勝利の余韻
闘技場から出ると通路の向こうからメリアとリゼが走って来た。
僕は手を振ってそれを迎える。
「「アルフ!」」
「勝ったよー」
メリアは嬉しそうにウインクして僕に拳で胸の辺りをコツンとする。
「気分良かったー。顔面に一発食らわせてやったわね!」
メリアが気分良さそうなので何よりだけど、僕としては複雑だ。
「まあ、最後のはいらなかったよね。僕としてはメリアの件があったから、一発入れたけど、水魔法で縛り上げた時点で勝負はついてたんだし」
実際にゴイル先生は判定を下しそうな素振りを見せていた。
メリアの借りを返したかったから急いで動いたけど、本来あの一発はいらなかった筈だ。
「いいのいいの。あっちから喧嘩を売ってきたんだからあれくらいしたってバチは当たらないわよ」
「そうだといいけど」
「ふふ、アルフにとってはあの程度の相手、なんでもなかったね」
リゼ片目を瞑りながら苦笑しているけど、それほど単純でもなかった。
「そうでもないよ。一年生よりも魔術起動は早かったし、あの喧嘩魔術には驚いたよ。魔法を使いながら殴りつけてくるなんてね」
純粋な魔術士ならばまずない発想だ。
新鮮でちょっと面白かった。
「そうでもないよ。アルフはちょっと感覚が違うかもしれないけど、近接戦をやりながら魔術を使うってスタイルは割とある」
「えっ、あるの?」
なるほど、現代魔術はそれが流行りか。
確かに古い人間である僕にはあれは新鮮だった。
「まあ、だからね。私達にとってはそれほど驚くべき相手でもなかったってところかな。正直見ていて私でもなんとかなると思ったよ」
「そうね。私も同年代ではそうそう負けないと思っているから、一年上の上級生だからってあの程度なら遅れは取らないわ」
「へぇ。頼もしいね」
この二人ならあれくらいの上級生なら一対一で勝てるか。
やっぱりこの二人は才能がある。
これから将来、僕の傍で魔術に打ち込んで欲しい逸材だ。
「アルベルト君」
ミネルヴァ先生がやって来たので僕は杖を差し出す。
「先生。杖、ありがとうございました」
「いえいえ。やっぱりアルベルト君は強いですね」
「相手が授業をちゃんと受けてなかったからでしょう」
「その分、喧嘩に明け暮れてますから、実戦はそれなりの子なんですけどね。アルベルト君には敵わなかったですけど」
僕は苦笑いを返す。
「先輩が起きたらメリアに暴行した件。ちゃんと罰して下さいね」
「それは任せてください。ちゃんと罰を与えますから」
謹慎があの先輩に取って罰になるのかは分からないけど、何もしないよりはマシかな。
「気を付けてくださいねアルベルト君。君が上級生にも勝てるだけの力があると、これで周りから認知されてしまいます。余計なトラブルに巻き込まれないように」
「ええ~。勘弁してもらいたいなぁ。僕はじっくりと魔術に取り組みたいだけなのに」
これで益々悪目立ちしてしまったということか。
また同じように絡んでくる上級生がいないといいんだけど。
「気を付けてくださいねほんと。私達教師陣も目を光らせておきますから。君は一年生のエースなんですからね」
「僕はただ魔術に打ち込みたいだけなのにぃー」
アルフ=アルベルトが上級生であるグジーに勝利したニュースは瞬く間に学校中を駆け巡った。
入学から注目されていたアルフはこれ以降、上級生達からも一目を置かれるようになる。
そして、行動に移す人間も当然存在する。
アルフはそのことをまだ知らない。




