表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

才能無価値の追放貴族は、親友を助ける序に世界を救う

作者: 霜月 雹花


 適正能力の数によって、優劣が決まる世界。

 子供の時から〝良い適正を貰えるように、日々の努力を頑張りなさい〟と言われ続けた。

 親の言葉を受け入れ、遊ばず日々鍛錬に勤しんだ。

 武術、魔術、学術。

 寝る間も惜しんで努力した。


「ローレンス・クロヴィスの適性能力は、〝剣〟のみ」


 鑑定結果は、〝剣〟一つだけだった。

 それまで愛してくれた家族からは「使え無い」と言われた。

 愛し合っていた婚約者からは「将来性が無い」と言われた。

 親交のあった友人達からは「無能」と言われた。

 だけどたった一人、幼き頃から競い合っていた〝親友〟だけ、その結果を聞いて違う言葉を掛けてくれた。


「ローレンス。負けないからな!」


 そう言ってくれた友は、多才な能力を貰い祝福されていた。

 そんな光景を見たローレンスは、ただ嬉しそうにしている親友を悲しませない様に作り笑いを浮かべた。

 それから数日後、ローレンス・クロヴィスはクロヴィス公爵家から追放され、ただのローレンスとなった。



 あれから3年の時が流れ、俺は山の奥地で一人で暮らしている。

 3年前、能力鑑定で授かった能力〝剣〟と、少量の荷物を持ち住んでいた王都から逃げるようにこの山に訪れた。


「ん~、今日も良い天気だ。……さてと、朝食の準備をしよう」


 あの日、全てを失った俺は名前も捨てた。

 と言っても、名前を捨てた所で名乗る相手が居ないこんな山奥だと、捨てた意味も殆ど無い。


「へっくし! うぅ、やっぱ夏でも朝は寒いな……【火の剣】」


〝ボッ〟


 【火剣】と呟くと、俺の手に赤い刀身をした剣が出現して目の前の焚き火用に集めた木を点火させた。

 俺が授かったたった一つの能力である〝剣〟は、意外にも使える能力だった。

 当初、この能力は〝剣術〟と同じだと言われ、ありふれたそんな能力が一つだけと絶望した。

 しかし、一人になりこ山で暮らして行く中で、俺はこの能力を向き合い様々な事が出来ると確認した。


 火を使いたいと思えば〝火が出る剣〟を生成。

 水が使いたいと思えば〝水が出る剣〟を生成。

 光が使いたいと思えば〝光が出る剣〟を生成。

 魔法能力が無い俺は、剣を生成し様々な能力を使う事が出来る。

 その幅は広く〝鑑定する剣〟と意識すれば、鑑定能力が付いた剣を生成する事も出来た。


「まあ、それが分かったのもここに来て1年過ぎた後だったからな……」


 家から追放され1年後に、能力の凄さで家に戻して貰おうと考えた時もある。

 だが、それで本当に良いのか? と自問自答した。

 能力が使えないと言って見捨てた家族、将来性が無いと見限った婚約者、無能と蔑み馬鹿にした友人達。

 そんな人達の所に戻って、俺は良いのか? と、その答えの結果俺は3年もこの土地に居た。


 それでも、一人だけ会いたい奴も居た。

 そいつの名前は、アレン・レベリス。

 レべリス公爵家の三男で、俺と同い年の男。

 親が友人同士で幼少期から会う事が多く、その度に色んな事で競い合った。

 かけっこ、かくれんぼ、剣術、学術、調理対決。


「あの時が一番楽しかったな……アレン。今頃なにしてるんだろうな……」


 つい昔を思い出し、俺はそう呟き〝空間に物を入れる剣〟から肉を取り出し朝食を作り始めた。



 食後、拠点として使っている洞窟から森へと向かった。


「グルォォッ!」


「珍しいな、森にオークが出るなんて……」


 普段この森で見かけないオークを発見した俺は、そう言葉を零して首を切り落とした。

 それから、森での狩を続けていくと異変に気付いた。

 普段この山に生息しない筈の魔物を多数目撃した。


「何かあったのか? 魔物の流れからして、王都の方面から魔物が流れて来てる感じだが……」


 異変に気付きながら調べて行くと、魔物達は王都方面の森から来ている事に気が付いた。


「……嫌な予感がするな」


 王都で何かあったのか? 魔物がこれだけ逃げてくるという事は、魔物が怯える何かが現れたって事に……

 いやでも今更王都で何かあったからって、俺に関係は……


「アレン……」


 ふと、脳裏に過った幼き頃からのライバルで親友の顔。

 今の自分が彼奴の助けになるか分からない。

 しかし、それでも俺は王都へと向かおうと決心した。


「ここともお別れだな……3年間、住ませてくれてありがとう」


 森から洞窟に帰って来た俺は、旅の準備を終えて洞窟にお礼を言った。

 そして、俺は〝空を飛ぶ剣〟を取り出し、剣の上に乗り王都へと向かった。



「なッ!? 何が起こったんだ!?」


 数年振りの王都は、記憶に残っている姿では無かった。

 壁は壊れ、炎が燃え上がり、王都の中心部にある城がほぼ壊れている。


「炎が燃えているって事は、この状態になったのは最近って事か?」


 王都の惨状に驚く俺に、突如悪寒を感じ王都の真上を見つめた。

 な、何だアレは!? あの黒く、禍々しい魔力を放つ生物は……


「邪竜……」


 昔話で聞いた事がある。

 平和な世界に突如現れ、世界を壊す邪悪な竜。


「アレン。お前は無事なのか……」


 そう呟き、俺は王都へと近づいて行った。

 この惨状で真面に王都の出入り口の門は機能しておらず、兵士は一人も居なかった。


「というか、壁から出入りが出来るしな……」


 街の中は、外から見た以上の酷い状態だ。

 木は燃え、家は壊れ、道は瓦礫の山、更に街の中には魔物も侵入していた。

 無駄に戦闘をしても意味が無いと考え、剣に乗ったまま移動した。


「ハァッ!」


 移動していると、少し先から聞き覚えのある声がした。

 急いで剣を移動させ、その先に行くと赤い髪をした青年が住民を守る様にゴブリンの集団と戦っていた。


「アレンッ!」


「ッ! なっ!? お前は!」


 赤い髪の青年、その人物は俺を最後まで俺に声を掛けてくれた。

 たった一人の親友だった。


「グギャッギャッ!」


「「ギャッギャッ!」」


「煩い!」


 感動の再会に邪魔を指したゴブリン達に、俺は【火の剣】で火をゴブリンの顔に当て絶命させた。

 それから、住民達を魔物達がまだ進行してきていない場所に案内をし、俺はアレンと二人だけになった。


「……お前は、ローレンスで間違いないのか?」


「ああ、そうだよ。まあ、その名前は捨てて、今はレインと名乗ってるけどね。久しぶりだな、アレン」


「ッ!」


 向かい合い「久しぶり」と発した俺に対し、アレンは俺の頬を殴った。

 体格も良いアレンに殴られた俺は、壁に飛ばされた。


「何で、何であの時居なくなったんだよ!」


「……親友にまで、捨てられたくなかったからかな。家族から、婚約者から、友から捨てられた。その状況でアレンからも捨てられたらと思うと、逃げ出しなったんだ」


「ッ! 俺が、俺がお前を見捨てる訳ないだろ! 家族より、婚約者より、周りの人達より、俺はローレンス・クロヴィスの事を誰よりも知ってたんだ!」


 アレンは倒れている俺の服を掴み、そう叫び泣きだした。

 ああ、やっぱりアレンは俺の事を見捨てるなんて無かったな……良かった。


「……ごめん」


 子供の様に泣いているアレンに、俺はアレンの背中に手を回してそう呟いた。

 それから、アレンが落ち着くまで待ちながら、俺は周囲を警戒した。


「なあ、アレン。王都で何があったんだ?」


「……ローレンス。いや、今はレインだったな。お前も見ただろ空の上で、こちらを見ている邪竜の姿を」


「ああ、見たよ」


「彼奴は三日前、突然王都に現れて王都で暴れたんだ。レインも知っての通り、この国は能力主義の国だ。強力な能力を持つ者達で邪竜と戦い、何とか邪竜を止める事は出来た。でも、倒す事も退く事も出来ず、彼奴は俺達が死ぬのもを空の上から見てるんだよ」


 アレンは空を見上げ、邪竜を睨みながらそう言った。


「……国はどう考えてるんだ?」


「親父から聞いた話だと、他国に救援の連絡をしているみたいだけど、自国にいつ邪竜が来るか分からない状況で断られているみたいだ。それで、上の連中は話し合い話し合いで一向に外に出ず、若い連中で街の中に入って来てる魔物を駆除してるんだよ」


「成程な……って、おいアレン。お前、足どうしたんだ?」


 アレンの体を見て傷があるのは確認していたが、一つおかしな所があった。

 それは、右足のある所に木の棒が見えていた。


「ああ、これか……邪竜が襲ってきた日にやられたんだ」


 そう言いながら、ズボンの裾を上げて無くなった右足部分を見せて来た。


「……アレン。今から、する事を誰にも話すなよ」


「はっ? 何をするんだ?」


 アレンの足を見て俺は、こんな痛々しい状態のまま放置できないと思い治療する事にした。

 以前、俺がまだ〝剣〟について全く知らない時、ただの剣で戦い敗れ瀕死の状態となった時があった。

 その時、俺は〝傷を治したい〟と念じ、初めて〝剣〟の能力を使った。


「こい【再生の剣】」


 別に詠唱何ていらないが、親友の前だから少しかっこつけた。

 そして、俺は剣をアレンに近づけ剣の能力を使った。

 すると、アレンの体の傷がみるみる消えて行き、無くなった右足が生えた。


「……ハァ!?」


 一瞬、何が起こったのか理解できなかったアレンは数秒掛けて驚いた声を上げた。


「今のは、体の状態を元に戻す剣の能力だよ」


「さも、常識です。みたいな言い方するな! お前、何で回復魔法が使えるんだよ! 俺が聞いたのは〝剣術〟とか無いって」


「俺が授かった能力は〝剣術〟じゃないぞ? 俺が授かったのは〝剣〟だ。その能力は、剣を使えば何でもできるという能力だ。だから、さっきみたいに火を出したり傷を治したり出来るんだよ」


 俺の能力を説明すると、アレンは唖然とした。

 まあ、俺だってこの能力に気づいた時は、驚いて言葉も出なかった。

 というか、最初の再生する剣で「何だこれ!?」と驚いた。


「なんて馬鹿げた能力だよ」


「まあ、この能力にも少し欠点もあるけど、今は説明しなくても良いよね。それで、アレン。これからどうする?」


「どうするって、何がだよ」


「王都から逃げるか、あの邪竜を倒すのかって事だよ」


 そう俺が聞くと、アレンは暫く考えた。

 そして、俺の顔をジッと見つめ言葉を発した。


「レインなら、あの邪竜を倒す事が出来るか?」


「どうだろうね……」


「……その顔は、出来るって顔だな」


 そう俺の表情を見て、アレンは言った。

 流石、大親友様だな、俺の表情を見て読み取るなんて家族や婚約者すら出来なかった事を平然をやってくれる。

 だから、俺はアレンにだけは見捨てられたくなかったんだよな。


「この国、この世界を救ってくれレイン」


「しょうがないな、親友の頼みだ。悲しませた償いには丁度いいね」


 そう言って俺は、空に浮かぶ邪竜を見上げ、剣を作成した。

 新たに作る剣には、膨大な魔力が必要だ。

 一日に作れる数があるが、今日はまだ一本も作ってない。


「さてと出来た【破邪の剣】」


「神々しい剣だな」


「邪を滅する剣だからかな? 剣の色とか、俺は決められないんだよね。だから、偶に変な剣とか出来て困る時もあるんだよ」


 それから俺はアレンに「行ってくる」と言って、もう片方の手に〝空を飛ぶ剣〟を取り出し空を飛んだ。

 そして、邪竜に接近した俺は【破邪の剣】を一太刀浴びせた。


「グルァガァァァァ!!」


 邪竜は【破邪の剣】が当たった事で、その身が徐々に崩れ、叫びながら落下していった。


「はは、流石俺の剣だ。思っていた通りの剣だよ」


 剣の能力に俺は感謝をして、落ちて行く邪竜を【空間に物を入れる剣】に入れ、アレンの所に戻った。


「任務完了だよ」


「ハハハ、やっぱりローレンスは凄い奴だよ。10歳で、騎士団長の親父に剣勝負で勝った時から、凄い……奴だと思ってたけど、まさか世界を脅かす邪竜を一太刀で倒す何て……ほんと、お前は凄い、奴だよ……」


 安心感か、これまでの緊張感が解けたのかアレンは泣きながら礼を言った。

 その後、一瞬で終わった邪竜討伐より面倒な事になった。

 追放された家から「流石だ!」と言われ、追放した事を無かった事にされ家に連行されそうになった。

 更に、婚約破棄をしてきた婚約者は「流石旦那様だわ!」と結婚すらしてないのに旦那呼びをして近づいて来た。


 だが国を、世界を守った俺に対して「失礼を働くな!」と他の者達が止め、実害は無く逆に家族と婚約者は迷惑を掛けた罪として兵士に連行されていった。

 まあ、なんにせよ親友を守れて本当に良かった良かった。

 

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
最終更新 20年5月なんだけど普通に説明されてない? 誤字報告システムとかは更新記録が残らないのかな?
[一言] 剣をつくって能力付加する能力ってことか。何か無理やりすぎる気もするけど、チート系のお話だししょうがないね。 剣術とかでも十分使えるような気がするけど無能とされる世界観でなにが重要視されてるの…
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ