列車の中で
第5章
「そうだ……俺は……電車で……あれは何だったんだ……そうだ!太郎!太郎は!!」
慌てて辺りを見渡す。
「うぅ……その声は松岡…無事なのか?」
瓦礫の下から太郎の声が聞こえる。
「おい!太郎!大丈夫か!?今助けるからな!!」
俺は急いで太郎の周りの瓦礫をどかす。
そうしてようやく全ての瓦礫をどかして見た太郎は酷いものだった。
右半分は血液が流れず、黒く変色しており、顔も潰れていて見るも無残な姿と成り果てていたのである。
「そんな…太郎……太郎ゥゥゥゥゥウ!!!!」
俺は声が枯れるまで叫んだ
喉が潰れるほど叫んだ
悲しみと絶望の二つの感情が入り混じり、最早松岡は叫ぶことしかできなくなっていた。
「松岡……そんなに……叫ぶなよ……朝の目覚ましにしちゃ煩すぎるぞ?」
引き絞られた声で太郎は言う。
「お前はここから早く逃げて前の車両に行き、一刻も早く逃げろ、俺はもう無理だ」
「そんなこと言うなよ!」
松岡は言い放つ。
「唯とまた今度会うっていったじゃないか!諦めてどうする!直ぐに助けを呼べば助かるはずだ!」
「いいから行け!!」
体に衝撃が走る。
それは今まで聞いたこともない太郎の声だった。
「俺はあいつを見たんだ……恐らく俺はもう手遅れだ、でもこのまま何もできずに死ぬ位なら最後に格好くらいつけさせてくれよ…」
太郎は揺らめきながら立ち上がる。
松岡の手に懐中電灯、ボロボロの唯ちゃん人形、携帯電話を渡し。
何も言わず後部車両へと進んでいった。
「太郎……絶対に助けてやるからな……少し…待っててくれ……」
俺は太郎に背を向け前方車両である4両目へと向かっていく。
ここまで読んでいただきありがとうございます。
そろそろ半分を超えたあたりですのでもう少しお付き合いいただけふと幸いです。




