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Ⅱ [第四師団]

 クルト・ケンドルトは何度その光景を目にしても二人と自分の格の違いを感じざるを得なかった。

 

 雷帝と呼ばれるその大柄の巨体が大剣を薙ぎ払えば電流と共にウッドウルフが一度に四、五匹宙を舞う。

 自分より若い赤髪の少年が拳を振るえば凄まじい爆風がその場に起こる。

 

 ここ北の森では最近モンスターが大量発生している。なので管轄を任されている第四師団で小隊をつくり、定期的にモンスターの駆除に来ているのだが。

 

「俺らいらなくね?」

 

 つい思っていることが口から出てしまっていた。


 クルト・ケンドルトは若い、この師団に入ってから一年になる。この師団に入る前は実力者として周りの称賛や憧れをかっていて、それなりの自信もあった。だがそれは一般的な騎士の中においてはという話である。いざ入隊してみると自分の配属された師団で、その立派に成長していた鼻は真っ二つに折られるという結果になった。

 

 クルトの欠片は『硬化』だ。自分自身を硬化させることはできないが、触れている物を硬く、頑丈にすることができる。何故欠片というのかは定かではないがそんなことはどうでもいい。今重要なのは自分の欠片と前方にいる『雷』と『爆破』の欠片を持つ二人の力の差がとてつもなく開いているということだ。

 

 どうやったらあのような化け物が出来上がってしまうのか、と考えていると某無双ゲームのような戦闘を行っていた二人が帰ってきた。

 

「クルトさん、今日はもうお開きらしいっすよ」

「了解。すぐ隊員に伝えときます」

 

 この若い少年ほどではないが、クルトも若くしてそれなりの役職にいる。迅速に隊員に帰還の旨を伝え、一同は馬車に乗り込んだ。

 

*******************

 

「やっぱり、わかんなかったっすね」

「想定していたことだ、仕方がない」

 

 北の森でモンスター討伐、兼原因の偵察に来ていたラルズとロットは第四師団の基地へ戻るため馬車に揺られていた。

 

 普段はギルドに所属する冒険者が討伐していることもあり、師団長自らがモンスターの討伐に行くことはよっぽどのことがない限りあり得ない。しかしここ最近ではモンスターの数が大量発生しているので、その原因を探りに来たわけだ。

 

「マリル帝国が関わってなければ良いが」

「どーなんですかね……」

 

 メリード帝国の北に位置するマリル帝国の干渉をロットは危惧している。というのもメリード帝国とマリル帝国の関係はあまりよろしくないからだ。マリル帝国がこの件に関係していても何ら不思議ではない。


「そーいえば、王都の例の殺人犯まだ捕まって無いらしいっすよ」

 

 王都では殺人が起きたらしい。この世界では殺人自体は後を絶たないが、王都では珍しいことである。第一師団が管轄していることもあり、警備がしっかりしており王都に入るにも出るにも身元確認を行うからだ。

 

「ラルズ、他人ごとではないぞ? 犯人がいつこちら側に来てもおかしくはない」

 

 他人事であるラルズにロットは注意を促した。なぜなら第四師団の管轄が王都と壁一枚でしか隔てられていない。犯人が北側に逃げた場合、行き着く場所はこちら側になる。

 

「それは大丈夫っすよ」

 

 ラルズは自信ありげにそう答える。

 

「なぜだ?」

「なにせ雷帝がいますから」

「…………」

 

 ロットの拳がラルズの頭の上から叩き落とされ、ラルズの絶叫が響き渡った。

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