エピローグ
「流石に“黒炎”と呼ばれるだけはある。大した耐性だね」
「なに、が、生焼けだ。俺じゃなけりゃ、死んでるぞ」
「ま、僕の自慢の魔術、魔法を見せたんだ。見物料さ」
「ま、ほう。本当にあれが、魔法なのか」
「お前なんかに見せるつもりはなかったんだけど、流石と言っておくよ」
「クソが。とっとと殺せ」
「お前に死なれると困る。依頼主は誰だ?」
僕がそう聞くと、黒炎は楽しそうに笑う。
ちょっと狂気が入ってるな。
「かはは、やったぜ。お前に一泡吹かせることが出来るぜ」
「・・・何?」
「俺が、されるがままでいてたまるかよぉ!!」
ゴォ!!
「うぉっ!?」
黒炎は自らを焼いた。
自分自身に炎の魔術をぶち当てて。
「きゃははははは!! じゃあな化け物。地獄で待ってるぜ!!」
もう生焼けじゃ済まないな。
ゴウゴウと燃えながら、黒炎は死ぬまで笑い続けた。
ふぅ。
これで手掛かりなし。
プロがそうそう口を割るとも思えなかったけど、これで足取りが途絶えた。
森での狼型モンスター。
それにプロの殺し屋。
心当たりはただ一つ。
クラウス。
アイツの恨みなど、言ってみれば只の子供の駄々っ子の延長。
メンツを潰されたからってここまでやるか?
「まったく、こっちは只の学生だよ?」
「・・・アルフ」
おっと、こっちがまだだったね。
振り返るとおどおどとしているメリアとリゼがいた。
さてと、困った。
「えーと、ほら、僕って天然だから」
二人はじっと僕を見ている。
僕の言葉をまるで信じていない。
天然が、通用しない、だと!?
無敵ではないのか天然は。
「はぁ、ま、いいや。元々言うつもりでいたんだし」
とりあえず、にへらと笑って見せる。
「アルフ、レート様、なんですか?」
メリアがフルフルと唇を震わせながら僕に問う。
さて、どう言おうか?
うーん。
うーーん。
んーーーー。
「はい、僕がアルフレートの生まれ変わりなのでした。お終い!」
僕はパンと手を叩いた。
「早!」
「軽!」
「じゃあ夕飯食べに戻ろうよ。もう冷めちゃってると思うけど」
「「ちょおっと待ったぁーーーー!!」」
「待ちません。説明責任は果たしました」
「してないでしょうがーー!!」
メリアは歩いて行こうとする僕の前に回り込み、僕の手を掴んだ。
「本当にアルフレート様、なんですよね?」
「そんなことってあるの・・・?」
「んー、本当に追加情報ってあまりないんだよ?」
僕はざっくりと説明した。
輪廻転生に魔術で干渉し、記憶を保持したまま生まれ変わった事。
しかし、赤ん坊の時の事件で記憶を失い、記憶が戻ったのは最近で、今の人格が主人格であり、別にお爺ちゃんが演技をしているわけではないということ。
この秘密を知っているのは今のところはメリアとリゼ、母さんだけだということ。
本当に追加情報少ないね。
「とまあ、こんな感じでいるわけで、秘密にしておいてね。下手すると一緒に監獄だよ」
「まあ、それは勿論だよ。私もこの歳で固いパンばかり食べたくない」
リゼはそう言ってコクコクと頷いた。
「で、でも、アルフレート様が生まれ変わったなら、魔術界はもっと活性化して」
「あー、それ止めてよ。“様”なんて呼ばれたくないしさ」
「え、でも・・・」
メリアが何かを言おうとすると、リゼがメリアの肩を掴む。
「メリア。今さらそんな他人行儀にされたら、彼も悲しいんじゃないかな?」
「・・・え、悲しい?」
メリアは恐る恐る僕を見た。
僕はきっと、情けない顔で笑ってるんだろう。
母さんの時もそうだったように、これまでの関係が壊れるのが怖くて。
「・・・あ・・・」
メリアはきっとそれに気づいてくれた。
まあでもやっぱり急には難しいだろう。
まあいいさ。
これから徐々に慣れていってくれればそれで充分。
って、思ったんだけど。
「そりゃーーーーーー!!」
「あべしっ!?」
いきなりミドルブローを貰いました。
え、なにゆえ!?
「これまでずっと秘密にしていた罰よ。これからは隠し事はなし。と、友達でしょ?」
「・・・あ」
メリアはちらちらと僕の反応を窺うように視線を送っている。
リゼは肩をすくめて笑っている。
「は、はは」
「な、何よ!?」
「解った。これからは秘密はなしだ。君達もなんでも言ってね!」
「さて、それはどうだろうね。乙女には秘密がつきものだよ?」
「あ、そうよねリゼ。アルフのエッチ」
「な、なんだとぉ!」
大丈夫だ。
上手くやっていける。
そうじゃないと困るね。
僕達の学生生活はまだ始まったばかりなんだから。
空気も和んだところで軽口を叩いてみよう。
「エ、エッチって、あの時胸に僕の顔を押し付けたのはメリアだろ!」
「・・・え?」
メリアが固まり、リゼが天を仰ぐ。
「あ、あああああああ、あれはぁ!!」
やばい! 調子に乗りすぎた!
笑いを取りにいく作戦は失敗だ!
ど、ど、どうする?
ここを切り抜ける最上の策は!?
ピーン。
閃いた。
こ、れ、だぁ!!
「とっても柔らかかったです。あざましたー!!」
感謝!
これこそ人を繋げる尊い行いだ!
おお、メリアが感激の余り、震えながら顔を赤くして、
あれ?
「馬鹿ーーーーーーーー!!」
「不正解かぁーーーーー!!」
ばちぃん!!!!
*********
ピシっと、音を立てて一つの宝石が砕けた。
クラウスの兄、リヒャルトは目を見開く。
「失敗しただと・・・?」
黒炎にはあくまでも念の為、任務に失敗し、死亡した場合。すぐに判るように、生命活動が停止したら壊れる魔石を渡し、魔力のパスを繋いでおいた。
そして今、そのパスで繋いだ宝石が砕けたのだ。
「・・・まさか、只の学生に、名うての殺し屋が敗れたというのか?」
ギリっと、リヒャルトは臍を噛む。
「一体何者だ? アルフ・アルベルト」
*********
屋敷に帰ると、既に料理は綺麗に並べられており、母さんは僕達を喜んで迎えてくれた。
「お帰りなさい。遅いから心配したわ」
「僕の一世一代の告白を見物する無粋なデバガメがいてね」
「ええ、なんてやつなの! そんな奴にはパンチよ、パンチ!」
「うん。ぶっとばしてやったよ」
「それでこそわたしの息子よ」
母さんは腕を組んでうんうんと頷いた。
「・・・デバガメ?」
「・・・ぶっとばす?」
二人は顔を引きつられた。
「なるほど、そのほっぺのアザはその時に出来た男の勲章ね」
「は、ははは」
沈黙。
これしかない。
リゼは笑いを押し殺し、メリアは顔を真っ赤にしている。
母さんはそれを見て、不安そうな顔を作る。
「それで、うまく伝えられた?」
母さんが尋ねると、メリアとリゼは僕の肩に手を置いた。
「何があっても」
「彼が何者であろうと」
「「私達は友達ですから」」
母さんは嬉しかったのか、涙を溜めて頷いた。
「ありがとうね」
涙を拭うと母さんは僕らに笑いかける。
「さあ、夕食にしましょう。今日のスープはわたしが作ったから!」
「よっしゃあ! 母さんのスープは絶品なんだよ」
「それは楽しみね」
「ご相伴に預かります」
僕らは食堂へと向かう。
未来の魔術を極めたくて、僕は転生したけれど、それ以上に大切なものをこの時代で得ることが出来た。
願わくば、この幸せが続きますように。
こんにちは。
作者のさく・らうめです。
今回でアルフの物語は一旦はお終いです。
ですが、まだ幾つかの伏線を残していますので、しばらくしたらまた書き出すかと思います。
また書いてほしい。
面白かったと思っていただける方は下の星評価をつけてくれるとありがたいです。
感想もお待ちしております。
また、「最強教師は最低のクズ野郎〜」というメインで書いている話もあるので、気になる方は読んでいただけると嬉しいです。




