表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
<R15>15歳未満の方は移動してください。
この作品には 〔残酷描写〕が含まれています。
苦手な方はご注意ください。

短編集

男は与えられた才能に苦悩する

作者: タオニア

タオニアという妙な力を持った陰陽師の話です。



 昔々あるところにタオニアという陰陽師がいた。

そいつは不思議な力を持っていた。

しかしその力を自分で使うことは出来なかった。

 タオニアは、要という遊女と恋に落ち、駆け落ちをして結ばれ二人の子を授かった。男の方にコリコ、女の方に玉枝という名を付けて大切に育てた。

 コリコは非常に女の子の様に、玉枝は逆に男の子の様に育った。今の成人式に当たる髪上げの儀を玉枝が迎えることになった時、病気でコリコが倒れてしまう。

 玉枝は女の子のくせに男らしく元気だがコリコは男の子のくせに女らしく病弱だったため、回復は見込めなくなり玉枝の髪上げの儀も取りやめに。

そんな時、タオニアの力が発動する。

 その力とは、体と精神を入れ替えるというものだった。その瞬間からコリコは玉枝になり、玉枝がコリコになった。そしてコリコの病気は快方へ向かっていった。

 タオニアは自分の力に恐怖した。なぜなら自分で力を操れないがゆえにコリコと玉枝は二度と元の体に戻れないと感じたからである。




 季節は移ろい、雨の降りしきる梅雨になった。タオニアはあまり陰陽師としての仕事をしていなかったが、天皇からの勅命で上洛することに。

清涼殿にて、天皇の側近から心と体の入れ替えをして見せろとの命が下る。

 タオニアのことが風の噂で京の町まで流れていたのだ。タオニアにはそれを自分で起こすことはできないので困り果てる。

しかし幸運にもそのタイミングで力が発動する。

 だが実験台である遊女の二人は入れ替わらなかった。この二人の代わりに他の誰かと誰かが入れ替わったのだ。

 嫌な予感がしたタオニアは、家族の様子を確かめるために急いで家に戻った。

コリコも要も普通だった。

しかし玉枝の様子が変だった。

 蛙の様な座り方をしてゲコゲコ鳴いていた。そして近くに小さな蛙が一匹佇んでいた。泣いているように見えた。その蛙は鳴くこともなく町の方へ逃げていった。タオニアは大急ぎで後を追ったが、既に牛車に轢かれた後だった。

 その後、家に戻ると玉枝が鳴いていた。いつまでもゲコゲコと鳴いていた。そして、タオニアは玉枝を手にかけた。




 タオニアは、妙術で自分の子供を殺したとして罪に問われた。処罰を受ける前夜、一度だけ家族との対面が許された。

しかしそこにいたのは要だけだった。

 そして処罰を言い渡される日になった。流罪ということになり、二度と戻ってくることができない南の島に流されることに。

 しかしそこにコリコが現れる。一人前に甲冑を着て太刀を振り回して、取り巻きを倒し、タオニアを連れ去った。

その夜、みんなが寝静まった後にタオニアは夜風に当たっていた。そこに刃物を持った見ず知らずの青年が現れる。そいつは玉枝に恋文を送っていた貴族だった。

そしてタオニアを何度も刺した。

タオニアはやっと楽になれた、許されたと感じた。

その瞬間、力は発動する。

その少年は最後までタオニアを睨み付けていた。タオニアは見ず知らずの少年になり、一命を取り留めた。




 タオニアの葬儀はひっそりと行われた。

その時からタオニア家に新しい召使が雇われた。その召使はよく働き、よく尽くしてくれた。

そして要の晩年、召使は要から力を使ってくれとせがまれた。

だが力は発動しなかった。

病気のせいか、普通より早いお迎えだった。

 その日から、召使は召使ではなくなった。召使は貴族の女を射止め婿養子として有名な家系に入った。当時としてはかなり裕福な暮らしを送れるはずだったのだが、召使は出家する道を選んだ。そして素晴らしい僧侶として人々から崇められ、生き仏になることを選ぶ。

 仏として、土深くに埋められ念仏を唱えていたが、成仏するその瞬間、力は発動された。その夜は仏が埋められたあたりから、叩く音が鳴りやまなかったという。そのことを聞いたコリコは再び太刀を取ることを決意する。




 コリコは村里離れた民家に住む一人の青年の元を訪ねた。

コリコは一目見てそれが召使だと気付いた。

コリコは太刀で一突きしたが、力は発動される。だが、生き残ったのはコリコだった。

コリコが太刀で刺した相手は、コリコ自身だった。

この時もう既にコリコもかなりの高齢であったため、自分の死期が近づくのを感じた。そして、思い残すことなく、自分の家族に看取られながら死んでいった。

そして力は発動される。死んだのはコリコの孫娘だった。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ