表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

48/81

極炎の魔術師

 まともにくらい、アルフは炎の中へと消えていった。


「ああ、アルフ」


「私達を、庇って・・・うう」


 起き上がろうとした二人は再び倒れ伏した。


 絶望的なショックで立ち上がることが出来ないのだ。


「中々の騎士道精神だ。身を挺してお姫様二人を守ったか」


 暗殺者の声が酷く遠くに聞こえる。


 二人はそれほどに打ちのめされていた。


「だが、無駄だったな。そして安心しろ。このお嬢ちゃん達は、すぐにお前と同じ所へと送ってやる」


 ゴウ、と、再び黒炎の手から現れた巨大な炎。


 それが二人にぶつけるべく渦を巻いていた。


 二人はそれを他人事のように見つめる。


 “ああ、あれで死ぬんだ”


 二人はそう感じ、それを受け入れてしまった。


 アルフが自分達を護って死んで、自分達がのうのうと生きられる筈がないと。


 だがだ。


「そんな顔をするなよ。僕のお姫様達」


「「・・・え?」」


「っ!?」


 二人は呆け、暗殺者は絶句する。


「今のはクサかったなぁ。我ながら外しちゃったね」


 その炎の中から現れたのは、まったく火傷も服すら燃えていない少年、アルフだった。


「はは、そもそもね。僕に炎で勝負してくるなら、こいつじゃ力不足だ」


 そう言って、楽しそうに笑うアルフの傍に、それはいた。


「ピィイイイイイイイイイイイ!!」


 とても高い鳴き声と共に。


「なん、だ、あれは?」


 黒炎は目を見開いてそれを見る。


 “炎が舞う”


 そう表現されることがある。


 だが、それは文字通り舞っていた。


「・・・不死、鳥? ・・・」


 メリアが信じられないといった顔でぽつりと呟く。


 伝説は唄う。


 それは天上では眩い程に光り輝き、地獄では灰の中より煉獄の業火と共に蘇る。


 現存が確認されているドラゴンよりも遥かに希少。


 伝承の中でしか存在しないと言われた不死鳥は、ただ一度だけ、五百年前、東西魔術大戦時に確認されている。


 極炎の魔術師。

 アルフレートの隣にいたと。


 不死鳥はアルフの傍を一周すると、ふわっとアルフの肩に止まる。


 燃えているにも拘らず、アルフの肩に火は移っていない。


『お帰りなさいませ主様。この時を心よりお待ちしておりました』


「喋った、だと・・・」


 ぐらりと、黒炎の身体が揺れた。


「久しぶりフェニー。長く待たせたね」


『私は不死鳥。貴方が私を呼ぶまで何時までも待ちましょう』


 メリアは自分の中の魔術観がガラガラと壊れていく気持ちになった。


「不死鳥を召喚? いえ、あれは違う。魔術の中に仮想人格を、命を、植え付けた?」


 そんな馬鹿な。


 そんな魔術があり得るのか?


 不死鳥は明確な意思を持ち、記憶を宿している。


 そしてこの魔術は召喚ではない。

 にも拘らず、一度創り上げてしまえば、解除してもその人格を留めた状態で再度現れる。


 永遠に消えない、魔術。


「な、なんだそれはぁーーーーーーー!!」


 絶叫と共に黒炎が炎を投げつけた。


 不死鳥は、ふいっとそちらを見つめ優雅に飛ぶ。


 不死鳥と炎が衝突。


 しかし、爆発も起こらず不死鳥は消えることもなく、黒炎の炎のみが消えた。


「・・・なっ」


 茫然と黒炎は棒立ちになる。


 現実を受け入れられない。


 何が起こった?


「フェニー、それはいい。先に彼女達を」


『了解しました』


 再び優雅に宙を飛び、メリアとリゼの頭上を周る。


 その度に、火の粉が二人に降り注いだ。


「ひ、ひゃっ」


「も、燃えないのかな?」


 おっかなびっくりといった様子でそれを見つめていたのだが、火の粉が体に付着する度に、


「え、嘘」


「傷が、治っていく?」


 吹き飛ばされた時に受けた傷が、みるみる癒えていく。


「な、なんで?」


 理解が追い付かず、二人は混乱する。


「知らない? 不死鳥は傷を癒すんだ」


 二人にアルフは事も無げに笑うが、メリアとリゼはますます混乱した。


 炎の属性に、癒しの力を与えた?


 一つの魔術に別の魔術を同居させ、それを使い分けるなど聞いたことがない。


「ありうるの? こんな奇跡が」


 知らず、メリアは涙を流していた。


「ふ、ふざけんじゃねーーーーーー!!」


 黒炎が叫ぶ。


 認めない。


 こんな魔術は認められない!!


 本来であれば、こんな驚天動地の魔術はポンと生まれるものではない。


 長い年月をかけて段階的に研究に研究を重ね、少しづつ周りから認知され、要約実る魔術の極致なのだ。


 何百年も先を行く発想。


 それを実現させる技術。


 これでは、これではまるで、


「・・・アルフ、レート」


 メリアがそう言って震えている横で、リゼも混乱していた。


 先程からメリアはアルフとアルフレートを結び付けようとしていた。


 流石にそれはアルフレートフリークであるメリアの過剰反応と思っていたが、今は笑えない。


 間違いなくこの少年の魔術は現代魔術の価値観を破壊している。


「お、俺は“黒炎”だぞ! 炎の魔術に関しては俺の右に出る奴なんていやしねぇんだ!!」


「お前がこの時代、最強の炎使いというならば、見せてみろ。その頂、“極”を」


「き、“極”だと?」


 八属性のうち、火、水、風、土、雷、闇、光。


 雷、闇、光の上位三属性は難易度が高いものの、使い手は数多いる。


 しかし、最後の極。


 魔術を極めた者のみが到達する至高の属性。


 極へと至る者の“魔術”は“魔法”であると言われている。


 魔法の〝法〟とは即ち世界の摂理である。


 魔術を極め、己が意を持って世界に干渉、理を敷く。


 それが極属性。


 魔術師の基本理念であり、目指すべき最終終着点。


 それに至った者は歴史上、わずか数人。


 それこそが、アルフレートが“極炎の魔術師”と言われる所以。


「そ、そんなもん。伝説だ。アルフレートだって本当に使えたのかどうか・・・」


「伝説? この時代では極属性は伝説なのか? それは残念だね」


「有り得ねぇ。極なんて、魔法なんてあるわけが」


「なら見ろ。これが魔術が行き付く一つの可能性だ」


『主様』


 二人が話しているうちに、いつの間にかフェニーと呼ばれる不死鳥は、再びアルフの肩に止まる。


『次は?』


「ああ、焼け」


『了解いたしました。主様(マイロード)


 フェニーは黒炎に向かって飛ぶ。


 黒炎は恐怖で顔を引きつらせた。


「う、うおおおおおおお!!」


 炎を放る。


 それこそ、現代魔術の中では最上級のものまで。


 それが効かない!


 どれもまるで通じない!!


「くそ、くそ、俺が炎だけしか使えないと思うな!!」


 黒炎が両手から生み出したのは渦巻く水だ。


「へえ、水で洗い流そうっていうのか」


 ヒヒヒヒと、黒炎は笑う。


 螺旋の水がフェニーに命中。


 だが、


「消えた、だと?」


 水が吞まれた様に消えた。


 水蒸気すら発生せずに、水はフェニーに吸い込まれるが如く消えていった。


「ば、かな・・・」


 焼かれた。


 炎も。


 水も。


 あの不死鳥に触れたその瞬間に。


『その程度のぬるい魔術で、主様に歯向かおうなど五百年は早い』


 フェニーの尾びれが鞭の如く伸び、黒炎に巻き付いた。


「あ、が、ぎゃあああーーーー!!」


 絶叫と共に、黒炎は炎に焼かれる。


「ああ、生焼けでいいよフェニー」


 フェニーは黒炎を開放した。


 ボロボロになりながらも息をしている。


 ぶすぶすと音をさせながら、ごろんと転がった。


「ありがとうフェニー」


『またいつでもお呼びください』


 フェニーが大きく燃え上がり、灰となって消えていった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] えー。役者不足は役者の数が足りていないという言葉で、能力が足りないのは力不足です。 一応役者不足は力不足として扱うこともありますが、そもそも造語であり広辞苑にも入っていないそうです。 言って…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ