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宝くじで10億当たった結果www  作者:
1章 10億受け取りまで
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佐藤沙里フラグ

「どういうつもりだね!!!君ぃ!!!この損失は君に請求させてもらうからな!!」


オフィスに怒鳴り声が響く。爆心地は、当然俺のデスクだ。

課長の怒鳴り声は特に珍しいものではない。夕方にカラスの鳴き声を聞くくらいの感覚だ。


「仕方ないでしょう?強盗に入られたんですから」

と俺が返すと、課長はハゲ頭にシワを何本も寄せ目を見開いた。驚いた顔のつもりなんだろう。


それもそのはずだ。課長に逆らうと翌日には社長に伝わっている。それも数倍悪い形で。

だから課長への答えは「申し訳ございません」以外に聞くことがない。


「このことは社長に報告しておくからな!!」

と課長は捨て台詞を吐き自分のデスクに戻った。


普段なら恐縮してしまう俺だが、何せ10億が味方なのだ。怖いものなどない。


俺は自慢げに伸びをすると、自分の仕事に取り掛かった。会社がこれほど居心地のよい空間だとは知らなかった。


すると後ろから肩を叩かれる

「"俺"さん、男らしかったですぅ!」

「ゆるふわ」受付嬢、佐藤沙里だ。


「ま、まぁ、たまにはこういう返しもいいかなってな」

俺はぎこちなく笑みを作るが、心臓の鼓動はやや早い。


俺のことを認識していたのか。


誰にでも全く同じように笑顔で接する佐藤沙里だ、俺も「通行人A」…いや「通行人G」くらいに思われているのかと。


2秒ほどタワーマンションを沙里にプレゼントする妄想をして我に返った。


「そうだ、"俺"さんって人生経験豊富そうですよね?」

「まぁ、人並みには」

何の話だ。


「相談があって……今日、帰りに飲みに行きませんか?」


「あ…あぁ、残業が…まぁ、いいか、行こう、是非」


しどろもどろになってしまった。情けない。


「じゃあ定時に声掛けますね!」

と沙里は去っていった。


ーーいったい、なんの相談だ?にしても佐藤沙里から誘われるとは…これも、「田中の流れ」か?


宝くじを買ったあの日からというもの、何かとイベントが起きる気がする。まるで映画だな、と苦笑いする。

だが、これは現実だ。事実は小説より奇なりとも言うしな…


17時になっても誰も微動だにしない。もはや定時という概念すらないのか…

そう考えていると

「"俺"さん、お待たせしました!」

と佐藤沙里が声をかけてくる。


何人かの同僚はギョッとした顔で俺に目をやる。

当然だ、この職場の女性は、小太りの女か佐藤沙里に二種類に分類されているほどの紅一点だ。


うらめしそうな同僚達を尻目に荷物をまとめようとすると、課長の声が飛ぶ。

「"俺"くん!私より先に帰るのかね?」

上司より先に帰るのはブラック企業でなくともあまり芳しくない行為だ。


俺は間髪入れず

「はい!!」

と元気に返事をしてオフィスを出て歩き出した。


「"俺"さん、なんだか変わりましたね?っていうか、大丈夫ですか?」

と佐藤沙里が心配してくる。


「何が?」

と得意げに聞き返すと、


「だって社長、すぐクビにしちゃうんですよ?」

知ってる。


「じ、実はなー、俺、会社作ろうかなー、なんて思ってたりしてさ、クビとか怖くないんだ。」

起業するなど口から出任せ、

いや、半分考えてはいたものの、今この瞬間にやることに決まってしまった。


というのも佐藤沙里の反応が良すぎたためだ。


「えぇー!すごい!社長になっちゃうんですかぁ!?"俺"さんがそんなに野心家だったなんて…」

と今まで見た事のないような目で俺を見る。


「あ、あぁ。まぁ男だからな。うん」

もう会社を作るしかなくなってしまった。なんのスキルも無いのだが。


「じゃぁ、私を雇ってくださいよ!」


「あ、あぁ、、、えっ?」


「課長のセクハラが最近ひどくて……実は相談っていうのも転職の相談だったんです。課長に反論した俺さんなら、相談に乗ってくれるかなって思って誘っちゃいました♡」


そうだったのか。まぁ合点がいくといえばいく。


「で、どこか店でも入る?…ってもう相談終わったし帰るか…」


「いえ、"俺"さんともっと話したいです!」


俺、明日にでも死ぬんじゃないか?いくらなんでも出来すぎだ…





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