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新しい家

 王都エジベラ。


 人口十万の大都市。


 僕の時代だと一万強だったから約十倍だな。


 西側諸国を見渡してもこれだけ発展している国は珍しいとのことで、商人はこぞってこの都には足を運ぶらしい。


 国土は非常に広く、未だ未開拓な地が多くあり、冒険者の聖地とも言われている国だ。


 冒険者か。

 前世の時代にはなかった職種だね。


 モンスターを倒したり、未開の地を探索したり、誰かを護衛したり、貴重な鉱石、植物を採取したりと、与えられるクエストは実に様々だという。


 かくいう、僕もこの冒険者ギルドに登録し、冒険者になりたいと思っている。


 僕の時代にはモンスターなんていなかったのだ。


 それが何故、この五百年で出現したのか実に興味がある。


 貴重な鉱石も植物も、魔術の貴重な触媒になるし、本来ならライフワークになる筈だったのに、お金も貰えるなら一石二鳥。


 是非とも登録したいところだね。


 役所もあるし、他にも美術館や図書館等の国民にも教養を高めるための国運営の公共機関まである。


 銀行なんてのもあるらしいぞ。


 素晴らしい。


「ここが王都。ふーん、はー」


「ふふ、お上りさんね」


「お上りさんだからね」


「やっぱり五百年前とは違う?」


「全然違うね。滅茶苦茶発展してるよ。この辺りは昔はただの森だったし」


「そうなんだ?」


 歴史の重みを感じる。


 そうだよ。

 こういうのが知りたかったんだよ!


 ほほう、この建築技術は僕の時代にはなかったね。


 あっちの施設はなんだ?


 おお、都内の簡単な地図と掲示板が!

 なんと親切!


「アールーフー。そろそろお屋敷に行くわよ」


「待って母さん。あの施設を見たい」


「後でね」


「くぅ!」


 僕は引きずられるように、お屋敷へと連れて行かれた。


 待っていろよ。


 必ずまた来るからな!


*********


「へー、ここが僕らが暮らすお屋敷かー」


 でかい。

 それはもう無駄にでかい。


 村で住んでいた家が三つは入る。


 庭も広い。


 侯爵家の別荘すげぇ。


 ここでなら、簡単な魔術実験なんかも出来そうだ。


「逆にあまり驚かないのね」


「二人で住むには不釣り合いだとは思うよ」


「大きな屋敷の感動とかは?」


「前世ではお抱えの魔術師として大貴族の家に捕らわれていたからね」


 納得がいったように母さんは頷いて見せる。


「ふーん。伝説の魔術師様の言うことは違いますねー」


「やめてよ・・・」


「でも捕らわれてって何?」


「言葉通りだよ。僕の研究内容を自分のものにしたい奴らがこぞって僕を雇いたがったのさ。『研究しろ、研究しろ』ってそれはもううるさかった」


「でも、給料は出たわけでしょう?」


「まあね、研究には金もかかったからよかった部分もあるけど、なにせ自由がない。触媒とかの採取はライフワークとして僕自身が行きたかったけどね『いいからお前は研究してろ』って息が詰まったね」


「流石は伝説」


「だからやめてってば。そんなわけで“アルフ”としては目立ちたくないんだ。自由に研究したいからね」


「赤ん坊であんな大魔術を使えちゃう人に平穏があるとは思えないけど、フォローできるところはするから頑張りなさいな」


「ありがとう」


 やっぱり秘密を打ち明けてよかったね。


 一人でも理解者がいてくれるのはとても心強い。


「じゃあ、入ろっか」


「そうだね」


 屋敷の扉を開けて中に入ると、そこには執事然とした人が一人、メイドさんが二人いた。


 ん?


「あの、あなた方は?」


 執事の人が一礼し、メイドさんがそれに続く。


「我々はカレン様、アルフ様のお世話をさせていただく者です。わたくしはセンバ、この者達はメイとライ。よろしくお願いいたします」


「どゆこと?」


 母さんに尋ねると肩をすくめた。


「わたしも知らないけど、お父様の差し金でしょ」


「左様です。我々は侯爵様に仕えている者。ですが、本日からはあなた様方お二人にお仕え致します」


「え、要らないですけど」


「「「はい?」」」


 お祖父ちゃんには断ったつもりでいたんだけど、伝わってなかったかな?


「ねえ母さん。一階だけ使えれば二階は使わなくていいよね? 掃除はなんとかなる?」


「まあ、そうね。あとは厨房とトイレと、何とかなるでしょう」


「え、あの・・・」


 メイさんが慌てて声を上げる。


「わ、私達がいないと庭の手入れは!?」


「わたしはずっと村で暮らしていたのよ? 庭の手入れなんてお手のものよ」


「「「・・・」」」


「と、いうわけでお引き取り下さい」


「「「・・・」」」


 茫然自失しているお三方に向けて解雇通告をすると、三人はしょぼしょぼと頭を下げて出ていこうとする。


「アルフ。あまり虐めないのよ?」


「え? なんで?」


「・・・本気なのが質が悪いのよね。あなた達、行かなくていいわ。しっかりお世話をお願いします」


「「「え!?」」」


「ごねんね、冗談が意地悪だったわ。流石に二階の掃除を何もしないわけにはいかないし、庭の手入れも大変なのは本当だし」


「い、いてよろしいので?」


「ええ」


 三人は歓喜で破顔した。


「別にいいのに」


「いやいや、そうもいかないでしょう。彼らも仕事なんだし」


 うーん。


 まあ、これでお祖父ちゃんのところに帰ってもこの人達が怒られるのかな?


「えと、すいません。悪気はなかったので。よろしくお願いします」


「それじゃあ、この荷物、お願いするわね」


「はい、では、お部屋にご案内します」


 案内された部屋は、前の家の三倍はあった。


 これは正直ありがたい部分はある。


 アトリエは広い方がいい。


 屋敷自体はあったらあったで嬉しいな。


 これからこの屋敷が僕の家か。


 部屋を見渡し、感慨にふけっていると、一階で複数人の声がする。


「誰か来た?」


 部屋から出て、大階段から下を見渡すと、母さんとアドルフ叔父さん。そしてもう一人、僕とそう年の変わらないだろう女の子がいる。


 誰だろうあの子?


 トントンと、下に降りていくと、母さんと叔父さんが僕に手を振る。


「おお、アルフ。久しぶりだな」


「叔父さん!」


 爽やかに笑うアドルフ叔父さん。


 この人と母さんがあのヨハネスの兄弟なのか? 嘘だろ。


「やっとこっちに引っ越してきたか」


「うん」


 僕は隣の子が気になって、ちらっとそっちを見ると、彼女はニコリと笑った。


 金髪で僕とそう身長が変わらない。


 目は叔父さんと母さんと同じ琥珀色の、


 ああ、なるほど。


「おお、この子はメリア。俺の娘だ」


「ああ、やっぱり。僕はアルフ。よろしくね」


 そう言ったら、彼女は自分の胸に手を当てた。


「初めましてアルフ。私はメリア。あなたと同い年らしいからよろしくね」

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