またもスカウト
それから杖乗りの授業は行われた。
最初は僕を馬鹿にしていた人達も、実際に箒に乗っている姿を見ると態度を変えて、僕にアドバイスを求めるようになった。
中には妬ましげに僕を見る人もいたけれど、まあ仕方ない。
色んな人がいるものだ。
一々気にしていたらキリがないし、自分でも自分が異端であるという自覚はある。
僕は自分の意地を通したけど、協調性のある人間ならこんなことはしないだろうから、僕は少なくとも場の空気を読んで行動する人間ではないのだろう。
ああ、だから敵を作るのか。納得。
やはり、僕がからまれるのには理由があったらしい。
僕だけが原因とは言わないけれど僕にも原因の一旦はあるのだろう。
少なくともこの杖乗りでもし絡んでくる人間がいるとしたら、僕にも絡まれる要因があったということだ。
反省。
まあでも、今のところクラスメイト達との関係は良好。
箒で空を飛んだ僕が相当珍しかったらしく、興味本位な人間からアドバイスを求めたい人間なども多くいたし、中には自分も箒で空を飛んでみたいと言ってくれる人もいた。
ふっふっふ、いいよ、布教しようではないか。
時代に逆らい、箒ブームを作るのだ。
最初は僕の行動にいい顔をしていなかったレスティーナ先生であったが、僕が問題なく箒に乗れていることと、それで生徒間でコミュニケーションを取れていることを見ると特に何も言ってはこなかった。
なんだかんだといい先生なのだろう。
結果。
楽しい授業でした。
「では、本日の授業を終わります。速やかにクラスに戻りなさい」
そう言って授業を終わらせたレスティーナ先生は職員室へと戻っていった。
僕達もクラスに戻ろうとした時。
何人かの生徒がぞろぞろとやって来た。
なんだか嫌な予感。
「今、箒で空を飛んでいたのは誰だ!?」
授業が終わってすぐに駆けてきたのだろう。
皆、一様に息を切らせている。
これは、トラブルの予感。
そして、うん、このトラブルは僕が呼んだものですね?
僕が悪いね。うん。
一瞬無視しようかと思ったが、全員が僕を見る。
おい、クラスメイト達。
さっきまで一緒に授業を受けた仲じゃないか。
そんな『こいつが犯人です』みたいな視線は止めてくれ。
「君か!」
やって来た上級生が僕の肩を掴む。
「飛んだのは僕ですけど、何か御用でしょうか?」
「箒で空を飛んでいたな? あれは特別な箒なのか?」
「いえ、普通の掃除用箒です」
唸る先輩。
後ろでおお~と驚くやって来た一同。
この人達って皆、何かのグループなのかな?
「素晴らしい才能だ。まさかこの時代に箒で空を飛ぶとは。何百年前かの魔術師の様だ」
「ありがとうございます」
惜しみない称賛に、お礼を言っておく。
珍しかったから様子を見に来たのかな?
いや、多分それだけじゃないね。
「それで、どういったご用件でしょうか先輩?」
余程興奮していたのか、僕の肩を掴んでいることも忘れていたようで、手を離すと軽く咳払いして先輩は本題に入る。
「失敬した。僕はウォンダー。杖乗り部部長だ」
杖乗り部。
そんな部もあるのか。
いや、魔術学校なら確かにありそうだ。
となると、この人の用件が見えてくる。
「察するにスカウトでしょうか?」
僕の箒乗りを見て部活の勧誘に来たってところかな?
「ああ、その通り。是非我が杖乗り部に入部して欲しい!」
やっぱりか。
でも、困ったな。
「実は僕、剣魔術部にもスカウトされてまして」
「剣魔術部? ・・・ああ! 君、アルフ=アルベルトか!」
おおおお~~、と周りから歓声が上がる。
「あれがアルベルト家の秘蔵っ子?」
「入学の時に決闘した?」
「そうだ、あのアルベルトだ」
「決闘も強くて、杖乗り、いや、箒乗りも出来るのか。多才な奴だな」
僕も大分有名になってしまったようだ。
口々に僕のことを囁き合う、杖乗り部の面々。
「そうかそうか。いや、話は聞いているよ。剣魔術でも才能を示したって? 大したものだ」
「それほどでも」
驚いた後で、悩まし気に顔を顰めるウォンダー先輩。
「なあ、アルベルトは」
「アルフと呼んでください」
「分かった。アルフは剣魔術部に入るつもりなのか?」
恐る恐るそう尋ねてくる先輩に僕は首を横に振る。
「いえ、掛け持ちでもいいと言われているんですけど、僕忙しくて」
「他の部活からも声を掛けられているのか?」
すわこれ以上ライバルが増えるのかと身構えたウォンダー先輩。
僕は慌てて否定する。
「いえ、もっと色々な魔術の研究もしたいので、一つのことに打ち込みたくないんです。だから、お誘いは嬉しいんですけどお断りします」
「そ、そうか」
がっかりしたウォンダー先輩を見るとちょっと心が痛んだ。
僕は箒乗りが嫌いなわけじゃない。
乗るのは楽しいし好きだ。
だけど、それ一つにかまけてはいられない。
例のポーション作りの件もある。
やはり、ここは断るしかないだろう。
「な、なら助っ人に入るくらいはどうだ?」
「助っ人ですか?」
先輩はコクリと頷く。
「是非参加して欲しいんだ。三日後に行われる杖乗り大会に」




