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さあ、狩りの始まりだ!

「サイアク」


「私が引くべきだったね」


 しくしく。


 酷いよ。

 僕だって頑張ったよ。


 そうだ。

 今度見えない位置の物を見れる魔術を開発するか!


「さて、時間が出来ちゃったわねー。誰かさんのせいでー」


「しつこいぞ。だったらメリアが引けばよかっただろう! 後から言うのはずるいんじゃないか!!」


「冗談よ、冗談」


「こればかりは運さ。気にしないで」


「ふん!」


 まあ、二人も本気で怒っているわけではないのは解っている。

 僕だってそうだ。


「それじゃあその辺で駄弁ってれば」


「・・・」


 メリアが僕の話を聞いていないようなので、彼女が見ている方向に目を向ければ、そこには曰くつきのアイツが。


「メリア」


「あ、うん。ごめんね」


 クラウスを見ていたメリアはすぐに視線を外す。


「あまり見ない方がいい。気があると思われるぞ?」


「うん。そうだよね」


 メリアが首を振ると、リゼがヒソヒソと声をかける。


「あれ以来、絡んでこなくなったね」


「そうだね。それどころか意図的に視線を外している感じだ」


 アンザ先生の説教が余程効いたか。


 或いは、実家の方で何か言われたか。


「まあいいさ。こっちとしては願ったりだ。だから、こっちから関わる口実を与えない方がいい」


「ごめん。なんか気になって」


 む、なんだろう。


 やはり昔からの付き合いだから、なんだかんだで情があるのか?


 なんかこう、もやっとする。


「クラウスは凄く粘着質だから、こうもスッパリと諦めるとなると、何か逆に嫌な予感がする」


 あ、そっち?


「何か仕掛けてくるってことかな?」


 リゼは眉をひそめた。


「・・・怖いのは、アイツ自身じゃなくて、ゴータ家が動かないかってこと」


 ・・・家?


「ゴータ侯爵家は五百年続く名家。それが汚されたとあっては、何かしてこないとも限らない」


「メンツってやつか・・・」


 嫌だねぇ。


 だから貴族になんてなりたくなかったんだ。

 今も昔も。


 だけど、今は貴族くずれになったおかげで学校に通えたわけで、何とも因果なことだ。


 それで話を戻すと。


「それで? そのなんちゃってアルフレートの子孫はどんな手を打ってくると思う?」


「・・・なんちゃってって」


 ロックの子孫ではあるけれど、そんな権威に溺れた奴にロックと僕の名を名乗ってほしくはないな。


「具体的に、何を仕掛けてくると思う?」


「そこまでは」


 メリアは首を振る。


 さてどうするか?


 アイツの実家が動くのかどうかも判らない。


 動いたとして何をしてくるかも判らない。


 さて、つまるところは。


「今を生きよう」


「「え?」」


「見えない不安に怯えていても仕方がない。だったら今を、この狩りに集中しよう」


「そっちの方がストレスにならないわね」


「そうだね。でも、リゼ」


「ん? なんだい?」


 首を傾げる彼女に、僕は幾分真面目な顔で口を開く。


「それでも、打てる手は打っておこう。僕達と一緒にいるのは危ないかもしれない。極力一緒にいるのは」


「避けるべきだって?」


 コクリと頷く。


「はは、ごめんだね」


「リゼ・・・」


「嫌われたならともかく、大切な友達が私の心配をして距離を取ろうとしているのなら、私が離れる理由にはならない」


「・・・君は何というか、実はマイペースか?」


「頑固なね」


 フフっと彼女は笑う。


「私もリゼとそんな理由で距離を取りたくないわ」


 メリアもそう言って笑って見せた。


 こうなっては仕方ないか。


 僕は頷く。


「解った。なら君達は僕が護る」


 二人は「おっ」と口を開けた。


「なーに、騎士様のつもり?」


「いいね。これでもお姫様には憧れているんだ」


「リゼはそんなタイプだとは思わなかったよ」


「・・・失礼だな。これでも十五の乙女のつもりだよ?」


 そう言って、彼女は少し口を尖らせた。


 ここは乗っかっておこう。


「これは失礼をいたしました姫様」


 僕は出来る限り優雅に一礼をしてみせた。


「うっわ、似合わなー」


 五月蠅いぞメリア。


 そんな風に他愛もない会話を暫くしていると、僕達の番がやって来た。


「はい。ではアルフ君達の班が最後ですねー」


「「「はい」」」


「制限時間は三時間。例え獲物が獲れなくとも何らペナルティーはありません。正し、制限時間内に戻らないと教師が探しに行きますので、手間を掛けさせた罰としてお説教です」


「了解です先生」


 先生に怒られる。


 ミネルヴァ先生とアンザ先生に?


 え、恐怖しかないのですが?


 絶対に戻ろう。


 二人も僕と同じ感想を抱いたのか、顔を青くしてコクコクと頷いた。


「それでは、よーいどん!」


 僕達の狩りが始まった。

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