06話.真緒疲労
とある街の大通り。その何処かの路地裏では、地に伏せ気絶している男が三人。その奥に震え、涙目になっている少女が一人。その見つめる先には、この惨状の中心である黒ずくめの少女。
その中心である少女、夜暗真緒はというと、顔には出ていないがとても狼狽えていたのだった。
誰か助けて。
誰でもいい。なんだったら勇者でもいい。
あ、やっぱり勇者はやだ。
と、とりあえず解決法を考えねば。
そのために今の状況を確認しよう——
「なぁ、そこの……」
「ッ⁉︎」
「…………」
……近づこうとするとな、怯えるんよ。
それどころかな、手を伸ばそうとすると——
「ひっ⁉︎」
「……」
——な?
私、なんか可笑しなことしたかな?
不良三人を一人で無傷で圧倒的に殴り倒しました。
……トチ狂ってらっしゃいました。本当にありがとうございましたー。
い、いやね、言い訳させてもらうとだよ。ストレスが溜まってたんだよ。ほら、もともと魔王だったわけだし、することがたくさんあって。魔王だから暇を取るわけにもいかないし。
することがあるっていいよな。
これから一時間早く起きてランニングしよう。
よし、現実逃避終わり。帰ろ。
解決法? 考える? なんのこった。
「あー、早めに帰れよ。じゃあな」
そう声をかけ、路地裏を出て帰路につこうとした、のだが。
「あ、あのっ、ありがとう。た、助けてくれて、本当にっ!」
混乱から立ち直ったっぽい。
うん、人助けすると気持ちがいいよな。
私、魔王だけど。
「なので、な、なにかお礼をさせてください!」
「うん?」
え、お礼?
うーん、いらないというか、そもそももらうものがないというか、欲しいものがないというか。
とにかく必要ない。
「お礼のためにやったわけじゃない」
「うっ、でも…お礼」
「気持ちだけで十分」
「……お礼」
いやいや、諦めようぜ。
まったく、強情というか頑固というか。
「いいから」
「…わかりました。でも諦めませんから! 次会う時にさせてもらいます!」
諦めてってば。
まあ、ともかく話は終わり。これ以上の会話は私の精神に異常をきたしかねない。
早く帰りたい。つかれた。
「…じゃ」
「はい。えっと、お気をつけて」
そりゃこっちのセリフだ。
そして、ようやく本当に帰路につく。
「ただいま」
いろいろあって帰るのが遅くなってしまった。
夕飯食って鍛錬して寝よう。
「おかえり、遅かったけど大丈夫だった?」
「少し疲れた」
精神的に。
はあ、やっぱり自分の部屋が落ち着く。
話が進まねえ…