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詩集  作者: 石井至
8/14

ぼくは泣いてしまった/サヨナラとぼくは言って/心地よさ

●ぼくは泣いてしまった



ぼくは泣いてしまった

泣くまいと思っていたのに

でもこの瞬間は予期していた

ぼくは知っていた

知っていたから覚悟もできていた

けれども、その瞬間に僕は泣いてしまっていた


理想とぼくの実際とは違う

かけ離れている

ぼくの中にある外れたボタンが

もう拾えない

お別れを言おう

ぼくはぼくから離れて歩いていこう

新しいぼくに出会う


誰かが呼び止めたとしても

とりあえずしばらくは

振り返らないかもしれない






●サヨナラとぼくは言って



サヨナラとぼくは言って

あなたを見上げた

できるだけ挑戦的に


それからその場を離れた

追いかけてこないのは分かっているので

ゆっくり歩いても問題ないが

ついつい早足になる


心を引き裂かれるような苦しい別れ

それはお互い様


ぼくのすべてがそこにあって

でもそれをぼくは捨てて行く覚悟だ

そのことがあなたに伝わって

だからこそ追いかけてくることなどできない

ぼくのすべてがそこにあって

でもそれはぼくの所謂過去でしかない

そうだ

ぼくが持っていたもの

生み出したものすべて

それはぼくの過去でしかない


サヨナラとぼくは言って

あなたを見上げる

できるだけ挑戦的に

そして悲しみは見せずに

サヨナラとぼくは言って

その場を去る

できるだけ何もなかったように

背中に悲しみを見せずに





●心地よさ



その穏やかな空間が好きだった

君がそこに座っているだけで

不思議に心地よい緊張感と穏やかさ

みんなが君を好きになる

みんなが君を愛している

凛とした空気の中に漂う君の柔らかさ

その空気が好きだった

君を知れば

誰もが君を好きになる

君が全てに愛される

僕の手から君が離れていく


僕だけが知っていた君を

少しずつみんなが知るようになる

そうして

みんなが君を愛する

僕は少し嫉妬して

嫉妬しながらそれでも君の後ろ姿を見守っているよ


静かに微笑んでいる君は

時に振り返り僕を見る

その瞬間に広がる無限の世界

僕と君だけの心の空間

ねえ、あとでどこかで話そうよ

うん、いいよ分かった

またあとでね

うん、またあとで


君の眼が細められて

僕は誰よりも幸せになる

誰もが君を好きになり

誰もが君を愛している


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