ついにあの質問が出てしまった
その後。
戻って来ないアルフ達を捜索していた教師達の前に、意識を完全に失ったアルフを、二人が肩に担いで引きずっているところを発見された。
リゼについては回復魔法で歩ける程度に回復していたが、アルフの意識は戻らなかったのだ。
その状態を見て、教師達は驚いたものだが、それがモンスターに襲われたと知ると、それはそれは驚愕した。
他の一年達も混乱している中、早々に行事は中断され、三人は学校の医務室に運ばれた。
ここは危険が付きまとう魔術学校だ。
医務室にはしっかりとした魔術法医学を学んだ医師がおり、リゼの怪我はすぐに本格治療され、全快した。
だが、アルフの症状は時間経過による回復を待つしかないとして、そのまま寝かせられたのだ。
命に別状はないと言われ、二人は心底安堵したが、自分達の不甲斐なさに憤った。
「本当にごめんなさい。完全に学校側の落ち度です。貴方達が無事で本当によかったわ」
ミネルヴァ先生は涙を浮かべてそう言った。
やはり、あの狼型モンスターに関しては、学校側は何も知らなかった。
あの森には何度も調査を行っており、あんなモンスターがいないことは確実とされていただけに、その事実は衝撃だった。
今度、熟練の冒険者達によって大規模な討伐隊が組まれることが早期決定されたということだが、それは二人にはどうでもいいことであった。
そして、すっかり夜の帳が下りた頃。
知らせを聞いたカレンが血相を変えてやって来た。
「メリア! ああ、無事で本当によかったわ」
「お姉様」
カレンはグシグシと涙を拭い、リゼを見た。
「あなたがリゼさんね。話は二人によく聞いているわ」
「初めましてアルフのお母様。その、彼には命を助けられて、私は何も出来ず、本当に、申し訳ありませんでした」
リゼは誠実に頭を下げた。
「いいのよ。実は私もね、以前、狼モンスターに襲われたことがあるの」
「「ええ!!」」
二人は仰天した。
「びっくりよね。その時もアルフが助けてくれたのよ」
「そ、そうなんですか」
「はあ、本当にこの子は・・・」
カレンは寝ているアルフを見つめ、髪を優しく撫でる。
「お医者様は命に別状はないと言っていました」
カレンは安心した顔をする。
「ち、ちょっとね。あはは、力抜けちゃった」
そう言ってカレンは近くにあった椅子へとへたり込む。
「その気持ち、よく解ります・・・」
メリアとリゼはそう言うと、疲れた弱弱しい顔で笑った。
「それで、よく解らないんだけど、アルフはどうしてこんなになっちゃったの?」
「それはですね」
メリアは自分の頭で一度整理してから、唇を舐めると語りだした。
「簡単に言うと、魔術を一度に使った為に、身体に負荷がかかり過ぎたんです」
「全力疾走をずっと続けたみたいな?」
「そのようなものです」
メリアはコクリと頷く。
「冷静にあの時のことを思い起こしてみたんですが、アルフは魔術起動を速める術と、並列してものを考える術。それを使って上位の雷魔術を十もまとめて同時発射しました」
「そ、それって凄いの?」
いまいち魔術に疎いカレンには理解できない。
メリアはどう言っていいのか判らない表情を作り。
「・・・私の知る限り、魔術界でこれを行った人物は一人もいません」
「あ、はっは~」
カレンは天井を見上げると、片手で目元を覆った。
「何故、この方法を他の魔術師が取らないのか解りますか?」
「難しいからでしょう?」
コクリと頷く。
「勿論それもあります。もう一つは身体が持たないんです」
「持たない・・・」
「そうですね。例えると貯水池に溜まっている水を魔力だとしますね。放水口から水を出します。これにより魔術が発動します」
「ふんふん」
「仮にここで放水量の勢いを限界以上に上げてとします。すると、出口はどうなるでしょう?」
「こわ、れる?」
「そうです。それがアルフの今の状態です。アルフの魔力は膨大で、尽きることはないでしょう。でも、出口はそう大きくはない。それなのに、魔術を連続、いえ、違いますね。同時に撃ち出したんです。身体が持つわけがありません」
「ア、アルフは大丈夫なのよね!?」
「大丈夫です。それについては私達も心底嬉しくて安心なんですけど、そこが問題でもあります。他の人間がもし同じことをしたら、おそらくは廃人です」
「・・・廃人」
カレンは真っ青になった。
「お姉様。彼は、アルフは何者なんですか?」




