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決闘

 僕が連れて行かれたのは大きな闘技場? かな。


 多分、決闘や何かの魔術の催しに使われるのだろう。


 広く、観客席もある。


 殆ど全ての生徒が僕とクラウスの決闘を見物しに観客席についていた。


 はは、これで負けたら赤っ恥もいいところだな。


「ア、アルフ。落ち着いてね」


「君が落ち着けメリア。僕は大丈夫だ」


「・・・むしろなんで落ち着いてるの?」


「開き直ってるし。それに考えてごらんよメリア」


「ん?」


「僕は負けたらこの学校を去るだけだけど、アイツは負けてもずっとここに居続けるんだぜ? あっちのほうがよっぽど負けた時の被害が大きいと思わないか?」


 ぽかーんとメリアは口を開けた。


「ぷっ。確かに、あはは、確かにそうね!」


「だろ? ま、観ててよ。やれるだけやるからさ」


「分かった」


「あ、母さんに手紙は出してくれた?」


「うん」


 これで僕が負ければ不正として処理され、アルベルト家に迷惑がかかるかもしれない。


 連絡はしておいた方がいいだろう。


「さて、やりますか!」


 僕がぐるんぐるんと手を回すと、教頭先生が一本の杖を僕に手渡した。


「これは?」


「学生が使う決闘用の杖です。まさか、本当に殺し合うわけにはいきませんからね」


 ふむ。

 校長先生が持っていたのと同じくらいの長さか。


 僕は校長先生よりも身長が低いから、目元辺りまでの高さがあるな。


「・・・ちょっと使いづらいんですが? もう少し短めのありませんか?」


「競技用は全てその長さとなっています」


「そうですか・・・」


 僕は構えたり振ったりして、具合を確かめた。


 まあ、魔力は通るな。


 でも、逆に火力が下がるように作られている。


 面白い。


 競技用だからか。


 こんな杖は前世の時代にはなかったな。


「どう、アルフ? 感覚は?」


「ううん。こんな長い杖使ったことないな。正直無い方がいい」


「ダメですよ。杖を使わずに魔法を使えば即失格です」


 ですよねー。


 戦闘力を下げる為の杖、か。


「杖を使ったことないの?」


「いや、あるけど。もっと短いの。アルフレートの時代ではそれが一般的だったろう?」


 僕の問いかけにメリアは頷く。


「そうね。でも、魔術師が一対一で戦う場面が少しづつ減ってきて。最近では火力を求められるようになったの」


「なるほど、長い方が魔力が蓄えられる分威力は上がるか」


 教頭先生が頷く。


「その通りです。この杖は競技用で威力を殺しますが、実戦を学ぶ為、この長さが公式に認定されています」


「なるほど」


 まあ、やるしかないな。


「アルベルト君。一生徒に肩入れするのは本来あってはならないのですが」


「はい」


「勝ってください。ここで君の入学がなくなると、本校の威信に傷がつくのです」


「はは、分かりやすいですね、教頭先生」


「なんとでも。私はこの学校を守りたいので」


「ですね。それじゃあ行ってきます」


「アルフ頑張って――!!」


 メリアの声援を受け、僕は闘技場の中央まで足を進める。


 会場からは様々な声が聞こえてきた。


「あいつ本当に不正したのかな?」


「したんだろう。あのゴータが言ってるんだぜ?」


「だとしたら最低」


「いいじゃん。これからゴータ君があいつをボコボコにしてくれるんでしょう?」


「だな! 不正して入学しようとした奴が、アルフレートの血を引く者に勝てる筈がない」


「頑張れゴータ―!!」


 すげーヒールじゃん僕。


 その先には、あの憎ったらしいクラウスがニヤニヤしながら待っていた。


「初日で退学になる覚悟はできたかい?」


「やってくれたなこの野郎。おかげで初日から注目の的だ。どうしてくれる?」


「安心していいよ。君は今日でこの学校を去るんだ」


 遥かな高みから、クラウスは絶対強者の態度でそう告げる。


「一つ聞いていいか?」


「何かな?」


「僕らは今日会ったばかりだろう。なんでそこまで目の敵にするんだ?」


 クラウスの目がキッと鋭くなった。


 強い憎しみを感じる。


 何でだ?


「お前のせいでメリアの前で恥をかいた」


「・・・あ?」


「お前なんかが彼女の傍にいるべきじゃないんだ!」


 もしかしてこいつ、単に嫉妬してるのか?


 え、馬鹿じゃね?


「あのな。こんなことしてメリアの気を引けると思ってるのか? むしろ絶望的に嫌われたぞ」


「全てはお前のせいだ!!」


「分かった。百歩、いや、万歩譲って僕のせいだとしよう。でも、だからどうしたんだ? この先メリアと仲良くなれる可能性は限りなくゼロだぞ? いや、元々仲良くはなかったみたいだけど」


「黙れ田舎者! お前が、お前がぁ!」


 話通じないな。


 なるほど、ヨハネスと同じタイプか。


 最近歪んだ愛情をもった奴によく合うなぁ。


 そんな奴の為に、せっかく掴んだ学校に通う切符を手放せって? 御冗談。


 僕は杖を構えた。


「言っておくけど、アルフレートの子孫だかなんだか知らないが、やるからには勝たせてもらう」


「はん!」


 クラウスは鼻で笑う。


「勝てると思っているあたりが可愛い!」


 僕達が戦闘準備に入ったのを確認すると、校長先生が合図を出す。


「では、存分に戦いなさい。始めぇ!!」

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