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末路

キンッと薄い刃らしい音を立ててナイフがアスファルトの地面に落ちる。


「うっ…」

田中は落ちたナイフを見て自分が刺されたことを認識すると、

「ぐぁぁ…」

とさらに痛そうな声を出す。


ーーやっちまった……


軽い脳震盪が回復してきた俺は、自分のしたことの重大さに気付いた。


「す、すまん…」

何を謝っているんだろう、俺は。

だが、人間は強い敵意なく人を傷つけてしまうと、ふいに謝ってしまうものだ。特に相手が知り合いであれば。



「さ、刺しやがったな…お前は俺の金まで奪って、そこまですんのかよ!!」

と田中が怒鳴る。


俺は、ちらほらと窓から野次馬が見ていることに気付いた。


まずい。近所の連中には俺の顔が知られているかもしれない。


俺は思考を巡らせた。

とにかく、俺は悪くないと、警察なり病院なり、周りなりに知らせる必要がある。


俺はナイフを拾い、ポケットにしまうと、うずくまる田中に肩を貸し、その場を離れた。


200mも離れると、野次馬は誰もいなくなった。ちょうど近くに公園があり、そこのベンチに座る。


俺は自販機で缶コーヒーを買って、田中に手渡した。


田中は既に落ち着いたようだ。

俺が刺した傷もあまり力が入っていなかったことが幸いして、かなり浅かったらしい。


「"俺"……すまねぇ」

と、田中は謝った。


「あぁ…」

俺は何より悲しかった。大学時代、何をするにも共に行動し、悲しみも喜びも分け合った親友が、こんな形で俺を恨むとは。


たかが金のために……


だが、これが金の魔力だ。

【現代において、金は人生そのものだ】


田中は"10億"によって変わった訳ではない。


田中を変えたのは、むしろたった"17万円の月給"なのだ。


もし、田中の月給が50万円なら?

仮に10億には、遠く及ばずとも、俺をそこまで憎むことは無かっただろう。


田中の憎しみは、俺に対してではなく、

金に対して、あるいは仕事に対して、自分の苦しい生活、それを黙認する社会、甘受する自分への憎しみなのだ。


だが、もう遅いのだ。田中は俺を文字通り殺そうとし、俺は田中を刺した。

もはや握手で仲直りというわけにはいかない。


「なぁ、田中。お互いのために警察へは行かない。お前は特に釈放直後だからまずいことは分かるな」


「あぁ…言わなくてもわかってる」


「そうか。お前、俺と働かないか?」

自然とそう口にしていた。


「何だと?」


「起業するんだ。飲食業。まだ全然何も決まってないんだけどな。」


「ありがとうな。お前はやっぱり甘いやつだな。変わらねぇよ。」


「そうか?」


「あぁ、でも無理だ。俺にはお前を許せそうにない。すまねぇな…許してくれ、こんな俺を…」

田中の声は微かに震えていた。田中にも葛藤があるのだろう。


自分を許してくれた友人。

自分が壊してしまった関係。

それでも、10億を諦めきれない自分。


俺が田中のことをどうこう言える立場ではない。恐らく、いや、間違いなく俺が田中だったとしても、同じ末路を辿っただろう。


「……………」

俺は何も言わず、田中の背中をポンと叩いた。俺には、田中を責める資格などない。


田中は嗚咽を漏らした。田中が泣いているのを見るのは初めてだ。


俺は立ち上がり

「…またな」

と言いその場を去った。






田中は、翌日首を吊って死んだ。


スマホで気分だけで書いてます。


十万字くらいでは完結させたいですが、


有名な作品でなければ更新しなくなると


読み手が激減するのがネックでしょうね。


十万字くらいなら数時間で読めるでしょうし、

一晩で読まれてしまうと、結局新規の読み手を獲得するのに新着に表示される必要があるという、

なろう系の弱点を見つけてしまいました。


やはり読むのに1ヶ月はかかるような超大作を生み続ける根性を持つがベストなのでしょうか。


プロでも難しそうです。

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