従妹
ほぉ。
同じ十五歳か。
「あれ? じゃあ、君も今年魔術学校に?」
「ええ、そうよ。それもあってこっちに挨拶に来たの」
何故かどや顔で彼女は笑う。
「従妹がいるって話は聞いてたんだけどね。こうしてあったのは初めてだし、これからよろしくね!」
「久しぶりメリア。大きくなったねー」
「お、お久しぶりです叔母様」
母さんは嬉しそうにメリアに抱き着いた。
でも母さん。
彼女嫌そうですよ?
「カレン姉さん」
「え、えっと」
「叔母さんじゃなくて、お姉さん」
「は、はい。お姉様」
は、恥ずかし!
恥ずかしいよ母さん。
そして、悲しいよ。
三十路で半分の歳の子にお姉さんはきついよ。
いや、いるけどね、年の離れた姉妹。
でもきついなー。
「母さんはメリアに会ったことがあるんだ?」
「昔、一度だけ! い、ち、ど、だ、け、王都に帰ってきたことがあって、その時に会ったわ。それと、村の近くに兄様が来た時に一緒にいたからその時にも」
「へぇ」
ずっと支援して貰ってるんだし、帰ったって罰は当たらないよね。
自分が貴族だって知られたくないから、僕には叔父さんやメリアに会わせたくなかったわけだ。
まあ、その時は二十代だったんだろうけど、今お姉さんはきついよ。
僕がドン引きしていると、母さんは僕のところまでやってくる。
「彼女、アルフレートフリークなのよ」
「え!?」
ニヒヒと笑いながら母さんはメリアを指した。
「何々! 君もアルフレートファンなの? 彼のことに詳しいの!?」
「ま、まあ、人並みには?」
僕が僕のファンてなんだよ。
どんだけナルシストだよ。
「アルフレート!」
彼女は両手を広げて何かを言おうとしている。
似ている、母さんに。
これが、血族。
「アルフレート。それは孤高にして偉大な魔術師!」
・・・ええ~。
「当時の魔導技術を百年、いや、二百年は進めたとされ、現代の魔術の基礎を築いた人物!」
おい、馬鹿、何言ってんだこの子。
あ、母さんが笑ってる。
「攻撃魔術は勿論、神聖魔術、支援魔術、魔導工学、錬金術、占星術、言語魔術、なんと東側の魔術にも精通! その他諸々、魔術と名のつくもの全ての第一人者!」
や、止めろ。
母さんが震えながら笑っている!
「万能の天才!」
とうとう壁に手を叩いて爆笑しだしたぞ!
「・・・おい、どうしたんだカレン?」
「はーはー、なんでも、なんでもないわ兄様。アルフー、アルフレートって凄いのねー」
「そ、そそそうかな。大した奴じゃないヨー」
恥ずかしさのあまりそう言うと、メリアの顔色が変わった。
「あ゛?」
「え?」
あれれ、胸元を掴まれましたよ?
「アルフレートは、大したこと“ある”の。おーけー?」
「お、おーけー」
ぽいっと突き放された。
叔父さんが困った様子でメリアを窘める。
「こらメリア。すまんアルフ。この子はアルフレートのこととなると人が変わるんだ」
「は、はは。そうみたいだね」
え、じゃあ何?
この子といると僕自身を褒めちぎられるの?
むず痒い事この上ないんだけど?
「これから学校で一緒にいることもあるだろうから、この子をよろしく頼むよ」
「う、うん。分かった」
知り合いがいるのは心強いけど、この子はアクが強いなぁ。
「コホン。それじゃあ、これからよろしくね」
そう言うとメリアは手を差し出した。
「あ、ああ、よろしく」
握手を交わすと、彼女の手は暖かかった。
おふぅ。
女の子の手って柔らかい。
「じゃあ、これから図書館に行って、アルフレートのことを教えてあげる」
「え!?」
僕が僕を知る?
なんか哲学っぽい。
いや、違う。
問題はそこではない。
「図書館!」
「わっ!」
いきなり大声を出した僕に、メリアも他の二人も驚いている。
だが、今はどうでもいい!
「行こう! 図書館!」
「え、ええ・・・」
「早く行こう!」
そう言って僕はメリアの手をぐいぐいと引っ張って外に出る。
「ちょ、場所分かるの!? ゆっくりでも図書館は無くならないでしょ?」
「分からないよ。隕石が落ちて魔術書が消えたらどうするのさ!」
「いや、ないでしょ・・・」
そして、僕は母さん達が驚くのを尻目に、図書館に向かって出発した。
*********
「魔術書! 魔術書を読もう!」
「ちょっと、ちょっと待ってよアルフ」
おっといけない。
少し興奮しすぎてしまった。
メリアは僕が握っていた手をグーパーし、「初めて男の子と手を繋いで歩いたっていうのに、全然ロマンチックじゃない」、等と供述しているがよく解らない。
「魔術が好きっていうのは本当みたいね・・・」
「それはもう。で、魔術書のコーナーはどこなの?」
僕は書架を巡り、きょろきょろと首を動かす。
「ねえアルフ。君はまず、常識を学んだ方がいいと思うの」
「え、僕常識ない?」
「君って田舎者でしょう?」
「お、おう。それはそうだね」
ハッキリと言ってくるなあ。
「王都と田舎とでは文明レベルが大分違うからね。その辺りを勉強した方がいいと思うの」
「な、なるほど?」
「そうじゃないと学校に行ってから馬鹿にされるかもよ」
「・・・ふむ」
お上りさんが都会へ行って恥をかくのはお約束だからね。
魔術書を読みたくて仕方がないけれど、ここは仕方ないか。
「分かった。どの本を読んだらいいかな?」
「こっちよ。子供でも分かる本を読むといいわ」
そう言って、メリアは児童書コーナーへと歩いて行く。
ええ~。
僕ってお子様レベルですか?




