本領発揮
これがモンスターか。
本当の狼よりも更に頭が回る。
もっと広範囲の大規模術式を使うか?
いや、それだと二人も巻き込んでしまう。
「くそ、なら無視だ!!」
僕はぐるりと弧を描き、僕と狼の位置を入れ替えると、構わずメリア達の所へと走る。
「ガゥ!!」
させぬとばかりに、今度は本当に飛び掛かってきた。
「はっ! そこが限界だワンコロ」
宙に跳んでしまえば動けない。
目と鼻の先。
超至近距離で僕は火炎をお見舞いした。
ゴウっ。
音を立てて狼は燃え上がる。
よし、これで・・・。
「きゃあああああ!!」
振り返ると、リゼが一匹に魔術を命中させている隙に、その横からリゼへと飛び掛かるもう一匹がいた。
メリアが悲鳴を上げて、杖を振るが、間に合わない!
リゼは押し倒され、肩をガシっと押さえられ、身動きが取れない。
「ぐぅ!」
「こ、このお!!」
至近距離にいるので反射的にメリアは杖で狼を殴る。
しかし、それでは狼はビクともしない。
この辺が経験の差だ。
あの位置からでも魔術の方が遥かにダメージを与えられるのだが、冷静ではいられないのだろう。
すると、今度はリゼに向き直ったメリアの後ろから狼が飛び掛かる。
「-----っ」
メイアは恐怖で顔が歪む。
他の狼もここぞとばかりに襲い掛かろうとしている。
「くそ!!」
起動速度加速術式起動。
並列思考術式起動。
「食らえ!!!!」
雷属性、稲妻の槍。
十門同時発射!!
展開される十の魔法陣。
完全に狼を捕捉したそれが、狼の腹を正確に捕らえ、一撃で射抜いた。
ガガガガガガガガガガ!!!!
一瞬で狼達は倒れ伏し、焼け焦げた。
「ふ~」
へなへなとメリアは座り込み、リゼは顔を歪めて起き上がろうとしている。
だがっ!
「安心するな。まだいるぞ!!」
「「え!?」」
僕の視線の先を見ると、もう一匹いた。
ひと際大きい。
こいつ、ボスか。
物陰からこっちの様子を窺っていたのか。
なんて、狡猾な!
二人は完全に腰が抜けてしまったのかまるで身体が動かない。
僕は駆けながら雷を放つが、なんとこいつ、それを躱す。
馬鹿な。
最速の雷属性だぞ!?
さっきのを後ろから見ていて学習したか。
打ち出す前に杖の角度を見て、咄嗟に避けているのか!?
こんなお利口な生き物、前世にはいなかったぞ。
ボスは今にも二人に襲い掛かりそうだ。
僕は咄嗟に前に出た。
何故か、どこか、このボスはしてやったりといった風な顔を作った気がした。
まさか、こいつ僕と直接やり合うよりも、二人をターゲットにした方が、僕を捉えやすいと考えたのか?
動かされたのか、僕が!?
飛び掛かって来るボス狼。
後ろから二人の悲鳴が聞こえる。
そして、
そして、その狼は僕の目の前で虚空へと消えた。
「「え!?」」
「はっ。ざまあみろ」
冷や汗をかいた僕はそれを拭うと、二人に歩み寄り、ニコリと笑う。
「ごめん。遅くなった」
「アルフ。ありがとう。助かった、うっ!」
「リゼ! 足が、あああ、さっき肩を押さえつけられた所からも血が」
メリアが泣きそうに回復魔術をかける。
「大丈夫だよメリア。回復魔術を使えば、これくらい、痛っ!」
「は、は。無理しないほうが、いい、がっ!!」
ズキンと頭痛がして僕はその場に倒れ込んだ。
「ぐうううううう!!」
「「アルフ!!」」
メリアと、怪我を忘れたように、リゼが僕の方に飛んでくる。
「ぐぅうう。だ、大丈夫だ。術を同時に使い過ぎた。流石に、脳が・・・」
脳に負荷をかけ過ぎた。
並列思考魔術で十に思考を分割するだけでも頭痛がするのに、さらに高等の雷属性魔術を十同時に使うのは流石に無茶だった。
落ち着け。
呼吸を整えろ!
「はっはっはっはっは!」
小さい呼吸を続け、なんとか気を保とうとする。
すると、メリアが座り込み、四つん這いになっている僕の頭を自分の胸に押し当てた。
「メ、リア?」
「大丈夫。大丈夫よアルフ。私の体温を感じて。心音を聞いて。落ち着いて」
はは。
心音て、滅茶苦茶早いぞメリア。
君が落ち着け。
顔は見えない。
だけど、彼女がどれだけ必死なのかは伝わって来る。
ああ。
「あったかいなぁ」
頭痛が徐々に引いていく。
そしてそのまま僕は眠りについた。




