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告白の返事

「何を話してるのよぉ~~」


 メリアは木陰からずっとアルフと女の子の様子を窺っていた。

 残念ながら距離があるために会話の内容までは聞き取れない。

 一体何を話しているのか?

 結局アルフからは返事をどうするのか聞き出せないまま放課後になってしまったのでアルフがどうするのかまだ分からない。

 相手を見てそれから決めようとしているのだろうか?

 遠目に見た感じ、女の子の容姿は悪くない。

 率直に言って可愛い。

 自分も容姿にはそれなりに自信があるが、自分よりも更に幼くした小動物系の女の子だ。


 顔を赤らめてなんとも初々しくて可愛らしい。

 あれは告白だ。

 誰がどう見ても告白だ。


 好みのタイプだったらどうしよう?

 付き合うのか?

 付き合ってしまうのか?


「この間は女の子に興味ないって言ったじゃない。魔術が恋人って言ってたじゃない。そんな鼻の下伸ばしながら告白受けてんじゃないわよ!」


 ギリギリギリと歯ぎしりをしながらも固唾を呑んで凝視するメリア。


「なんで私まで・・・」


 その横でなんか若干嫌そうな顔をしているリゼがいた。


「何言ってんのよリゼだって気になるでしょう?」


「まあ、気にならないと言ったら嘘になるけど、こんな覗くような真似」


「アルフに彼女が出来たらどうするのよ! リゼだって嫌でしょう?」


「いや、私は・・・」


「いい子ちゃんぶってんじゃないわよ。リゼだってアルフのこと好きなのは分かってるんだからね!」


「・・・」


 リゼ沈黙。


 今更隠し事もないのだ。

 三人は生死をかけて戦った仲ではないか。

 あんなぽっと出の奴にアルフを取られてなるものか。


「くっ、聞き取れない。何話してるのよ。もっと近づいて・・・」


「これ以上近づいたら気づかれるよ。隠れるところもないし」


「ぬぎぎぎぎぎ!」


*********


「アルフ君が好きです。あたしと付き合ってください!」


 ほんとに告白だった。

 なんとなく盛り上げておいて実は違いました、なんて落ちもあるのではないかと思っていたけど違いました。

 本当に正真正銘の告白でした。


 母さん。

 僕やったよ。


「えっと、君の名前は?」


「あ、ごめんなさい。あたし、夢中で」


 なんだか照れてる仕草も可愛らしい。


「あたしサレンって言います」


「サレンか。いい名前だね」


 褒められるとまた照れる。

 印象の通り小動物みたいな子だなあ。


「それでサレン。君は僕のどんな所を好きになってくれたの?」


 ここ、重要。

 僕の魅力ってなんだろう?


 自己分析すると僕はただの魔術馬鹿って感じなんだけど、入学初日からやらかしたし、トラブルだって起こしてきた。

 割と関わりあいになりたくない人物なのではないかとさえ思えてしまうのだけど、女の子から見たら僕はどう映っているのだろうか?


「あ、あの・・・かっこいいなぁって」


 カッコいい!

 僕が?

 人生で初めて言われた。

 そうなの?

 僕って女の子から見たらかっこいいの?


 そっかー。

 そっかーー。


「た、例えばどんなところが?」


「あ、あたし、アルフ君のこと、クラスは違ったけど見てました。入学式の時のコーダ君との決闘もかっこよかったし。一晩で十ヵ国語覚えたって話題になってたし、成績も優秀で、この間も不良の先輩に絡まれても堂々としていたし、あっ、剣魔術部にスカウトされてたった話もちょっと話題になってます」


 へぇ。

 僕のやらかしをそんな風にとってくれる人がいるのか。

 おっと、いかんいかん。

 調子に乗ってはいけないな。

 冷静に冷静に。


「ありがとね」


「は、はい。それで、その、お返事は・・・?」


 おっとそうか。

 返事をしなくちゃね。


 サレン。

 とってもいい子だ。

 もし、この子とお付き合いをして学生生活を送れれば楽しい毎日なんだろうな。


 ・・・。


 うん。








「ごめんね。お断りします」


「・・・あ」


 期待と不安が入り混じった表情をしていたサレンの顔が一気に曇る。

 キツイ。

 これはキツイ。

 胸が締め付けられる。


「あ、あの、理由を聞いてもいいですか? 他に好きな人がいるとか?」


「ううん。今は特に好きな人はいないよ」


「そ、それじゃあ、あたしに、魅力がないから・・・」


 どんどん表情が暗くなっていく。

 今にも泣いてしまいそうだ。


「そんなことはないよ。君はとっても素敵なレディだ」


「それじゃあなんで!」


 涙を振り切って尋ねるサレンに僕は努めて真摯に語り掛ける。


「僕は、今魔術に夢中なんだ」


「・・・魔術」


「うん。ずっと夢見た魔術学校に入れた。これからどんどん魔術を学んでいきたい。今、サレンと付き合ったら、そっちに夢中になって魔術がおろそかになってしまうかもしれない。僕はそれが怖い」


 泣き崩れたいのかもしれない。

 走り去りたいのかもしれない。

 だけど、サレンはそれらを堪えて僕の話を聞いてくれる。


「だから、サレンじゃなくても、例え世界一の絶世の美女に告白されても僕の答えは変わらなかったと思うよ。僕は恋愛を必要としない。それはもう少し先でいい。今は魔術を出来る限り吸収したい。それが僕の答えだ」


「・・・わかりました」


 サレンは肩を落としてトボトボと僕から離れていった。

 僕はその後姿を見つめる。


 はぁ、あんないい子の告白を断っちゃって。僕ってやつは。

 これはまた、僕は童貞で死ぬかもしれないな。


 そんなことを考えていると、サレンがくるっと回って僕を見る。


「あたし、諦めたわけじゃないから! アルフ君が『まだ』って言うんならその時になったらまた告白しにくるから!」


 そう言い残すと、サレンは走っていった。

 僕はポカンとそれを見送った。


「・・・はは、強いなぁ」

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