プロローグ2
「先生!」
ドアが開かれ、一人の男が入って来た。
「・・・なんじゃアルバート」
こ奴の名はアルバート。
わしの不肖の弟子じゃ。
もうほんとう、不肖の弟子じゃ。
「どうしたんじゃアルバート。お主、また何ぞやらかしたのか?」
そう尋ねるとアルバートは、男のくせに頬を膨らませて怒った。
可愛くないわい。
「酷いですよ先生。俺が毎回何か仕出かしてるみたいな言い方じゃないですかそれ?」
「違うのか?」
「違いますよ」
わしは胡乱気にアルバートを見つめる。
「またどこぞの女性と揉め事を起こしていないか?」
「起こして・・・ますけど、なんとかします」
起こしているのか・・・。
わしは頭を抱えた。
この男、顔はイケメンで身長も高い。
スマイルも爽やかで笑うと、女性にはキラキラ光って見えるらしい。
トークも軽快でやたらとモテる。
それなので、女性関係の揉め事が後を絶たず、わしにまで飛び火したことがこれまでに何度かあるので、警戒はしておかなければならないのじゃが、今回は揉め事ではないそうじゃ。
「ではなんじゃ、血相を変えて」
「えへへ。それがですねぇ」
悪い予感をビンビンと感じるのぉ、それはもうビンビンと。
笑うな。
その顔で笑いかけるんじゃない、女性には効くかもしれんが、わしには不快なだけじゃ。
「新しい魔術を開発したんですよ」
「・・・何と言った?」
「ええ? 先生遂に耳が遠くなっちゃいました? ですから、新しい魔術を開発したんですって」
こいつが新しい魔術を?
なんと不吉な。
「ど、どんな魔術じゃ?」
「それがですね。そりゃーもう凄いんですって。先生の極には及びませんが、もうサイッコウで」
「わ、わしのいるところで実験するんじゃぞ。くれぐれも一人でやるんじゃないぞ?」
こいつをほったらかしたら一体何をするのか分かったものじゃないからの。
わしがちゃんと見張っておかなければ、この歩くトラブル生産機には。
「・・・あ、あー、あー」
まさか・・・。
「お主、まさかもう実験したんじゃあるまいな?」
「まあ、その? 一応?」
「したのか!?」
遅かったというのか?
いや、待て焦るな、まだ慌てる時間ではない。
「いやだって、一応先生に見せる前にどんなもんかやっとかないといけないじゃないですか? だから、まあ、さっき、やったんですけど」
「ですけど! ですけどなんじゃ、何をやらかした!?」
落ち着くのじゃ、わし。
まずはお茶を飲んで心を落ち着かせて。
「・・・丘の一部が吹っ飛びました」
ブフゥ!!
お茶を噴き出した。
襟首をつかむ。
そりゃーもう思いっきり引っ張る。
「お主という奴はー!!」
「ぐえ、苦しい。苦しいっす先生」
「なんでそうなんじゃ、なんでそうなんじゃお主は!」
「ゲホゲホ。いや、もう少し上手く制御できるかと思ったんですが、これが中々難しくって」
「ぎ、犠牲者は。誰も周りにはいなかったんじゃろうな!?」
「あ、それは大丈夫です。ちゃんと確認したんで」
「そ、そうか」
まずは安心とするべきか。
わしはふらふらと椅子に寄りかかった。
「先生。大丈夫ですか?」
「あ、ああ、ロックや。大丈夫じゃ」
「そうだぜロック。先生はこの程度でどうにかなるほどヤワじゃない」
お主が言うな。
「師兄。もう先生はお歳なのですからもう少し気遣わなくては」
「まあまあ。ねえ先生。これ先生なんとかなりません? 復元魔術でちょちょいと元に戻せません?」
「・・・はぁ」
まったく、まったくこいつは反省もせんと、何度も何度も。
「仕方ない。行くか」
「さっすが先生。助かりますー!」
「お主はちょっとは反省せい!」
*********
朝。
小鳥のさえずりで目を覚ました。
まどろみの中、何となく覚えている夢を思い出してみる。
「久しぶりに昔の夢を見たな」
五百年前の、懐かしい記憶。
僕はほんのり笑ってしまった。
「アルフー。そろそろ起きないと遅刻するわよー」
母さんの声が聞こえる。
僕は一度伸びをして返事をした。
「わかったー。今起きるよー」
僕はベットから飛び降りるといそいそと着替えをすることにする。
ロックも気になってるけど、あの馬鹿弟子はその後ちゃんとやれてたんだろうか?
それを思うとほんのちょっと不安になる僕だった。
お待たせしました。
連載再開します。




