、五百年前にはなかった未知の魔術体形にも柔軟に対応して見せた。
そして、この杖(箒)乗りに対しても、もうプロと言っても過言ではない。
万能の天才。
かつて、アルフレートが呼ばれていた偉大な呼び名そのままに、アルフは現代魔術を吸収し、自分の物にしていっている。
この大会が終わるころには自分を超えているか、いや、既に超えているのか?
本当に頼もしくも恐ろしい、自分が尊敬してやまないアルフレートの生まれ変わり。
そんな偉大な人物と肩を並べて飛んでいることがたまらなく誇らしい。
メリアは肩をぶるっと震わせながら、杖に力を入れた。
「さあ、アルフ、このままどんどん行くわよ!」
「了解!」
流石に上位になってくると中々抜かせてはくれない。
それでもじりじりと距離を詰める。
「メリア、こっちから攻撃は仕掛けないの?」
アルフが尋ねる。
攻撃魔法ありのこの大会。
前方にしか魔法を放てない杖の性質上、追われる側よりも追う側の方が圧倒的に有利である。
通常であれば、攻撃して撃墜させてやればいいのだから。
だが、これまでメリアは一度も前を飛ぶ参加者に攻撃を仕掛けてはいなかった。
「攻撃するのは趣味じゃないわ。私は純粋にこの杖乗りの技術だけで勝ちたいの」
アルフはそれを聞くとニヤリと笑った。
その意気やよしといったところか。
「よし、じゃあ、前に飛んでいる人達を加速して抜くよ」
「わかったわ!」
二人の快進撃はまだ終わらない。
*********
アルフ達が快進撃を繰り広げている中で、トップ争いをしていたのがレイゲンとヨゼフの二人であった。
ヨゼフは後方からレイゲン目掛けて魔法を乱射しながら、距離を詰める。
「がはははは! 今年こそは勝たせてもらうぜレイゲン」
「しつこい男だ。しかし、お前の飛行技術では私には勝てない!」
「なにおぅ!!」
ヨゼフはレイゲンを睨みつけた。
「そういうことは終わってから言いやがれ!」
「あまり攻撃魔術を使い過ぎるのはどうかな? 飛行するための魔力まで使い切るぞ」
「ちぃ!」
前大会ではヨゼフは魔力枯渇というスタミナ切れにあい、敗北した。
今回も同じ轍を踏むわけにはいかない。
ここで、トンネルをくぐる箇所に差し迫って来た。
暗くなるために事故が起こりやすくなる注意しなければならないポイントだ。
レイゲンは集中してトンネルに入る。
暗いが、先に明るくなっており出口は見えている。
速攻で抜ける。
そう思っていたのだが、ここで視界に動く何かが入って来た。
レイゲンは不審に思う。
おかしい。
大会で使われているコース上には人払いがされているはずなのだが・・・。
すると、動く何者かはレイゲンに向かって攻撃魔術を放ってきた。
「何!?」
レイゲンはそれを慌てて躱すが態勢は崩れた。
一体何が起こった?
何故、いきなり攻撃を仕掛けてきたのだ!?
混乱しているレイゲンの背後からヨゼフが近距離で魔術を放つ。
レイゲンはそれを間一髪で回避した。
すると、また別角度から魔術が放たれた。
どうやら妨害をしているのは一人ではないようだ。
そして、その妨害者はヨゼフには一切攻撃をしないところを見ると、恐らくは。
「これは貴様の差し金か。ヨゼフ!!」
「がはは! なんのことだ? 俺にはさっぱりわからねーなぁ!!」
「き、貴様ぁ!!」
怒るレイゲンだったが、この三方向からの攻撃にはどうすることも出来ず、遂に被弾してしまい、ぐるぐると回転しながら墜落する。
「がはははは! これで俺の優勝は決まったぁ!!」
意気揚々とトンネルを抜けていくヨゼフを、レイゲンは悔しそうに見送るしかなかった。
「ヨゼフ! あの卑怯者がぁ!」
無論、この後、抗議に行くが、証拠はないし、果たしてどうなるだろうか?
悔しい。
飛行技術で負けるのならば納得もしよう。
しかし、あんな不正をするような奴に負けるのは我慢ならない。
誰か、誰かいないのか?
あの卑怯者を止めてくれる誰かが!
その時、後方から凄まじいスピードで迫る二つの影をレイゲンは見た。
あれは、確か大会前に軽く言葉を交わして、箒乗りの少年、名を確かアルフと言ったか。
そのアルフと、仲間である女性があっという間にレイゲンを通り越していく。
「もしかしたら、あの二人なら、気をつけろよ二人共!」




