黒炎との死闘
杖から魔力が溢れ、火炎が僕に向かって飛んできた。
おわ、中々の威力。
「シッ!」
僕も火炎を放ち、それを相殺する。
「マジで何なんだてめえはぁ!!」
更に撃って来る。
それも連続で。
くそ、速いな。
現代魔術。
やはり、前世の魔術よりも一段上と見るべきか。
こいつの杖も懐に仕舞えるほど短め。
今は火力が求められるというが、こういった暗殺者はやはり速度が大事らしい。
「アルフ。私も手伝うわ!」
「そりゃありがたいねメリア。じゃあ母さんにちょっと遅くなるって伝えてもらえる? スープが冷めちゃう」
「馬鹿言ってんじゃないわよ!!」
メリアとリゼは杖を置いてきた。
発動は遅く、威力も弱いが、それでも僕を援護するつもりのようだ。
「リゼ!」
「解ってる」
僕が黒炎の魔術を防いでいる隙に、二人が攻撃をしてくれる。
それに対し黒炎は、
「しゃらくせぇ!」
炎を横薙ぎに出して、二人の魔法を丸飲みにした。
「おっらぁあああああああ!」
「何!?」
横薙ぎにした炎は、そのまま僕達に飛んでくる。
僕は杖を横に構え、その炎を防御した。
ボゥ!
「くぅ!」
その衝撃は大したもので、僕は一歩後退する。
二人のレベルの魔術じゃ吞み込まれるか。
杖もないし。
かといって、二人に防御を担当してもらうと、今度は抜かれる。
「・・・アルフ」
それが二人にも解るのだろう。
純粋にこの暗殺者と戦うには自分達では力量が足りないと。
それはなんら恥じることはない。
魔術の学校に通っているとはいえ、入学したての学生が、プロの暗殺者に勝てるわけがないのだから。
「はっはぁ! やっぱり面倒なのはてめえだけだな!」
黒炎はどんどん回転を上げていく。
流石は現在魔術の達人。
ロックの血族と言っても、前に戦ったクラウスは所詮十五の少年。
こいつとは比ぶべくもない。
このままだと押されるな。
ならば!
魔術加速術式、起動!
「な、なんだと!?」
僕の火炎魔術の回転が急に上がったので、黒炎は面食らう。
「クソガキ、何をしやがった!」
「お前の知らない魔術もあるってことさ」
これはロックが残した秘奥らしいからな。
暗殺者といえでも知らないだろう。
これで互角、いや、僅かに僕が速い。
「こ、この野郎」
「雇い主に伝えろ。僕に構わない方がいいってな!」
このまま押し切ろうとしたら、この野郎、笑いやがった。
「まさか、ガキにこれを使うとはな」
黒炎は知らない術式を起動させる。
するとどうだ。
あっちの火炎の速度が馬鹿みたいに跳ね上がった。
「な、なんだこれ!」
「は! さっきまでの勢いはどうした小僧!」
吞まれる!?
僕は相打ちを諦め、結界を張ってガードに徹した。
受けるたびに手が痺れ、徐々に後退する。
「アルフ!」
リゼが何かやろうとするが、僕は目で止めろと指示する。
「っつ!」
何をするつもりだったか知らないが、自分では通じないと理解したんだろう。唇を悔し気に嚙み、手を引っ込めた。
「悪いね、杖があればまた違ったんだろうけど」
「今の君に気を使われると結構傷つくよ・・・」
やば、またも紳士の対応じゃなかったのか。
「というかさ、あの魔術なんなの? 滅茶苦茶速いんだけど!」
これにメリアが意外にもすんなり答えてくれた。
「“連弾”・・・」
「どんな魔術?」
「一度の魔術起動で、同時にいくつも撃ち出す魔術よ! こんなところに使い手がいるなんて」
なるほど、連続魔とでも言おうか。
一発放つだけで、二個、三個と飛び出るわけだ。
え、何それ凄くない?
でも、下地があったロックの魔術と、全く知らないこの魔術では勝手が違うな。
この場で戦いながら解析、習得は難しいだろう。
「メリアが知ってるってことはさ、公式に知れ渡ってるってことだよね?」
「そうだけど、最上級に難易度の高い魔術よ?」
「だろうね。でも、調べればすぐに分かるってことだろ」
この戦いが終わったら、早速習得したい。
「それよりも、そんなに悠長に話している場合じゃないでしょ!!」
尤もだ。
このままじゃ結界の障壁が持たない。
「お喋りもいいが、そろそろお終いだなあ!!」
ボン、ボン、ボン!!
三連弾!
「二人共、あの三つ、絶対に抑えろ!」
「「ええ!」」
二人はびっくりしただろうが、それでも結界を展開する。
二人の魔力と技量は、実習で何度も見ている。
杖がないのは痛いが、一度だけ。
一度だけでいいから抑えてくれよ!




