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ポーションの実験

 ここは自室。

 おじいちゃんにおねだりして買ってもらった実験道具を使って今、新しいポーションを作っている。

 試験管に液体を注ぎ、採取した薬草から抽出した液体を加え、振る。

 いくつも並べられた試験管。

 そこにはそれぞれ違う成分の液体が入っている。

 その中でようやく満足のいく出来の物が完成した。


「ま、こんなものかな」


 この回復ポーションならば、僕の想像通りの効能が期待できるんだけど、さて、実験してみないことにはなんとも言えないな。

 かと言って、まさか、病院に行って患者さんに使って下さいとも言えないしな。

 僕は今年、学校に入ったばかりの少年なのだから門前払いを食らうのがオチだろうし、となるとやはり自分を実験台にするしかないわけだけど。


「よし、やるか!」


 僕は覚悟を決めて自分の腹に手を当てた。

 そして風の魔術を使う。

 圧縮された風の塊が僕の腹にぶつかり、僕は後方に飛ばされ壁に激突した。


「ぐふぅ!!」


 不味い。

 これは、キイた。

 骨が折れたか、内臓が傷ついたか。

 とにかく重傷だ。

 は、早くポーションを使わなくては、今のままの状態は非常に危険だ。


 しかし、吹っ飛ばされてしまったので、ポーションから距離が空いてしまった。

 数メートルの距離であるが、今の僕にはそれが果てしなく遠くに感じる。

 ゆっくりと立ち上がろうとしたがとても痛くて、ぺたんと尻餅をついた。

 本格的に不味い。

 変な汗出てきた。

 僕は座ったままずりずりと少しづつ移動をするが、ポーションは遥か遠い。

 こ、このままでは気を失う。

 こんな状況を母さんに見られたら何を言われるか分かったものではない。


 頑張れ、頑張れ僕。

 その時、ドアがノックされた。


「アルフー。なんかドンて音しなかった?」


 この声はメリアだ。

 遊びに来たのか?

 チャンス!


「メ、メリア。入ってくれる」


 キィっと音がしてドアが開かれた。


「さっきの音なあに? って、どうしたの?」


 座り込んで蹲っている僕にぎょっとして、メリアが駆け込んできた。


「アルフ、どうしたの? 顔色が悪いわ。脂汗も出てるし、お、お腹痛いの?」


 心配しているメリアに僕は出来るだけ笑顔で応え、震える手でポーションの入った試験管を指さした。


「メ、メリア。あそこにある試験管を持ってきてくれる?」


「試験管?」


「詳しい話は今はなしで。お願い」


「わ、分かったわ!」


 メリアは頷くと駆け足で試験管を取って来ると戻って来た。


「アルフ!」


「ああ、助かった」


 僕は服をめくり上げる。

 そこには真っ青に晴れ上がった僕の腹が痛々し気に顔を出す。


「ど、どうしたのよそれ!?」


 答える暇さえ欲しかった僕は無言で、ポーションを振りかけ、残りを飲み干した。

 すると、傷は見る見るうちに治っていき、たちまち元通りのお腹になった。

 メリアは目を丸くする。


「ええ! あれだけの傷が一瞬で」


 お腹を出しっぱなしにするのも恥ずかしいので、直ぐに服を戻して隠す。


「いやあ、天の助けだ。ありがとうメリア。女神様」


「な、なんとかなってよかったけど」


 メリアはほっとしたように胸を撫で下ろしてため息を吐いた。


「それで? これは一体どういうわけ? 誰かにやられたの?」


 心配そうに問いただすメリアに僕は若干気まずいものを感じながらそれを否定すべく、首を横に振った。


「いや、自分でやった」


「自分で!」


 メリアは驚いたが、僕は頷くしかない。


「必要だったんだ。今のポーションを試すためには怪我をしなければならなかったから。他の人を実験台にするわけにはいかないから、それで自分で」


「だ、だからって。大怪我だったじゃない! 絶対に骨折れてたわよ!?」


「い、いや。僕も予想外だったんだ。思ったよりもいいのが入っちゃって。で、でもいい実験になったよ。あれだけの怪我でも一瞬で完治するんだから、あのポーションは成功だ」


 僕は喜んだがメリアは、空の試験管を見つめる。


「上級ポーションね。相当いい薬草を使ったんじゃない?」


 メリアの質問に僕は首を横に振った。


「ううん。下位の薬草だよ。ちょっと街を出れば取れるやつさ」


「嘘! そんな筈。この辺で取れる薬草であんな効能が出る筈ないわ!」


 驚いてメリアは空の試験管を掴み取った。


「薬草と魔力を込める比率、そして、抽出の方法によって、既存のポーションよりも何倍も効果が出るやり方を本で調べていくうちに発見したんだ。現代の薬草知識に僕が元から持っている知識を元に研究していたら上手い方法が見つかってさ」


「・・・」


「これが完成したらこれまでよりもずっと安価で、上級並みのポーションが買えるようになる。救える命がぐっと増えると思うんだけど、どうかな?」


 僕はメリアの意見を聞きたくて問いかけるも、メリアは沈黙したままだ。

 どうしたのだろう?


「は~、またとんでもない物を作ったわね」


「どう? イケると思うんだけど」


「駄目ね」


「え!?」


 僕の期待を裏切るかのようにメリアは首を横に振る。

 効き目が悪いってことか?

 いいと思うんだけどな。

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