別の日に別の先輩
「アルフ=アルベルトはいるか?」
来た。
僕はズウンと肩が重くなった。
やはりあの一件で僕は先輩達から目をつけらてしまったらしい。
また新たな先輩が僕に因縁をつけようとしているのだろう。
やだなぁ、どうしようかなぁ、でも、先輩だし無視するのもなぁ。
教室内で、他のクラスメイト達の視線が自然と僕に集まる。
その視線を追って、名も知らぬ先輩と僕の目がバッチリと合ってしまったのでもう逃げることは出来ないと悟る。
仕方がないので僕は立ち上がって、恐る恐る先輩の方に行く。
「アルフは僕ですけど何か御用ですか?」
「ああ、君にちょっと話があってね。ちょっとここだとなんだな。ついてきてくれるか?」
なんだろう。
ここだと騒ぎになるからか?
やっぱり喧嘩方面だろうか?
「アルフに何か御用ですか先輩!」
僕が困っていると、メリアとリゼがやって来た。
おお、二人共。
ちょっと心強くなったぞ。
「うん? 君達は?」
「アルフの友達です!」
メリアは僕を庇うように先輩の前に立った。
きゃあ、メリア、イケメン。
「そうか。ちょっとアルベルトに話があるんだ。借りていいか?」
「だから、一体何の御用ですか?」
警戒心を解くことなく、メリアは問いかける。
僕は少し警戒心を緩めてもいい気がしてきた。
この人はグジーと違って、敵意もないし喧嘩腰でもない。
本当に何か用があって僕の所に来たのかもしれない。
メリアの態度に少し不信感を持ったようで、先輩は眉を潜ませるも、すぐに何か思い至ったようで「ああ」と頷いた。
「ひょっとして君は、俺がグジーみたいにアルベルトに喧嘩を売ると思っているのかな?」
「・・・違うんですか?」
「違う違う。とんでもない」
首を横に振りながら両手を前に出した先輩は、酷く焦っている様子だ。
「そう思われるのは心外だが、まあ、君がした経験を思えばそう思われても仕方がないと思うが、誓って言うよ。俺はアルベルトに危害を加えようと思っているわけではない」
「・・・本当ですね?」
先輩は大きく頷く。
「ああ、なんなら君達もついてきたらいい。その方が君達も安心するだろう?」
メリアとリゼはお互い頷き合うと、僕達についてくることにしたようだ。
クラスメイトの関心を集める中で、僕達は廊下を移動し、今は使っていない空き教室へとやって来た。
「さて、ここならゆっくりと話が出来るな」
先輩は僕に向き直り、自分の胸に手を当てる。
「まず自己紹介をしよう。俺の名はザック。ザック=シルベスタという。三年生だ」
ザック先輩は僕よりも少し身長が高く、煌めくような金髪をした生徒だった。
身体を鍛えているようで体幹はしっかりしている。
戦いに身を置いている人の身体だ。
「それでザック先輩。僕に一体どんな用事があるんでしょうか?」
「単刀直入に言うよ。俺は君が欲しい」
「え!?」
僕は思わず自分を抱きしめた。
僕が欲しい?
え? それって僕を彼氏にしたいとかそういうことなのだろうか?
やだ、どうしよう。
この人、男の子に興味があるタイプの人なのかなぁ?
そんな、僕に人生初めての告白してきた相手がまさかの男の人だなんて。
「あ、あの。先輩は男の子に興味のある人ですか?」
「ん?」
ドギマギしながら訪ねるとザック先輩は意味が分からないというように首を傾げた後に、僕の言わんとしていることを思い至ったようで、目を盛大に見開くと慌てて弁解を始めた。
「違う違う。変な誤解は止めてくれ! い、いや、誤解を招く言い方をしたのは俺か。違うんだ。決して恋愛対象として君を見ていたわけではない」
なんだそうか。
心底ほっとしたぞ。
じゃあ、欲しいってどういうことだろう?
「俺が欲しいと言ったのは君の魔術師としての才能だよ」
「魔術師としてのですか。具体的に言うとどういったことなんでしょうか?」
魔術と聞いては聞き流せない。
一体何だろう?
「うん。アルベルト」
「あ、アルフで結構です」
アルベルトってどうも慣れないんだよね。先生とかはまだ仕方ないけど、同じ生徒同士ならアルフと呼んでもらったほうがいい。
「じゃあ、アルフ。俺は剣魔術部なんだけどね」
「『剣魔術部』?」
なんだろう。
魔剣を愛でる会みたいなものだろうか?
「剣魔術部というのは、杖に魔力を通してそれを剣として戦う武術のことなんだけど、この学校はそれを部活動としてやっているんだ」
「ほぅ」
ほうほう。
杖に魔力を通して剣に。
それは面白い発想だな。
五百年前にはなかった戦法だ。
「そこでだ。アルフ。この間のグジーとの戦い。そして、入学する際にゴーダとの戦いを見て思った。こいつは素晴らしい戦闘センスを持っていると」
「それはどうも」
「是非、剣魔術部に入部して欲しい。俺達と一緒に青春の汗を流そうぜ!」




