神崎家にて
文脈や表現などが曖昧ですが楽しんで読んでいただけると幸いです。
第2章
電車に揺られ約48分。
途中、地下鉄を乗り継いで目的地まで向かう山奥の中腹にその神社は存在した。
人足が増え、自分、松岡 祐介 が昔遊びに来た時よりも確実に儲かっているようで寂れた雰囲気はなく、しっかりとした建物となっていた。
「あぁ……気持ち悪りぃな……どうも電車ってのは酔ってしまう……」
鳥居を潜り抜け、広場に出ると出迎えてくれる人物がいる。
「まっちゃーん!!
あ!浦ちゃんのお兄様ー!!」
と唯が俺ともう一人の人物に手を振っている。
「お、松岡も来てたのか久し振りだな!元気にやってたかい?」
何気ない顔で背中を叩いてくる。
正直痛い。
「はぁ…お前も相変わらずだな…その図体で軽く叩いたって流石に痛いぜ?」
「わりぃわりぃ」
と、へらついた笑顔で返してくる。
こいつは 浦 太郎 神崎の幼馴染であり一応親友だ。
「まぁ、別に良いけどよ、にしても神崎〜?お前結構成長したんじゃないか?」
「……横にも……」
「でしょでしょ〜?!もうちっちゃいなんて言わせないんだからね!」
神崎は褒められた事に心から喜んでいるようだった。
最後の一文はまるで聞こえていないかのように返答してくる。
ホッと胸を撫で下ろしていると…
「まっちゃん?後で話があるからね?」
鋭い眼光で睨まれ、心臓がキュッとなる。
「まぁ、挨拶はそこまでにしといてよ!早速やろうぜ?」
「はぁ…まぁとりあえず、役者が揃ったところで始めますか!」
「あぁ?掃除だったよな、力仕事とは聞いてるが…何をすれば良いんだ?」
「そうそう、敷地内全部の掃除!雑巾やら箒やらは向こうに置いてあるから、それを使ってね!」
松岡は初めて聞かされたバイトの内容に目を丸くして言い放つ。
「おぉ…?掃除って…ここ全部?」
「そうだよ?あれ、言ってなかったっけ?」
初耳だ……な?言ったろう?面倒な事になるって。
「まぁいい……じゃあ早速取り掛かるぞ、太郎、そっちは任せたぞ?」
「あいよ、任せとけって。」
俺は神社本殿の縁側を水泳で培ったクロールの要領で隅々まで磨いた。
「ふぅ…こんなものか…」
軽く一息ついた後、鐘楼の掃除に取り掛かった。
天井から綺麗に埃を落とし、鐘を磨き、床も掃除した。
気が付くと日は落ちていたが神崎が考えているよりも速く終わったらしく、掃除し終わった後の神社はとても輝いて見えた。
ありがとう、そんなような事を神社から言われたような気持ちになる。
「おい、神崎、こっちは終わったぞ。」
「奇遇だな、俺も終わったぞ神崎。」
「そうみたいだね!!いやー。やっぱり、男の子が来てくれると違うね!そうだ!ちょっと速いけど晩御飯食べてく?」
「あぁ、俺は頂こうかな。」
「あ!ずりぃぞ!俺も勿論食べるぞ!」
「二人は大食いだからなぁ…とりあえず、はい、大福!」
「あぁ、ありがとう。」
受け取って食べようとすると謎の異臭が辺りを漂う。
「うん!1ヶ月前のだけど。腐りかけが甘いって言うしね!それで?ご飯にする?お風呂にする?…それとも、わ」
言い終わる前に笑顔で神崎の口に大福をねじ込む。
「……やっぱりお前が食べろ。後、先に風呂で頼む。」
「もごっ!もぐもぐもぐ、んんっ…あ、これうまっ!
おっけー!お風呂沸かしてくるね!!」
「マジかよあいつ…」
腐った饅頭を頬張りながら母屋へと駆け出していく神崎。
(正直言ってやった俺が言うのもあれだがあいつ大丈夫なのか…)
少しの良心を痛め太郎と共に母屋へと向かう。
ここまで読んでいただきありがとうございました。
一章一章は短いですが、どうぞよろしくお願いします。