スクリューとオレンジ
「コイツはチガウ コイツはダレダ」
冷凍保存されたプラス星人と仮死状態の盾を目の前にしてオレンジは錯乱ぎみだった。
標的を捕らえて、光速テレポート船に戻ったスクリューと言う名の賞金稼ぎに同じ賞金稼ぎの相棒のオレンジが電波変換装置を介して語りかける。
スクリューは170センチほどの体格で忍者のように黒い服をきて、額を守る赤い鉄甲が付いた黒い頭巾を被り、手足に赤い鉄甲防具をつけ、顔面の大半を覆う赤い金属製のフェイスマスクからは時おり、熱風が下向きに吹き、長い鼻のようにみえた。
尾てい骨からは毒針のある長い尻尾が生え、その尻尾は外骨格のような赤いプロテクターで覆われている。
「コイツ ダレダ? 」
相棒の賞金稼ぎオレンジはスクリューに思考を飛ばす。
オレンジは拳ほどの大きさのオレンジ色のダンゴ虫のような生物で全身よりも長い触覚が目立ち、触覚は常に小刻みに揺れている。
オレンジのおそらく頭部と思われる部分には指輪ほどの大きさの黒く光る宝石のようなものが目立ち、その宝石を守るためか強度の高いクリスタル製の防具で守られている。
オレンジには特殊能力があり、それは高度に進化した触覚を用いた、探索能力だった。
高度に進化した触覚は物から思念を読み取るサイコメトリー能力や生物の思考を読み取るテレパシーなど、様々な超感覚を生み出す。
オレンジはこの能力を使いこなす 最高の探索者だった。
声帯を持たないオレンジは別種族のスクリューと会話するため電波変換装置を介して意志の疎通を行なっていた。
スクリューは自分のロッカーにヤツデ型になる地球でいう片手で撃てるショットガンほど大きさの光弾銃と両脇に備えた銃身が50センチほどの全自動の二丁の長方形の実弾銃を片付けると
あまり座り心地はよくなさそうな椅子に座り、赤い塗装の多少剥がれた金属製のフェイスマスクを外し、黒い頭巾を脱ぐ。
スクリューの顔は皮膚は真っ白で 頭髪はなく 目は青く 大鷲のよりも湾曲した鷲鼻の黄色いクチバシがある。
そして額部分には出っ張りがあり、この出っ張りには鋭感な神経が走り、生体電流を感知する器官がある。
そして生体武器は毒針を仕込んだ尻尾だった。
血液の主な成分がヒ素と水であるスクリューの血の色は銀色で
2つの毒袋を体内にもち、一つは高濃度のヒ素毒。もう一つはモルヒネが生成される。
スクリューはこの毒と薬を使いこなすことが出来た。
この生体電流を感知する能力と毒針を持つスクリューは最高の追跡者である
そしてスクリューの出っ張りのある額の上にも指輪ほどの大きさの黒い宝石のようなものが目立ち、オレンジと同じように強度のあるクリスタルで守られている。
二人は最高の賞金稼ぎコンビである。
この二人の賞金稼ぎは地球で言う賞金稼ぎとは仕事内容が違っていた。
地球のように犯罪者を追跡して賞金を稼ぐような追跡者ではない。
彼らもハンターではあるが、その対象は希少生物などの彼らの銀河に生存する猛獣や特殊な能力を持つ生き物、絶滅危惧種など希少価値の高い生物で、生物たちにはまるでブランド牛のようにA5までのランクづけがある。
そして、この希少生物たちに賞金をかけ賞金稼ぎたちに金を払うのはコレクターと呼ばれる富豪たちで、多くのコレクターたちは所有欲のために、この希少生物たちをコレクションしているのだった。
コレクターと呼ばれる者たちには様々な種族の富豪がいたが多数がオニキス星人で、このオニキス星人の所有欲は生体活動や誕生過程に影響があると考えられる。
また二人の賞金稼ぎスクリューとオレンジもオニキス星人であった。
声帯を持たないオレンジが電波通信装置を使い、またもカタコトで相棒に悪態をつく。
今回の仕事はAランクの仕事でその獲物は希少価値が高く、かなりの賞金が稼げるはずだ。
それなのにスクリューの捕獲した獲物は仮死状態の加工された、生物とDランクにもならないような二足歩行の猿に似た生物だった。
盾に埋め込まれ防具にされた上、眠りについたままのメドゥーサと
冷凍保存されたプラス星人のラックだった。
不満を撒き散らし、通信電波で罵倒する相棒のダンゴ虫に対し、スクリューは座り心地の悪そうな椅子に腰掛けたスクリューは無機質な机においたワインボトルからグラスに真っ赤なワインを注ぎ一気に飲みほし、まくし立てるオレンジに対して掌をかざし、思考を読み取るように促す。
オレンジはスクリューの掌に長い触覚を巻き付け、ようやく大人しくなった。
デクを消滅させたスクリューの獲物はAランクの希少価値の高いケイ素系の生命体だった。
ケイ素の生命体は宝石型や岩石型の石のような生命体で様々な特殊能力がある生物が多かった。
スクリューは狩りの目標物を探索する装置、通称スキャナーと相棒のオレンジの探索能力を使い。久しぶりの大物のAランクの獲物を狙い、プラス星を訪れ、たまたまそこに現れた、目障りなデクを消去し、目の前にたまたまいたプラス星人のラックもそのまま消去しようとしていた。
ここで誤算が生じる。
生体電流を感知できるスクリューは目標の獲物とこの何の価値もないプラス星人が共鳴している事に気づいたのだった。
スクリューは長いハンターの経験からAランクの石の生命体と、このDランク以下のプラス星人は運命共同体だと悟った。
おそらく、仮死状態のメドゥーサがラックの生命エネルギーを吸収しながら完全な死から逃れているのだろうと推測したのだった。
これは寄生だった。
それはスクリューやオレンジには理解できる生命活動だった。
この状態のためスクリューは消去のための光弾銃ではなく、生きたまま捕獲するための、獲物を仮死状態にする冷凍弾丸を装弾した実弾式の銃を使い、ラックを冷凍保存したのだった。
錯乱ぎみだったオレンジはスクリューの掌から触覚を外すと、不貞腐れた様子でドーム型の自分のホームに戻ってしまった。
オレンジにもラックがいなければ、メドゥーサの目に加工されたケイ素生命体がただの石ころだと言うことが理解出来たからである。
プラス星の雲のようにカモフラージュされていた立方体の空舟は徐々に船体が光に包まられ消えていった。