3両目にて
第7章
3両目の扉を開けると若く長身で白髪の男性が立っており、こちらを見てホッと胸を撫で下ろしていた。
「よかった…君、無事かい?もう1人はどうした?」
「あいつは……」
言葉にできない。
口から音を出そうにも喉の辺りでつっかえてしまう。
自然と涙が流れ落ちた。
「そうか……私は美濃坂という。
君だけでも無事でよかった。」
「私は6両目から来たのだがその時君達の事を助けられず逃げてしまってすまなかった…こんなことで許されるとは思っていないが一応ここで待っていて正解だった。」
「6両目から??どういうことだ、俺とお前と太郎以外に人はいるのか?」
松岡は尋ねる。
「そのままの意味だよ。何か事故があって…鋭い衝撃があったんだ。すぐ避難した方がいいと思ってね、走って逃げたんだ。その後は君達と同じさ。
目が覚めたら他の乗客はいなくなっていて、外には蛇の道ような何かがずっといるんだ。」
「そういえば…」
松岡は自分の意識が朦朧としている間、足音が聞こえていたような気がした。
「君、今何時か分かるかい?」
そう言われ、おもむろに時計を見てみると乗った時刻から1時間30分程経過していた。
これは明らかにおかしい……
松岡はそう思った。
この電車は事故でめちゃくちゃになったというのにレールの上を進んでいる…
普通では絶対にありえない。
様々な思考を巡らせ、考えてみるが絶対に矛盾している。
松岡はそう感じた。
「あぁ…1時間半もたっているのか…ますます訳が分からなくなってきたな…」
どうやら美濃坂も同じように考えているらしく、やれやれといった感じに肩を竦める。
「とりあえず前に進もう、他にも何か分かるかもしれない。」
と、言い美濃坂は前に進んでいく。
丁度、2両目へと向かう扉の近くで窓の方から
コポコポと心地良いような不快感を醸し出す不思議きな音が聞こえてきて、見てみると座席の上にメモがあった。
警戒しつつメモを手に取り読んでみると
[ 暗い道は怖い。外はきっとこんなところよりずっと明るい]
その直後だった、松岡の耳元をかするかのような距離で背後から手が伸びてくる。
そしてその手はメモをぐしゃりと握りつぶしその手を引っ込めた。
慌てて振り返るとその手の正体は美濃坂だった。
「こんなメモに騙されてはいけないよ。驚かせてすまないね。」
と、回り込んで謝罪してくる。
「……危ないからもう二度としないでくれ……」
松岡は答える。
「あぁ…すまないね、どうしても内容が気に食わなかったんだ。
外が明るい訳がない。
ここが暗いのだから……
」
美濃坂はそう言い放ちメモを松岡の手に握らせる
その瞬間、鳴き声のようなものが車内を響き渡った。
「!! 伏せろ!」
美濃坂は突然松岡を押し倒し、息を潜める。
押し倒された松岡は地面に違和感を感じる。
濡れているのだ
車両の中であり、海などないというのに何故か床が濡れている。
程なくして鳴き声が消え、立ち上がった時、ふとしたことに気がついた。
電車の扉の辺り、下のゴムが重なり合った小さな隙間、その場所から水が出ていることに気が付き、今までの出来事から最悪の推測が浮かんでしまった。
「まさか…そんな訳ないよな……」
窓の外にいた蛇のような生物が浮いているかのように横切っていったこと。
水が下から車内に入り込んできていること。
事故前の外が大雨であったこと。
事故が起きてからかなり時間が経過していること。
そして……
最後に乗っていたのが
地下鉄であったということ。
この車両はもう既に水の中に水没してしまったのではないか、そう感じてしまう。
「どうしたんだい?顔色が優れないが…?」
「いや……なんでもない、とりあえず先に進もう。」
松岡は最悪の考えを持ちながら前の車両へと歩みを進める。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
かっこの位置がちょっのおかしくなってしまいましたが描写の一環としてお許しください!




