弟子を超えろ
とにかく速攻!
先手は譲らない。
魔力を溜めて、即座に放つ!
「って、え!?」
クラウスは既に魔術を放っていた。
火炎の球が僕に迫る。
「早っ!」
僕も遅まきながら火炎の球を出し、クラウスの火炎に向けて放つ。
ボンという音と共に、二つの火炎は対消滅した。
「・・・ほう。やるな」
クラウスは感心、というか驚いた感じで声を上げた。
まあ、驚いたのはこっちも同じ。
この杖、殺傷能力は落とすんじゃなかったのか?
僕は自分の火力には自信があるし、この杖でもなんとかアイツと渡り合えるけど若干劣る。あの魔術、まともに食らったら、即退場だぞ?
思わず校長先生に視線を送ったら、あちらも驚いている。
つまりはあの威力は想定外ってことだ。
それに早い。
早打ちにはそれなりに自信があったんだけど、まさかそれを上回って来るとはね。
なるほど、これが現代魔術か。
威力も速度も前世の平均を上回っている。
僕は舌なめずりした。
「そうだよ。こうでなくっちゃな」
前世と同じレベルを求めてたんじゃない。
未来の、進んだ技術を学ぶ為に、僕は転生したんだ。
「ふん! ただの田舎者だと思っていたら、一応は魔術を使えたか」
「こっちも驚いたよ。血統だけが自慢の口だけ野郎と思っていたからな」
「馬鹿が!」
再び火炎球を飛ばす。
さっきより起動が早いぞ!?
僕は横っ飛びでそれを躱し、そのまま炎を放ってゴロンゴロンと前転した。
躱しながら魔術を使うとは予想外だったのか、クラウスの顔が引きつり、第二弾を放ち、僕の魔術を相殺した。
おおおおおおおお!
闘技場が沸く。
思ったよりも僕が善戦しているからだろう。
なんか後ろからメリアが応援している声が聞こえる。
流石に振り向く余裕はないけど。
「お、おい。あいつは不正入学したんじゃないのか?」
「あの威力。お、俺よりも・・・」
ふむ。
会場の雰囲気はいい感じだね。
「チ、田舎者が。だったらこれはどうだ!!」
クラウスが新たな魔術を構築していく。
・・・待て、その魔術は。
「はぁ!!」
今の魔術を起動した後に、クラウスは攻撃魔術を使う。
さっきと同じ火炎球。
だが、早い。
さっきよりもずっと早い!!
躱せないと判断し、防御結界を展開。
炎を受け止める。
「くぅ!」
その衝撃で僕は大きく後退した。
「驚いた。さっきよりも早いし、その魔術・・・」
「気が付くか。やるな。これは、我が家に伝わる秘奥。魔術の起動速度を底上げするものだ」
知っている。
当然知っている。
それは僕が開発したものだ。
だが、僕が開発したそれよりも、ずっと洗練されていて滑らかだ。
つまりは、
「それがアルフレートの魔術?」
「その通り。どの家にも伝わっていない先祖直伝の技だ」
どうやら、僕の名をただ騙っただけじゃないらしい。
本当に僕の技を継ぐ者が、僕の魔術を超えた魔術を創った。
「・・・そういえば、この学校の創始者の名前を聞いてなかった。よかったら教えてくれるか?」
「そんなことも知らずにここに来たのか? 呆れた奴だが教えてやろう。ロイド・アルフレート・ゴータ。それが創始者。アルフレートの孫の名だ」
「・・・孫、か」
当然知らない。
孫なら僕よりも二世代先ってことだからな。
「孫っていうなら息子は誰だ? その創始者の親の名は?」
「ふ、この学校を去る前に聞いておけ。ロック・アルフレート・ゴータ。アレフレートの息子だ!!」
「ロック!?」
ロック。
ロックだと?
僕の最後の愛弟子。
僕が置いていってしまった可哀そうな弟子。
「・・・そうか。ロックか」
僕は天を仰いだ。
それなら、仕方ないか。
僕は彼に何も相談することなく、輪廻転生の魔術を実行した。
彼は東側の魔術を毛嫌いしていたし、もし僕が輪廻転生の魔術を使うって言ったら絶対に反対しただろう。
それは僕がその場で死ぬことと同義だから。
それを解っていたから僕は無断で実行した。
何と身勝手で愚かなことか。
そのロックが、僕の息子を名乗って、その知識を更に彼の息子に託したか。
「ははは!」
思わず笑いが零れた。
「はははははははははは!!」
「ふ、気が振れたか?」
「いやいや、お前には解るまいよ」
彼が僕を許せなかったのかどうかは解らない。
だけど、彼は基礎しか教えていない僕の魔術をしっかりと引き継ぎ、僕でも到達しえなかった技へと昇華させた。
喜びと悔しさが綯交ぜとなったこの気持ち。
こんな若造には決して解るまい!
「よかろう! 今度はこちらが挑む番だ! その高み、超えさせてもらうぞ!!」
「何を訳の分からないことを!!」
再び起動の早い火炎球を放ってくる。
僕はそれを丁寧に防御し、徐々に徐々に後ろへと下がった。
「ははは! 何を思って笑ったのか知らんが、防戦一方か!」
「黙れ小僧が!」
「な、何を! 同い年で粋がるなよ!」
怒りと共に魔術を使い続ける。
確かに防戦一方だ。
「やっぱりアイツ、不正で入学したんじゃないか?」
「そうだな。大したことない」
「・・・どうだろう?」
「おい、お前あいつを擁護するのか?」
「そんなつもりないけど、出来る? あれを防ぎ続けること?」
「いや、それは・・・」
お、会場で意見が割れてる。
解ってくれるこの苦労?
それからしばらく、僕は防御に徹する。
ジリジリと後退し、クラウスが調子付く。
「終わりだ!!」
止めとばかりに今日最速の火炎球。
「ふっ!」
「はぁ!!」
そして、僕も最速の火炎球だ!!
「な、なんだと!?」
僕とクラウスの丁度中間で互いの魔術が命中。
対消滅した。
それは即ち。
「おおおおおおおお!!」
「な、なんだあいつ。クラウスの魔術起動についてきたぞ」
「あり得ない。だってあれはあのアルフレート考案の魔術だろう?」
「い、いや、正確には彼の息子、ロックが完成させた魔術だって言ってた。それを田舎者の不正野郎が使えるわけが・・・」
そう、僕が考案してロックが完成させた魔術だ。
つまりは、例えるなら、僕が作ったシチューにロックが隠し味を追加し、さらに美味しくした料理だ。
ならば、途中工程までは解っている。
何を加えればロックの魔術まで至るのか、それを掴むのにそれ程時間はかからない。
「ば、かな・・・」




