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アルフレートの子孫を名乗る男

「アルフレート・ゴータ、だって?」


 おい、それって。


「彼はアルフレートの遠い子孫に当たるの」


 やっぱりか。


 こいつが僕の子孫を騙っていた奴の末裔か。


「じゃあ、君はこの学校の校長か何かの息子なのか?」


「あ、いや。学校の校長は世襲制じゃないから・・・」


 急に弱気になったぞ。


 でもそうか。


 じゃあ、この学校の関係者を調べても、その辺の情報は出てこないか。


「しかし、アルベルトの人間で、君の従妹なんていたかな?」


 そこをつっこむと、若干気まずげに、メリアは答える。


「父の妹の息子が彼なの」


「え、ちょっと待ってくれ。それって」


 ああ、家の事情を知ってるのかこいつは。


 こいつはくつくつと笑い出した。


「は、はは! それじゃあ、君はずっと田舎に籠っていたってわけか。今さら何をしに出て来たんだい?」


 おい、初日で田舎者だってバレたぞ。


 やばいな。

 これから先、ずっと田舎者のレッテルを張られながらやっていかないといけないのか?


 まあ、それならそれで構わないんだけど、ずっと馬鹿にされていると、変なトラブルに巻き込まれそうで嫌だなぁ。


「ちょっとクラウス、やめて」


「いや、だって。君だって内心は困ってるんじゃあないのかい? 勘当された叔母の息子の面倒なんてさ」


「・・・叔母様は勘当されたんじゃなくて、自分から家を出て行ったのよ」


「それがなんで今ここに?」


 これには素直に答える。


「魔術学校で学ぶ為さ。その為にお祖父様を無理を言って頼ったわけ」


「ふーん」


 僕が答えるとバカにしきった笑みでクラウスは笑う。


「あと、僕のことならいいけれど、母さんを悪く言うな」


「ぷっ!」


 クラウスと取り巻きの二人はげらげらと笑いだす。


「き、君は。十五にもなってマザコンなのか」


 へぇ。


 いい度胸じゃないかこの野郎。


 初日からトラブルは避けたいけど、こうなりゃ戦争だ。


 僕が眉を吊り上げると、メリアが割って入って来る。


「やめて! 私は面倒だなんて思っていないし、親族を馬鹿にされるのは不快だわ」


 メイアにキッと睨まれて、クラウスは少し怯んだ。


「まあまあ、冗談だよ。そう怒らないで。友達じゃあないか」


「え? 別にあなたと友達になった覚えはないのだけれど」


 今度こそ、クラウスは完全に顔を引きつらせた。


 あー、あれな。


 男はもう親密な関係になってると思っても、女性の方はそう思っていなかったってやつ。


 哀れな。

 かなりイタイ奴だぞこれ。


「くっ! 侯爵家の娘だからって、あまり調子に乗らない方がいいよ。僕はあのアルフレートの子孫なのだからな!」


 そう捨て台詞を吐くと、クラウスはこの場を去り、取り巻きも付いて行く。


 ホッと胸を撫で下ろし、僕はメリアにお礼を言った。


「ありがとう。ちょっとムキになって問題を起こしそうだった」


「でしょうね。まあ解るわ。私も不快だったし」


「でも、あいつがアルフレートの子孫を名乗っているのか。よかったの? 君が好きなアルフレートの子孫だよ?」


「昔は素敵と思ったんだけど、あの性格を知ってからはもう生理的に受けつけないの」


 哀れだな。


「ところで、彼はゴータって名乗ったけど、アルフレートは平民の筈だろう」


「君本当にアルフレートに詳しいの? 彼は死後、その功績が認められて爵位を賜ったのよ?」


 へえ。

 死んだ後か。

 それは分からんわ。


「困ったわ。あいつは嫌な奴だから、君のことをふれ回るかも」


「・・・暇な奴だな」


「ごめんね。私といなければこんな早々にバレなかったのに」


「面白い」


「え!?」


 僕は知らず知らず笑っていた。


「平穏を好むが、向かって来るなら火の粉は払うまでだ」


 それが僕の、いや、アルフレートのやり方だ。


「君、結構喧嘩っ早いのね・・・」


「そう? 侮辱されたまま大人しくはしてないよ」


 そう答えると、メリアは感心とばかりに頷いた。


「そうね。アルフレート様も割と短気だったらしいし」


 この子、ちょいちょいアルフレートを引き合いに出すなぁ。


「私も協力するわ。私はアイツをアルフレートの子孫だって認めてないから」


「へえ? アルフレートの血族じゃないか。どうしてそう思うの?」


 面白いな。


 理由を聞いてみよう。


「私、アルフレート様はもっと、優しい人だと思うもの」


「それは君の願望じゃない?」


 尊敬する人には人格者であってほしい。


 そう思うのは別に悪いことじゃないから。


 しかし、彼女は首を横に振る。


「アルフレート様は最強の魔術師と言われていた。実際に彼の攻撃魔術は凄まじかった。でも、決してそれだけじゃない。人を助ける魔術も沢山開発していたの」


「・・・そう、だったね」


 僕は目を細め、彼女の話に耳を傾ける。


「だから、彼はただ強いだけの魔術師じゃなく、優しく、気高い魔術師だったと、私は思う」


 当時は攻撃魔術等の戦闘技術を讃えられることが多かったけど。


「ありがとう」


 認められた。


 後世で、僕を評価してくれる人がちゃんといた。


 それが嬉しい。


 とてもとても嬉しい。


「ん? 私が褒めたのはアルフレート様よ?」


「いや、きっと彼がいたら、そう言うと思ってさ」


「だったら、嬉しい、かな」


 彼女は嬉しそうに笑った。


「まあでも、武力に目がいくのは仕方ないわ。西と東に分かれた魔術大戦で、臨画善性を倒したり、悪竜バハムートを討伐したり」


 ・・・何?


「今、〝悪竜〟バハムートって言ったか?」


「え、ええ。言ったけど」


 僕は怒りで目を細めた。


 どこのどいつだ。


 バハムートを悪竜なんて汚名をきせて歴史に残したのは。


「アルフ? どうしたの? 私悪いこと言った?」


「あ、いや」


 しまった。


 思わず顔に出た。


「ああ、ごめんね。何でもないんだ」


「でも」


「さっきのクラウスって奴を思い出してさ。ちょっとイラッとしただけ」


「そう・・・」


 完全に納得はしていない感じだったが、これ以上は言ってこなかった。


「そろそろ入学の挨拶があるかな?」


「あ、そうね。行きましょう」


 僕達は式典会場へと向かった。

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