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鈍感男の目覚め

 カレンはぎくりと体を揺らした。


「な、何者って?」


「土壇場での冷静でいて、大胆な行動。その胆力。まるで何度も死地をくぐり抜けてきた歴戦の戦士の様。誰も解けなかった魔術式を解いたり、飛んでもない魔力量を持っていたり、こんな前代未聞の魔術を実戦で使ったり、とても普通の十五歳とは思えません」


「あー、それはね」


「かと思えば常識ないし」


「あーっと、なんて言えばいいのかしら、この子の中の常識と、現実の常識にズレがあってそれを正そうと目下努力中といいますか・・・」


「・・・よく解らないんですが」


「う~ん。わたしも説明が苦手で。なんて言ったらいいのかなぁ~」


「こんな時代の先を行く頭脳を持ってるなんて、これじゃまるでアルフレート様・・・みたい、な・・・」


 言葉に出していく内に、徐々にメリアの声が小さくなり、遂に止まってしまう。


「アルフ。アルフ、レート・・・」


 カレンが口に手を当てた!


「あ、あー! そうね。よく考えてみたら、わたし実家に児童向けのアルフレートの偉人伝持っていたわね! 多分それが頭に残っててアルフって名前にしたんじゃないのかしら! あ、メリアももしかしたら読んだんじゃない? わぉ。実はあの本が全ての始まりだったのね。あはは~」


 メリアは唇に指を這わせ、ずっと何かを考えこんでおり、カレンの話は聞いていない様だ。


(あーん、アルフ。もう無理よぉ~)


 カレンは頭を抱えた。


*********


「うーん」


 僕は知らない天井と匂いのする部屋で目を覚ます。


「「「アルフ!!」」」


「っい! な、なんだ」


 ベッドの横にはメリア、リゼ、何故か母さんがいた。


「体調はどうなの?」


「か、母さん。どうして?」


「倒れたって聞いたから」


「あ、ああ。ごめん心配かけたね」


「ほんとよ全く」


「アルフ」


 リザが心配そうな視線で僕を見る。


「ありがとう。君は私達の命の恩人だ」


「あっ! リゼ、足の怪我はどうした!?」


「・・・君に心配されるとはね。ふふ、私は大丈夫。回復魔術とポーションですっかり傷は塞がったよ。痕にも残らないって」


「そっか。それはよかった」


 ほっとして僕はにへらっと笑う。


 リゼは虚を突かれたように、目を丸くして視線をちょっと外した。


「ま、まあ、無事でよかったよ」


「ん? ああおかげさまで」


 そのままリゼは一歩下がった。


 なんだ? 急によそよそしくなった気が。


「・・・逃してるなー。チャンスを」


「ん? 母さんなんか言った?」


「まあ、まだ時間はあるわよ」


 何を言っているのかしらん?


「メリアも無事でよかったよ」


「ふぇ!?」


「メリア?」


「う、ううん。なんでもない。無事でよかったわ」


 なんかこっちもこっちもよそよそしい。


 一体何故?


 はっ!


 解った。


 解ってしまったよ。


 僕、思い切りメリアの胸に顔を埋めちゃったよ。


 やべえ!

 すげえ!


 前世を含めて初めての体験だよ。


 お、おお。


 柔らかかったぁ~。


 それでメリアはよそよそしいのか。


 まあ、胸に男の顔を押し付けたんだからな。

 それは気まずい。


 あれだ。


 ここはしばらく声を掛けないのが紳士としての嗜みさ。


 母さんが心配そうに声をかける。


「アルフ。立てる?」


「ん? ああ」


 僕はベッドから降りて、体の調子を確かめる。


 流石に無理をしたからな。


 あれをやるにはもう少し術を組み替えないと。


 そう、独立した術を組み合わせるのではなく、あれ自体を一つの術として組み込むとか。


 ・・・おっといかん。


 また魔術のことを考えてしまった。


「大丈夫そう?」


「問題ないね。これなら帰れそうだよ」


「よかった。じゃあ行きましょう」


 こうして僕達は岐路に着いた。


 女性達が三者三様に、何か考えている風だったが、それはなんなんだろうか?

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