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仮説を信じて突き進んだ結果

 先生は頷くと、周りを見渡して再び頷く。


「今日は全員出席のようですね」


 内心では、クラウスが出席しているのか不安だったのだろう。


 心なしか、クラウスの顔が見えた瞬間にほっとしているように見えた。


「貴方方の机には、既に全ての科目の教科書が入っています」


 生徒全員の机の引き出しは厚い本が一冊入るか入らないかくらいの幅しかないのだが。


 そこの手を入れると、ずぶっと奥の方に手が沈む感覚があり、僕はぎょっとして手を引っ込めた。


「な、なんだこれ!?」


 僕が目を見開くと、隣に座るメリアが首を傾げる。


「何って、収納魔法よ」


「収納、魔法?」


「あれ、知らない? こうやって、狭い空間を別位相の次元と繋げて、沢山物を入れられるの」


「な、なんだって?」


「勿論無限じゃないわよ? でも、教科書を収納位は出来るわね」


 なんだそれなんだそれ!?


 すげー!!


 今はそんな魔術があるのか!?


「チッチッチ。まだまだ甘いわねアルフ。これはアルフレート様が唱えた『この世界には同じ位置にありながら、別位相の世界があるのではないか?』という当時では笑い話となった説からヒントを得て開発されたものよ?」


「あー、確かに言ったわ」


「言った?」


 あ、やべ。


「いや、そうそう。そうだったね。そんなことを書いていた本もあったね。うん、忘れていたよ」


「ああ、アルフレート様は本当に凄いわ。この説が証明されたのはつい十年ほど前なのよ。そして今、こうして生活に役立つ魔術として使われている。彼の発想がなければ、この魔術は生まれなかっただろうと言われているの」


「そ、そうですか」


 この子、僕持ち上げ過ぎじゃない?


 というか、目がヤバい。


 そんな崇めるように瞳を潤ませないでほしい。


 でも、そうか。


 当時は笑い話にしか過ぎなかった僕の説を信じて、それを証明してくれた人がいたのか。


「へへ」


「アルフ?」


「あ、いや、流石はアルフレートだなぁって思ってさ」


「そうよね!」


 この子、取り合えずアルフレート出しておけば会話が成立するんじゃないか?


「はーい、そこー。五月蠅いでーす」


「「すいません」」


 怒られてしまった。


 幾分声を押さえてメリアに尋ねる。


「で、これはどういう風に欲しいものを取り出すんだ?」


「簡単に思い浮かべればいいのよ。えっと、一限目は歴史だからっと」


 メリアは引き出しに手を突っ込むと、そこから歴史の教科書が出て来た。


「おお」


「やってみて」


「うん」


 恐る恐る、僕は引き出しに手を突っ込む。


 えー、歴史の教科書、歴史の教科書っと。


 念じながら机から手を引っ込めるとあら不思議。

 そこには歴史の教科書が。


「おお、すげー」


 これは引っ越しとかピクニックとかで大活躍じゃないか。


 なんだ、僕らが引っ越す時もこの魔術を使えば簡単だったんじゃないか。


 ん? つまりはまだ普及まではいっていないのかな?


 ここが魔術学校だから使えてるのかな?


 まあいいや。


 さて、歴史か。


 僕が死んでからの五百年が非常に興味があるぞ。


 僕はペラペラとページを捲り、


 そして、固まった。


 ナンデスカコノモジハ?


 読めない。

 知らない文字だ。


「アルフ? どうしたの?」


「メ、メリア。これってこの国の文字じゃないよな?」


「ああ、イグッシュ語ね」


「イ、イグ?」


 なんだそれは?


「世界で最も話されている言語よ。だから、歴史にはこの言語が使われるの」


「そうなの?」


「イグッシュ語の授業もあるけどね。もしかして、話せない?」


「全く」


 先生が半眼でこちらを見ている。


「はーいそこー。さっきからうざいでーす」


 うざいって、軽い先生だな。


「すいません、先生。僕イグッシュ語が上手く話せないのですが」


「ああ、そういうことですね。大丈夫ですよ、毎年何人かはいるので」


「ふはーーーーーっはっはっはっは!!」


 先生の説明に割って入って大声を出す馬鹿がいる。


 無論、クラウスであった。

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