金色のハコスカ
プラス星 その星は我々が住む地球によく似ていた。
違う部分と言えば気候が地球よりも温暖で雪などが降る寒い地域が少ない事をくらいだろうか。
文化形態も似ており、プラス星人と地球人の進化の過程も似ていると考えられる。
体の構造も似ており、男女が存在し、様々な肌の色の人種も存在した。
星の重量や恒星との位置関係もほぼ同じで月のような衛星はない。
プラス星の植物は光合成をし、酸素を排出する
プラス星人は酸素を取込み、血液の成分は大部分が水と鉄分で血の色は赤い。
文化にしても、遺跡、伝説、神話、昔話など地球人になぜか似ている部分が多く。謎である
文明の度合は現在の地球よりは進んでいるが、宇宙分野においては光速飛行は完成しておらず、太陽系の隣接する惑星に人工施設を作り始めた程度で、自分たちの太陽系外に有人船を飛ばすほどの科学技術は持っていなかった。
ラックは口ひげの男を石化したメデューサの盾を車の助手席に乗せると金色のハコスカを発進させる。
ドコドコの貴族の屋敷は広く、ハコスカを走らせても出口の門まではなかなかの距離があった。
ラックは長い施設道路を走らせながら、今起きている出来事を整理していた。
メデューサの埋め込まれたこの盾が本物ならば、金になるのは間違いない。
しかし、本物と証明するには誰かを石化して証拠を見せる必要があるのでは?
イヤ、その前に口ひげの男は死んだのか?
死んだらのなら大事件だ。自首するか?
イヤ、あれは事故だ。
その前にメデューサの盾など本当にあるのか?これは本物か?
イヤ、今はやはり逃げよう。
頭の中で何人もの自分が話し合っている。
程なくして、口ひげの男の屋敷の出口の門が見えてきた。
門番は何事もないように門の出口を開けようとしている。
まだ石化したこの屋敷の主人は発見されていないのだろう。
門を無事に抜けるとラックの金色のハコスカは更に加速する。
山上にある屋敷からの両脇に凜々と大木が生える緩やかなカーブが続く一本道を走り続ける。
「ん?なんだあれ?」
順調に走っていた金色のハコスカのフロントガラスを撃ち抜かれる。ハコスカはスピンし回転する車は大木にぶち当たり停止する。
かなりの衝撃だったが旧車のハコスカに安全のために増設した最新式のエアバッグのおかげでラックは軽い打撲ですむ。
「火の玉か」
意味不明だった。ラックのハコスカのフロントガラスをぶち破ったのは火の玉だった。
走行中に見えたのは空中に浮かぶ拳ほどの火球 火の玉 だった。
火球が停止して空中に浮いているが見えたと思う同時ほどに高速で動きだし、ライフル弾のようにフロントガラスを突き破る。
ラックは大破したハコスカから転がり落ちるように脱出する。
多少脳震盪を起こしたが立てるのを確信すると立ち上がりハァと頭を抱えた。事故ってしまった。
頭を抱え立ちすくむラックは、ふと異様な気配に気づく。
事故を悔やんでいる場合ではないようだ。
どこからか現れたか分からない。火の玉がラックを囲い始めた。
明らかに敵意がある火の玉 十玉ほどがラックを囲う。
まるで野犬が獲物を囲んで襲いかかろう狙っているようだった。
突然の恐怖にラックは縮み上がる。
そこに上空からラックを囲う火球の円の中に着陸する者が現れる。
かがみ込み片手をついて、着地の衝撃を緩和したその者は素早く立ち上がると、背中に備えられた真っ黒な見た事もない型の銃を抜く。
構えた銃は一つに見えた銃身が十個に分かれ、まるで ヤツデ のように変形する
一つの銃声が響くと十個の銃口から発射された青い光弾が同時に十体の火の玉すべてに命中し、火の玉は消えてなくなってしまった。
その者は ヤツデ のように十個に変形させた銃口を一つに戻すと背中のホルスターに銃をしまい、ラックの方に向き返す。
ラックは腰を抜かす。
現れた火の玉もそうだが、突然上空から現れたこの人物も明らかにプラス星人ではないからだ。
人間型の構造をしていて外見は人似ているが、
忍者のように黒ずくめの服を着て、黒い何かしらの小さな装置が付いたブーツを履いている。
腕と脛には赤い多少塗装が剥がれた手甲と足甲のような防具をつけいて
頭も黒い頭巾のようなものを被り、額部分はこれも赤い塗装が剥がれた鉄甲で守られている。
顔面には鼻から顎までを覆う赤い金属製のフェイスマスクをつけ、確認出来るのは少しの皮膚と目だけだった。
顔面につけた赤いフェイスマスクの鼻辺りの位置からは時おり、熱風なのか蒸気を上げた風が下向きに噴射され、まるで長い鼻のように見える。
その上、これも恐らく金属加工されたプロテクターで守られているのか
サソリのような外骨格の針の付いた2メートルほどの尻尾があり、尻尾覆う防具も赤い塗装が若干剥がれている。
顔面を覆うフェイスマスクのせいで、ちゃんとは確認出来ないが見える肌の色は真っ白で瞳は青い。
青い凍りつくような目で睨まれたラックは腰を抜かし立ち上がることが出来ずにいた。
突然、空から降ってきた男は背中のヤツデのような銃とは別に
両脇に折り畳まれ、備えられた 黒い金属製の全自動で動く細長い長方形の銃をラックに向けた。
「なんで 俺を、、、、」
ラックがそのエイリアンに問いかける間もなく
発射された金属の弾丸はラックの腹にめり込んだ。
ラックの体は徐々に体温を失い、凍りつくように意識も消滅する。
そして
事故現場には助手席のドアが開いた 金色の大破したハコスカが残されるだけだった。