07話.旗回収乙…かも
カリカリ、とシャーペンを走らせる音がする。
パラパラ、とページをめくる音がする。
机の上にあるいくつかの本にはこう書かれていた。【小学校高学年の問題】や【中学三年生のテキスト】、と。もちろん全教科ある。
そして、それに向かってのんびり問題を解いているのは私、夜暗真緒である。
なぜ、こんなことをしているか。
それは一週間前にまで遡ることになる。
一週間前
不良を潰して三日が経過した。変わったことはあまりない。
強いて言うなら、朝五時に起きて街一周ランニングしているくらいだ。
そこからはいつも通りに生活していた。
で、時間が経って夕方。夕食を三人で食べていたら。
「ねえ、真緒?」
「ん?」
「学校に興味ある?」
んん?
がっこう、ガッコウ、学校? スクール?
あっ、忘れてた。
「ないわけがない」
もちろんのこと、私の学歴は小四で止まっているわけで。
これじゃ生活は難しいわけで。
親に養ってもらうなど以ての外で。
つまりは学歴は大事。
なので、すぐにでも——。
「そう! なら、今年目一杯勉強して来年受験できるようにしないとね」
「う……ん?」
来年? それはつまり一つ下と受験するわけで受かった場合、一つ下と高校生活を——。
「それはダメ」
「え? な、なにが?」
「何がダメなんだ?」
そんことになってしまえば、私は確実に浮く。
私に流行なんてわかるはずがないし、年が違うなんてなれば尚更。
自分から話しかけるなんて以ての外。話しかけ方がわからん。
…はい、コミュ障です。認めます。
なので、せめて同年代がいいというわけだ。
「出来るだけ早く、夏休み前くらいには」
「そんなにっ⁉︎ で、でも勉強とか…」
「そうだぞ。五年分だ、五年分。ハンパない量をたった数ヶ月で? 一年でも困難なのに?」
「大丈夫。問題ない」
「「………」」
二人とも黙ってしまった。
やっぱり無理があるだろうか。
「…真緒、死亡フラグという奴だぞ、それ」
「…⁉︎」
「ふふっ」
死亡フラグだとっ。
い、いや、フラグなんぞへし折ってくれる。
よし。大丈夫、問題ない。
……あっ。
「本当に良いんだな」
しっかり頷く。
ふざけるつもりはない。
人生がかかっているんだから、やるからには全力で。
「分かったわ。じゃあこれからしっかり勉強ね。準備しとくから」
といった具合だ。
あれから一週間、勉強漬けだがどってことはない。
大体のことはこの一週間で終わらした。
ただ、読んでいるだけの私が心配だったのか、お父さんがノートを大量に買ってきた。
もちろん、ただ問題を解いているわけではない。
魔法の開発である。
特に数学と科学は使えるのだ。
おかげでこの二つは完璧。
社会はまあ、仮にも国を治めていた王なのだ。できなくては困る。
英語なんて異世界の言語より百倍ましだ。
教科書があるし辞書もある。
これでできないわけがない。
国語? フィーリングだフィーリング。
なんとかなるだろって話だ。
試験日
フラグってやっぱ回収されるものなんかね。
筆記は良かったんだよ、筆記は。そう、筆記はね。
完全に失念してた。
面接、忘れてた。
もういや。
寝るっ。
そいやっ!