いざ王都へ!
昨日、毒を盛られたお祖父ちゃんはすぐに解毒出来たけど、それで即全快とはいかず、会場となった領主様の屋敷で療養中だ。
アドルフ叔父さんはヨハネスをしょっ引いて王都に帰ったけど、お祖母ちゃんは付き添っていた。
僕らは魔術学校に通いたい旨を伝えると、お祖父ちゃんはその場で頷いた。
「なるほどな。いいだろうなんとかしよう」
「本当! お祖父様!」
「かわいい孫が頼ってくれたのだ。昨日助けられた恩もあるし、あの場で瞬時の判断で雷属性の高等魔法を使う程の才能を、活かさない手はあるまい」
この世界には攻撃魔法が八つ存在する。
地、風、水、火の四大属性を基本に雷、光、闇の上位属性。そして“極”の八属性だ。
あの場では今にも斬りかかろうとしていたヨハネスを止める為に八属性最速の雷を使った。
つまり僕は、威力はさしてなかったが、上位魔法を使用した点を評価されているんだ。
「ありがとうお祖父様」
「そうと決まればさっそく手続きじゃ」
さらさらと手紙をしたためるとそれをお祖母ちゃんに手渡す。
「早馬で学校にこれを渡してくれ」
「分かりましたわあなた」
お祖母ちゃんはすぐに動いてくれた。
お、おお。
今年は無理だと思っていた魔術学校の入学がこんなにとんとん拍子に進むとは、貴族なんてどうでもいいと思っていたが、すげぇ!
「となると、王都に引っ越さなければならないのだが・・・」
まあ、当然そうなるだろうね。
あの村には沢山の思い出があるし、離れがたくはあるけれど、やっぱり魔術を学びたいという気持ちに嘘はつけない。
「お祖父様。その辺り、小さな家でもいいのでなんとか手配出来ませんか。お金はアルバイトでもなんでもしてコツコツ返しますから」
正直勉強に明け暮れたいが、学校に通えるだけでも御の字だ。
コネで入ることが出来るだけでもありがたいのに、これ以上会ったばかりの祖父に迷惑をかけるわけにはいくまい。
「何を言っとる。王都にはアルベルト家の別荘がいくつもある。それを使えばよかろう」
別荘!?
「いや、侯爵家の別荘となると、大分大きいのでは? 一人で生活するにはちょっと」
「使用人を何人か当てよう」
「ええ!? いや、学校に通わせていただくだけでも十分ですから」
「アルフよ」
お祖父ちゃんは少し寂しげに僕を見る。
「この十五年。わしは直接にはお前に何も出来なかった」
や、支援金をくれただけで十分なんだけども。
「命の恩人云々はこの際どうでもいい。どうか、かわいい孫に格好をつけさせてくれ」
「・・・お祖父様」
断りにくい提案上位に当たる『恰好をつけさせてくれ』が来ましたよ。
やるねお祖父ちゃん。
昔はモテたと見える。
で、これを言われてしまった以上、ここは乗るの一択である。
「よろしくお願いします!」
「ほっほ。嬉しいものよな」
そう言って、お祖父ちゃんはニコニコと笑った。
僕は母さんに視線を移す。
「そういうわけで母さん。王都に引っ越すよ。寂しい思いをさせるかもしれないけど、村の皆と仲良くね」
ゼクスなんて、滅茶苦茶母さんにアプローチしたくて色々世話を焼いてくれる筈だ。
だが、まだまだ母さんは渡さん。
「ん? 何言ってるの。わたしも行くわよ?」
「へ!?」
僕は目を丸くした。
「いや、だって、母さんは王都に帰るのは、アレでしょう?」
敢えて“アレ”と言ったけど、お祖父ちゃん達との確執がある。
本当は戻りたくない筈だ。
母さんは面白くなさそうに、お祖父ちゃんを見る。
「使用人がいるとはいえ、アルフが王都でやっていけるか心配だもの。お父様はそれを見越して、アルフを王都に呼ぶつもりなのでしょう?」
「・・・何のことかな?」
なるほどね。
僕にいい格好を見せたい。
母さんに戻って来てほしい。
その二つを狙ったわけか。
一石二鳥。
やるねお祖父ちゃん。
出来る男だ。
「はぁ。確かに村からじゃ学校には通えないし、お世話になるわけだし、戻るしかないんだけどね。別荘であって、実家に戻るわけでもないし」
「おお!!」
「でも、勘違いしないでよね。ミゲールとの事。まだ、許したわけじゃないからね!」
「いや、そのことは。まあ、その怒り、受け止めるしかあるまいな」
「ふん!」
うーん。
やっぱり完全に和解とはいかないね。
零歳の時の記憶を思い出したので、僕は父さんとの記憶を大事にしているから、お祖父ちゃんには思うところはあるけれど、貴族として仕方のないことだというのも解っている。
その辺は、前世の記憶を取り戻して、物分かりがよくなった部分はあるな。
そんなことを思っていると、母さんがちょいちょいと僕を呼ぶ。
「何?」
「それにね、アルフレートのことを知っている人間が一人いるほうが、今後立ち回りがしやすくなると思うのよ」
そう小声で言った。
確かにね。
ごもっともだよ。
僕もその点は大変に心強い。
「分かったよ母さん。これからもよろしくね」
「勿論よ。だってわたしはアルフのお母さんなんだから!」
いや、本当に良い人に産んでもらったと思うよ。
*********
手続きは完了し、僕は来月から魔術学校に通えるようになった。
そして、通学の為、僕と母さんは王都エジベラに引っ越す当日。
「ううう、カレンさーん」
「あらあら、泣かないでねゼクス君」
「ううう、お、俺も王都に行きたい。しかし、俺が行くとこの村には大工が他にいないし」
「そんなに落ち込むなよ。ゼクス」
「あ、兄貴もいなくなって俺はどうしたら?」
こいつ、僕のことずっと兄貴って呼ぶなぁ。
そっちの方がずっと年上なのに。
でも、なんだかんだでこいつには世話になったな。
「また戻ってくるかもしれないよ。その時はよろしく!」
「そうね。何時まで王都にいるかは分からないし、この村も大好きだからね!」
「カ、カレンさーん。兄貴―!」
若干うざいな。
それと、僕に抱き着くのはいいけど、母さんにはやめろ。
「ついにこの時がきたか、カレンよ」
「村長さん」
「君がやんごとなき人物だとは分かっている。だが、ここが君の第二の故郷だということは覚えておいてほしい」
「勿論。わたしもそのつもりです!」
「ふふ、ではいってらっしゃい、だな」
「「「いってらっしゃーい!!」」」
「「行ってきます!!」」
村の皆に見送られ、僕たちは王都エジベラへと赴く。
遂に、遂に、魔術を学べる。
僕の転生した真の意味を、ようやく実現させることが出来るんだ!




